第245話
爆風に包まれた茜の様子を伺いつつ、桜鬼は目を細めて肩を竦めていた。徐々に晴れていく爆風の中から、微かにシルエットが見えた所で溜息を吐きながら言った。
「……そういえば、そんな妖術も使えたわね。唯一使える防御系がそれって、どれだけ効率悪いのよ。あんた」
「はぁ、はぁ、はぁ……生憎、私は……ほーくんにこれしか教わってないからね」
生きているが、攻撃を全て防げた訳ではない。所々で火傷を負っているのを見れば、防ぎ切れなかった事は明白だ。桜鬼の知る茜であれば、簡単に防げたかもしれない術だ。
だがしかし、茜はまだ記憶を取り戻したばかり。そして、そこに何かを守るという行為が加われば、誰だって動きが鈍るのも頷ける。
「お前、まだ本気で戦ってないな?」
「えぇ?本気だよ。本調子だったら、サクラちゃんなんてちょちょいのちょいよ」
「減らず口を叩くなら、もっと本気で出しても余裕って事で良いわね」
「あはは……お手柔らかに」
「(本当に厄介。不恰好とはいえ、これ以上は近付けない)」
苦笑しつつも、茜は地面に突き刺して刀を抜いていない。今抜けば、展開されている方陣が解けてしまう。桜鬼が攻撃を仕掛けないのは、その方陣が辛うじて機能しているからだ。
迂闊に近付けば、妖術は容易に弾かれてしまう。そしてそれは、妖力が強ければ強い程に威力は倍になる。もし術者が近寄れば、その場で妖力が過剰反応して暴発する可能性だってあるのだ。
簡易的に作られているように見える方陣は、圧倒的妖力がある者だけが使える防御系の妖術。桜鬼も別に使えない訳ではない。だがしかし、消費する妖力が計り知れないのだ。
一度使えば、優勢が劣勢に崩れ去る可能性だってある。だから、桜鬼は使えない。
「(本当に本気を出してない理由は、こいつの後ろにいる奴が原因か)」
茜の背後で倒れている杏嘉を睨んだ事に対し、茜は杏嘉を狙うつもりなのかと警戒した。だが、やがて桜鬼は溜息混じりに目を細めて告げた。
「――ねぇ、提案なんだけど」
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