第167話

 視界を覆い尽くす程の炎球えんきゅうが出現し、それはやがて鳥の姿へと変化した。その炎鳥えんちょうを出現させた魔鬼は、空中から地上に居る刹那の事を見据える。

 そして腕を上げた魔鬼は、ニヤリと笑みを浮かべてその腕を振り下ろして言った。


 「往きなさい、朱雀。あの妖怪を燃やしてやりなさい」

 「その程度の数では、私を捉える事は出来ませんよ」


 魔鬼の放った炎鳥達は突撃したが、刹那へと接近する事は出来なかった。前以て出現させていた氷を操り、刹那は全ての炎鳥を撃ち落としたのだ。相殺された場所は空中に残り、爆散した物がその場に残っている。

 魔鬼の姿は見えていても、その周囲で霧が生じ始めた事を理解した。


 「目的は視界を奪う事ですか?また回りくどい事をしましたね」

 「……妖魔術、風帝ふうてい青龍せいりゅう


 霧の奥で魔鬼がそう告げた瞬間、魔鬼の隣に青龍が出現した。先程の朱雀同様、空気が集束して出来た竜巻が龍の形を生成されている。厳密にその姿が出現しているのではなく、何かを代用して作られた姿ばかり。

 それを異様に感じた刹那は、出現したばかりの蒼龍の姿を見据えた。中空に手を掲げ、青龍のみを握り締めるようにして手を思い切り握ったのである。


 「妖術、氷結晶ひょうけっしょう


 その瞬間、魔鬼の横に出現した青龍は凍結した。

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