第353話
「っ!」
「世と相打ちするとは……貴様、正気か?」
「刺し違えてでもお前は殺す。これからの世界に、魔境の王は必要ない」
覇鬼との相打ちしたオレは、喉奥から込み上げる鉄の味を感じながら覇鬼の腕を掴む。片方の手に握る刀は覇鬼を貫いているが、致命傷という訳ではない。僅かに逸れてしまったらしい。惜しい事をした。
「心の臓を貫いた所で、世を倒す事は出来ぬぞ。それは貴様も理解しているはずだ。無駄な事をしたな、焔鬼よ」
「フッ……本当にそう思うか?」
オレは覇鬼の言葉を嘲笑しながら、掴んだ腕と突き刺した刀を離されないように力を込める。拘束された事に気が付いた覇鬼は、オレの事を引き剥がそうと妖術を繰り出そうとしていた。
しかし、オレの言葉に応えるようにして、覇鬼はオレの背後から姿を現した者を見た途端に目を見開く。
「――言ったはずだ。オレは一人じゃねぇって」
「ほーくんを離せ!!」「兄様から離れて下さい!」
「ぐっ、小癪な真似をっ!!」
そんな怒りを露にした覇鬼は、妖力を高めて妖術を放とうとする。その規模は大きく、そして強力な妖術だという事は一目で理解出来た。恐らくは、オレと一緒にあいつ等を巻き込むつもりなのだろう。
そうすれば、オレがあいつ等を護ると考えた結果なのだろう。しかし、それはオレの力が無ければ戦えない奴等に対して有効な手だ。だがあいつ等は……オレの女は、そんな柔な奴じゃない。
「躊躇せず、思い切りやれ!茜、サクラ!!」
「「これで、終わり(です)!!!!」」
その言葉を聞いたオレの視界は、再び複数色の妖力の光に包まれたのである。
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