第24話
――魔境。
そう呼ばれる世界は、現世と呼ばれる世界の裏側にある世界。鬼門という門を潜り、世界の狭間と呼ばれる空間を通った先にある世界の名称。表と裏、月と太陽、光と影……表現は様々だが、現世と魔境を区別するにはそれが妥当だろう。
そして今、オレはこの魔境を統べる存在として玉座に座っている。見下ろせば数千、数万を越える餓鬼とそれを率いる黒騎士が跪いている。誰もが魔境を統べるに相応しいと、認めてくれている証拠だと言えるだろう。
そんな事を思いながら、オレは魔境の空を見上げる。紅く、現世とは違う真っ赤な空。それを見つめ、オレは冷たい風に頬を撫でられながら目を細める。
「……もうすぐ、だな」
――今度こそ、お前を奪って見せる。
◇◇◇◇◇◇
『……ふわぁ~あ、ねみぃ』
『円卓の場で大欠伸、下品ですよ。
――円卓の場。
そこは魔境を統べる者に仕える黒騎士達が集まる場であり、餓鬼を統べる強き鬼達が顔を合わせる唯一の場。集まる事自体は滅多に無いが、黒騎士達はある事について会議をする為に集まっていた。
『下品、ねぇ……それを言ったら、テメェの方が下品じゃねぇか?その露出度の高ぇ服装で、そのデッケェ胸を焔鬼様に見せて侍ろうとしてやがんだからな』
『あら、強者に惚れ込むのは女の常ですよ。これはただの方便であり、建前ですから下品という事はありません。何か問題があるとすれば、この行動を下品と思う者が
『あぁ?ふざけんなテメェ、殺すぞ』
『あら、
眼帯を装着している女性の黒騎士と自身の身体よりも大きな両手剣に肩を組んでいる男性の黒騎士。互いに睨み合って火花を散らす中、その間に挟まれながら飲んでいたお茶を置いた桜鬼が小さく呟いた。
「――うるせぇよ」
桜鬼がそう呟いた瞬間、桜鬼は目を細めたまま両手を広げていた。その手には剣が持たれており、両側に居た二人の眼前に突き付けられていた。
たじろいでいる二人の様子を見つつ、桜鬼は細めた目に殺気を包ませながら言葉を続けた。
「今すぐにその口を閉じるのが出来ないなら、息の根を止めてあげるけど?」
『ぐっ……失礼しました』『チッ、あぁ悪ぃ』
「
『『だ、誰がこんな奴とっ!!!』』
「うるせぇって言いましたよね♪一発、サクっと逝きますか?ん?」
笑みを浮かべているが、目を笑っていない。そんな桜鬼を見た魔鬼と刹鬼は、微かに強張った表情を浮かべて苦笑して首を左右に振った。口論を諦めた様子を見計らったのか、タイミングを伺ったように円卓の前で姿を現した者が居た。
『――黒騎士様方、準備が整いました』
その言葉を聞いた瞬間、桜鬼を含めた黒騎士全員が不敵な笑みを浮かべたのであった。
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