第41話
――オレに忠義を示せ。期待しているぞ。
その言葉が幽楽町全体に響き、空に映し出されている焔鬼の姿を見つめる。彼の事を詳しく知る者も居れば、未だにどのような存在か分かっていない者も居るだろう。
だがしかし、その姿と名前は幽楽町で知らない者は少ないのも事実。彼の姿を見た瞬間、幽楽町で暮らす者達の中には目を疑う者も居た事だろう。
何故ならば、彼は二年前の騒動で町を救い、それ以前からも長い時間を費やして町を護り続けていた存在。町の住民からすれば、これ以上のない程に心強い存在だと言えるだろう。
『そんな、本当に……』
『総大将、やはり変わられてしまったのか?』
そしてそれは、町に暮らす人々だけの話ではない。彼が率いていた組織である鬼組は、彼が一から集めた組織。その組織の中には、彼という存在に憧れや尊敬を抱いていた者達が多い。
命を助けられた者、勝負をして敗北した者、行く所がなく途方に暮れていた者が鬼組には集まっている。それは彼を親と同じぐらいの存在だと認識し、畏敬の念を向けていた。
だがそれは――今、目の前で砕かれようとしている。
「焔鬼様、桜鬼の術を使ってまで言う事ですか?それは」
黒騎士の一人であるその者は、短い時間だけ映し出されていた彼の姿を見つめてそう呟いた。その黒騎士の名は
「龍鬼、焔鬼様の身に何が遭った!我等はかつての同志、争う必要は無いだろう」
剛鬼はそう言ったが、龍鬼は目を細めて平坦な口調で応えた。
「お久し振りです、剛鬼さん。現状、解決すべきは目の前の餓鬼とボクをどう対処するかではありませんか?」
「っ……貴殿と争うつもりは、我にはない。争わずに居られるのなら、見逃してもらえぬか?龍鬼よ」
「焔鬼様が配下、黒騎士が一人。主の命により、これより武力介入を開始します」
「龍鬼っ」
剛鬼の言葉を無視しながら、戦闘体勢へと移った龍鬼。クナイを剛鬼を狙って投げ、同時に自らも間合いを詰めようと前に出た。
だがその動きを制する形で、剛鬼と龍鬼の間に割り込んだ人物が居た。投げられたクナイを全て弾き、逆手に持たれた短剣と衝突する。
「む、村正殿!」
「感動の再会に水を差すなんて、どういう神経をしてるんですか?」
目の前に立ち塞がる村正にそう問い掛ける龍鬼。そんな龍鬼を見据えつつ、村正は口角を上げながら龍鬼に告げるのであった。
「――拙者、剛鬼殿の
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