第208話

 無数の方陣を回避する方法は、困難だが方法が無い訳ではない。周辺を埋め尽くす程の方陣を展開している桜鬼は、術者である事を踏まえれば動く事はない。だがしかし、動かないという事は術に集中出来るという事だ。

 回避行動に徹したとしても、その包囲網と追尾を逃れる事も困難である。


 「逃がす訳が無いだろ!!クソ狐!!」


 数え切れない程の火球を出現させ、地面を蹴った杏嘉に対して狙いを定める。手動で操っているからか、移動している杏嘉の動きに合わせるように火球が追尾していく。

 それを理解した杏嘉は、火球を睨み付けるように目を細めて口を開いたのである。


 「言ったろう。百年なんて短過ぎるってな!――喰らえ、赤狐せっこ


 そう告げた杏嘉に従うようにして、真っ赤に染まった狐が火球を喰らった。

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