第六夜「友のために」
第76話
――ドクン、ドクン!
これは過去の記憶。彼女、九尾の杏嘉が鬼組の入ったばかりの記憶だ。焔に認められて鬼組に入る事を許された杏嘉だったが、同じ鬼組に入っている者達との交流は少なかった。
当時の彼女は喪失感に包まれており、負かされた焔鬼のみ言葉を交わしていた。他の者達とは関わらず、関係性を持つ事も拒み続けていた時期があった。杏嘉と関わろうと様子を見ていた組員達は徐々に離れ、やがては誰も関わる事をしなくなった。
「お主が杏嘉とやらか?」
「……?」
屋敷の中で宴をする組員達から離れていた杏嘉。そんな杏嘉の様子が気になったのか、煙管を咥えながら杏嘉を見つめる綾が現れる。これが杏嘉と綾の出会いであり、杏嘉が他の者達と関わろうとする一歩となる。
「気安く話し掛けるな」
「ワシは綾という名じゃ、お主は何じゃ?」
「……答える義務ねぇよな」
「そりゃ無いのう。じゃが、お主は組に入ったのじゃろう?主様は何を言うかは知らんが、ワシ等からすればお主は仲間の一人じゃ。名前を知らんのは、これから不便じゃろうて」
そう言って杏嘉の後を追う綾に対し、無言を貫いて綾の事を無視しようとする。しかし、綾の事を無視し続ける事が無理だという事を杏嘉は悟ってしまった。
「何処まで着いて来るつもりだ、テメェ」
「
「いや来るなよっ、アタイは子供じゃねぇ!!」
「フッ、やっとまともにこっちを向いたのう」
「うぐ……噛み殺すぞテメェ、何が目的だ」
「ワシ等の主様から伝言じゃよ。――仕事の時間じゃ」
「は?」
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