第187話
魔鬼の妖力と共に気配が消えた。それを感じた桜鬼は、杏嘉と魅夜を相手しつつ視線を動かした。消えた魔鬼の気配と同じ場所から、もう一つ別の気配がある事に気付いている。
その気配を追うようにして、桜鬼は目を細めてその場所と方向を見据えた。森を抜け、町を越えた先に気配の主を見つける。そこには、涼しい表情を浮かべている刹那の姿があった。
「(へぇ、彼女が魔鬼を倒したのかしら?)」
「余所見してんじゃねぇよ!」
「お前の相手は、ボク達だ!!」
左右から攻撃を仕掛けた杏嘉と魅夜に対し、桜鬼は溜息混じりに二枚の札を使って攻撃を相殺した。爆風に包まれた杏嘉と魅夜は後方へ下がり、距離を取って桜鬼の事を睨み付ける。
「私達の同胞が、貴女達の仲間に倒されたようですね」
「ハッ、あいつなら簡単に勝てるだろうよ!あいつにとって、その辺の奴等は相手にもなんねぇよ」
「それは随分と興味深い方ですね。ただの妖怪にしておくのは、とても惜しい」
桜鬼が思考を働かせているが、杏嘉は九尾の姿となって火球を九つ出現させた。その火球は姿を変え、子狐の姿に変わって駆け出した。桜鬼を取り囲むように展開されたそれを見据え、桜鬼は小さく息を吐きながら口角を上げて告げる。
「狐火ですか。その程度の妖術で、私の術を突破出来るとお思いですか?」
両手を合わせた桜鬼は、杏嘉の攻撃を正面から捻じ伏せるつもりなのだろう。その姿を見た杏嘉は、ニヤリと笑みを浮かべて言った。
「アタイだけじゃねぇんだけどな。テメェの相手をしてんのは」
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