第298話
「ハヤテさん!!」
「うぐっ……っ!」
両目を押さえながら、断末魔のような声を上げるハヤテ。そんなハヤテに近寄ろうとする刹那だったが、踏み出そうとした瞬間にハヤテを見て動きを止めた。
片手で刹那に止まれと制しているハヤテだが、片手からボタボタと血が溢れ出ている。足元まで赤く染まっているのにもかかわらず、近寄る覇鬼に剣先を向けながら言った。
「これは俺の戦いっスよ、姐さん……まだまだ
ニヤリと笑みを浮かべるハヤテに対し、覇鬼は目を細めて口角を上げる。目の前に居るハヤテの姿が、先程戦ったばかりの村正と重なったからだ。それを見た覇鬼は、肩を竦めながら片手で顔を覆った。
「ククク、クハハハハ……まったくどいつもこいつも、つまらぬ事に命を賭けるではないか。矜持も恩義も忠誠も、貴様等にとって何の意味も持たぬ呪いでしかないというのに。ただの妖怪共が、貴様等が真に仕えるべき存在は世しか居らぬと知れ」
「冗談。……俺は、俺達は……鬼組っスよ。仕える
「そうか。ならば――――逝くが良い」
そう告げてハヤテへ腕を伸ばした覇鬼。それを阻止しようと動き出す刹那と蒼鬼だったが、間に合わないと理解していたのだろう。伸ばした手は届かないと理解しつつも、奥歯を噛み締めて力一杯にハヤテへ手を伸ばす。
ハヤテも攻撃される気配を読み取り、一矢報いる為に剣をそのまま突き出す。しかし剣が自身の手から離れた事を理解したハヤテは、静かに口角を上げて呟いた。
「すみません、アニキ……俺、負けちまったっスわ」
今度こそ自分の死を覚悟した瞬間だった。
「――諦めるなんてお前らしくないな、ハヤテ」
「っ!?」
その言葉が聞こえた途端、覇鬼の攻撃を中断させる斬撃が頭上から降ってきた。いや……それは斬撃ではなかった。ハヤテの目の前に人が降ってきたのである。
「(この気配……間違えるはずがないっスよ!)……ア、アニキッ」
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