第九夜「双子と猫」
第120話
「右近お姉様、猫がまだやる気のようです。どうしましょうか」
「適当にまた甚振るだけよ。まぁ首でも取れば、あの方に忠義を示せるかもね」
右近と左近はそんな言葉を交わしつつ、目の前で構える猫――魅夜を見据える。そんな視線を受けながらも、魅夜は右近と左近を挑発するように告げた。
「ボクの首を差し出す?出来る物ならやってみろ」
「へぇ、まだそんな減らず口を叩けるのね。良いわ、方針変更よ左近」
「はい、お姉様。全力で殺しましょう」
敵の中心には焔鬼こと焔が居る事を伝えようとしていた魅夜だったが、桜鬼の術によって空に映った事でその必要性は無くなった。鬼組の全員が、焔鬼が敵となっている事は知らせてた。
それによって、魅夜は神埼邸へ戻る必要が無くなったと言えるだろう。だがしかし、魅夜一人で二人を相手にするのは困難。どのように戦うかで、状況は有利にも不利にもなるだろう。
「ボクは負ける訳にはいかない。……お前らを倒す!!」
「その減らず口、いつまで持つか試してあげるわ。左近、どう殺すか決めた?」
「ただ甚振るだけでは足りません。まずは四肢を千切り、身動きが出来なくなった所を甚振りましょう。そうすれば、下手な事は言わないはずですよ」
ニヤリと笑みを浮かべる左近に対し、魅夜は右近と左近の間に割って入るように間合いを詰めた。勢い良く振り下ろした腕は空を切り、容易く回避されてしまった。
鬼組の中で素早い動きを得意とする魅夜だったが、その素早い動きでも捉え切れなかった事に驚いていた。そんな表情を浮かべる魅夜に対し、右近と左近は涼しい笑みを浮かべながら言った。
「人の話を遮るなんて、無遠慮ね」
「そうですね、右近お姉様。容赦なく殺してしまいましょう」
「えぇ、そうね。この上なく残酷に、容赦なく、殺してあげましょう♪」
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