第143話

 「お姉様を、盾に……よくもっ、よくもお姉様をっっ!!」

 「……先に鬼門に触れたのはお前達だ。ボクを怒らせたんだ、それ相応の報いを受けてもらうのは当然。これでも足りないくらい」


 右近の体で左近の放った術を防いだ魅夜は、目を細めて左近の事を射抜く。その眼光は鋭いものとなっており、色濃い殺気に包まれていた。そんな殺気を向けられた左近は、まるで泥沼に足を踏み入れた感覚だっただろう。

 身動きが取れず……いや、身動きを取る事は許されないと悟った。それを肌で悟った左近は、冷や汗を頬に伝いながら魅夜の様子を伺う事しか出来なかった。


 「っ……!」

 「うぅ……くっ……さ、左近」

 「お、お姉様っ!」

 

 既に虫の息寸前である右近の様子だが、まだ生きている事を理解した左近は目を見開く。地面を蹴った左近は魅夜との間合いを詰め、満身創痍の右近を救出しようと腕を伸ばす。

 だがしかし、目を細めた魅夜はニヤリと口角を上げた。急接近した左近に対し、魅夜は持ち上げていた右近を左近へ投げ込んだ。


 「っ!?」

 

 視界が右近で埋められた左近だったが、回避する事も出来ずに右近を受け止めてしまった。その行動が読めていたのだろう。魅夜は左近の視界の死角から、左近の脇腹へと蹴りを放った。


 「ぐっ!」

 

 蹴り飛ばされた左近は、右近を抱き止めたまま足を引き摺った。蹴り飛ばされても、左近は右近の体を手放さなかった。そんな様子を見据える魅夜は、溜息混じりに左近との距離を詰める。

 そして、冷ややかな声色で左近に吐き捨てたのであった。


 「それ、捨てたら?」

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