第269話
木々を伝って移動するハヤテに対し、刹鬼も負けじと凄まじい速度で地面を移動する。高速で繰り広げられる鬼ごっこ状態となり、草木や木々、地面さえも巻き込んで森林地帯を駆け巡る。
やがて森林地帯から出たハヤテは、町を囲んでいる山々の向こう側にある更地にまでやって来た。動きを止めたハヤテを見て、刹鬼は着地すると同時に問い掛ける。
「何だ、もう諦めて逃げるのも辞めたか?」
「はは……まさか、少し場所を変えただけっスよ。ここなら何も無いし、仲間を巻き込む心配をしなくて済むもんで」
「あ?さっきまで逃げてた奴が、随分と吠えるじゃねぇか。どうせその大事なお仲間とやらに、自分が負ける姿を見られたくねぇだけだろ?」
「どう思おうが勝手っスけど、言ったはずっスよ。正真正銘、本気だって……」
そう言いながら目を細めたハヤテは、二本ある内の一本を鞘に収めた。そして残った一本を逆手から通常に持ち替え、剣先を刹鬼に向けながら告げる。
「あんたは確かに強いっス。実力も十分、分かったっス。だから――」
「っ!(こいつ、また妖力が上がってねぇか?)」
「――次は俺がフルボッコにする番っスよ」
ニヤリと笑みを浮かべたハヤテは、自分の周囲に竜巻を出現させた。それを警戒する刹鬼だが、未だ跳ね上がるハヤテの妖力に動揺を見せていた。先程まで戦っていた者は、一体どれ程の力を隠していたのかという戸惑いだ。
しかし、すぐに刹鬼は口角を上げてハヤテに言った。
「クク……前言撤回するぜ。どうやらオレ様は、当たりを引いたらしいなっ!!さぁ見せてみろっ、テメェの本当の力って奴をなぁ!!」
その言葉に対して、ハヤテはさらに鋭い眼差しを向けて応えたのである。
「良いっスよ。ただしその頃には、あんたは八つ裂きになってるっスけどね」
ハヤテは妖力を全て解放した。竜巻に覆い尽くされ、砂塵が刹鬼の視界を奪っていく。その先で現したハヤテの姿を見て、刹鬼は高揚感に満ちた笑みを浮かべた。
「纏い……――
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