第197話
「……」
仮面の下にある顔について、ある程度は想像していた。だが餓鬼よりも強く、黒騎士よりも強い存在というのは狂鬼の記憶では狭い範囲。その狭い範囲の中には、自分よりも強い黒騎士か黒騎士を超越した何かが存在しているのかと思っていたのだろう。
しかし、その想像は遥かに裏切られた。それも、狂鬼の思考が停止する程に。
「どうして……だってあんたは今、敵の本拠地に……――っ!?」
狂鬼の言葉を遮るようにして、焔鬼と瓜二つの彼は太刀を振るった。防御に間に合ったにもかかわらず、彼の攻撃の衝撃を殺し切れなかった狂鬼は足を引き摺る。
受け止め切れなかっただけならまだ良いが、狂鬼は奥歯を噛み締めながら彼を見据える。肉体的にではなく、精神的に攻撃を受けているが如く……狂鬼の思考は戦闘どころではない状態となっていた。
「テメェは誰だ!どうして、何であの人と同じ顔なんだ!!答えろっ!!」
「……同じ顔?何の話だ?」
「惚けるなっ!!あの人の姿を真似やがって、絶対許さねぇ!!」
妖力を怒りに任せて膨れ上がらせる狂鬼に対し、彼は小首を傾げつつ眉を寄せる。何事か良く分かっていない様子だが、狂鬼の攻撃を容易く受け流し続けている。
猛攻に対し確実に、そして的確に対処をしている。その様子に苛立ちを覚えた狂鬼だったが、再び対面した瞬間に彼の異変を見逃さなかった。
「……っ」
「?」
彼は片手で顔を覆いながら、表情を歪ませていたのである。やがて彼は太刀を思い切り振るった。まるで、激しい頭痛から逃れたいが為に。
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