第311話
「っ……サクラ、いきなり何してやがる」
「動揺したのは一瞬ですか?全く動揺されないのも癪ですが、それはそれで少し残念です。えへへ」
ニコリと笑みを浮かべる桜鬼の頬は、微かに赤くなりながらも自分の唇に触れる。気恥ずかしさと嬉々として様子が表情に出ている中、桜鬼の服を引っ張っていた茜が深呼吸をし始める。
「スゥー……サクラちゃん、言い残した事はあるかな?」
「死ぬのは勘弁ですし、殺されるつもりはありませんが……そんなに聞きたいのなら、言って差し上げますよ」
「……」
「私の初めてを受け取っていただきましたが、そちらはまだ何でしたっけ?ねぇ、ア・カ・ネ♪」
「ぐぬぬ……殺す♪」
まだ、という部分を強調した桜鬼は茜を煽った。刀に手を伸ばした茜は、ニコニコと満面の笑みを浮かべながらそう告げた。再び喧嘩をし始める桜鬼と茜を見つつ、焔鬼は何をされたか理解するまでに数秒を費やした。
一歩ずつ下がった焔鬼に対し、酔鬼は口笛を吹きながら隣に並んだ。
「いやー、モテる男はツラいなぁ……焔鬼様ぁ」
「油断し過ぎただけだが、そこまで大事にする事か?」
「女にとっちゃぁ、ファーストキスの相手は大事だって聞いた事があるからなぁ。まぁ俺は関係ねぇからな、精々女泣かせにならねぇように気を付けるんだなぁ」
酔鬼は後頭部で手を組みながら、嘲笑するように言った。そんな酔鬼の言葉に対し、焔鬼は目を細めて隣に並ぶ酔鬼に告げたのである。
「――後で覚えておけよ、酔鬼」
「もう忘れちまったからなぁ、諦めろ」
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