第295話

 覇鬼の視界から姿を消し、瞬時に横から斬りかかったハヤテ。意表を突いたと思った刹那は、空かさずに氷の刃を覇鬼に向かって地面から生やす。刹那の放った迫り来る氷の棘とハヤテが繰り出した横斬り。

 これを同時に捌くのは、どんな手練れであっても容易くない勢いだった。しかし、覇鬼の実力を知っているからか、攻撃を繰り出す為に至近距離になろうとしているハヤテに蒼鬼は告げた。


 「今すぐ離れるのだ、ハヤテ殿っ!」

 「っ!?」


 蒼鬼の声に反応した途端、覇鬼の妖力がオーラと化した。しかし、ただのオーラではなく、覇鬼を周囲が一瞬で無数の斬り傷が地面と木々を薙ぎ払った。

 一瞬の内に距離を取ったハヤテは、指一本すら動かしていない覇鬼を見据える。だが足元も含め、薙ぎ払われた地面と木々に浮かび上がったモノに見覚えがあったのだろう。

 ハヤテは、自分の前まで拡がっていた傷を見て覇鬼に問う。


 「妖力のみによる斬撃っスか。大した威力っスね」

 「ほぉ?知っているのか」

 「似たような物を見た事があるだけっスよ」


 そう言いながらハヤテは、涼しい表情を浮かべている覇鬼を見据える。


 「(あぁ、似てるっスよ……この技は、飽きるぐらい見て来たっス)」

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