第355話
「ごふっ……」
「少々時間を取られたが、貴様を殺せば後は烏合の衆に過ぎない。生きる者は全て平等に訪れる死に抗う事は出来ぬ。抗っても無駄な努力になるという訳だ」
焔鬼の胸を貫いた覇鬼は、嘲笑した表情を浮かべて言葉を続ける。見下ろす先で項垂れる焔鬼は、胸を貫かれたままで硬直している。身動きが取れないのか、致命傷を受けてしまっている中で動く気配が無い。
言葉が返って来る様子が無いと理解した覇鬼は、貫いている手刀を引き抜こうとしたのだろう。だがしかし、引き抜こうとした瞬間だった。
「っ!?」
「ぐっ……聞き飽きた御託を並べてんじゃねぇよ……オレはまだ、生きてるぞ……」
「何をしようと今更っ、貴様はここで死ねっ」
「叛転妖術……――
「何だ……これは……?」
焔鬼の足元から火柱が出現しすると同時に、全身が黒炎に包まれ始めた様子に目を見開いた。やがて火柱は集束し、一匹の龍の姿へと変わっていく。離れようとする覇鬼だったが、焔鬼は未だに覇鬼の腕に貫かれたままだ。
そのままの状態にもかかわらず、焔鬼jは離さずにその妖術を放ったのである。
「
空中に姿を現した黒龍だったが、その姿は一瞬で砕け散った。だがしかし、それは覇鬼が破壊した訳ではない。黒龍自ら砕け散り、周囲を覆い尽くしていく黒龍の一部が別の形を再び取り始めた。
それは黒い槍となり、黒炎を纏って出現していく。数十、数百、数千、数万……徐々に増えていく様子を見据えた覇鬼は、手刀で貫いている片腕を自分で切断しようとしたのだろう。
だが、切断しようとした瞬間に焔鬼はもう一つの妖術を放った。
「妖術、死屍累々……させる訳ねぇだろ?」
「ぐっ、貴様っ!世と刺し違えるつもりかっ?」
「大人しくしろよ、覇鬼。オレと我慢比べの時間だぜ」
そう告げたと同時に焔鬼は、周囲に展開した黒槍を一斉に射出したのであった。
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