第111話

 「……斬破」


 狂鬼はその呟き、前方に斬撃を放った。振られた大斧の風圧と共に、巨大な剣戟が戯鬼を襲う。急速に接近するそれを防ごうとした戯鬼は、両腕で受け止めた事によって重傷を負った。

 その攻撃をまともに食らった戯鬼は、顔を歪ませながらも狂鬼を睨み付ける。


 「よ、よくもワタシに傷ヲ……ッ」

 「頑丈な奴だな。今の一撃で死なないとか、どれだけ頑丈なんだ?テメェは」

  

 だが、頑丈であっても重傷は負っている。受けた傷は、かなりのダメージになっているのだろう、戯鬼は反撃しようと接近するが、その動きには今までの瞬発力は無い。

 容易く回避した狂鬼は、小さく鼻を鳴らして大斧を振るった。


 「ぐッ……おのレ、許さないゾ狂鬼ッ!!!」

 「そろそろテメェも本気を出したらどうだ?その札、取れば本来の力を発揮する事が出来るんだろ?待っててやるから剥がせよ」


 大斧を肩で担ぎ、ニヤリと笑みを浮かべる狂鬼。その挑発に苛立ちを見せる戯鬼だったが、やがて息を深く吐いて目を細める。


 「良いだろウ。ワタシの本気を見せてやるゾ、狂鬼」


 戯鬼はそう言って、顔面を隠していた札を剥がした。その瞬間、抑えられていた妖力が跳ね上がる。上昇し続ける妖力を感じつつも、狂鬼は臆す事なく大斧を構えた。


 「来いよ、戯鬼。こっからだぜ、本当の殺し合いは」

 「――――ッッ!!!」

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