第190話

 仮面を着けた謎の存在と対峙していた狂鬼は、眼前にまで迫った剣戟に目を見開いた。瞬時に距離を詰められただけではなく、目にも追えない速度で風を切った。

 距離を取る事が出来た狂鬼だったが、回避が遅れた所為で頬に微かな切り傷が浮かび上がる。


 「(今、こいつの動きが見えなかった?それだけじゃねぇ、こいつ……滅茶苦茶強ぇじゃねぇか)」

 「……」


 言葉を発する事が無いだけじゃない。妖力も感じず、気配も読む事が出来ない存在。そんな存在に距離を詰められれば、回避するのは容易な事ではない。

 身の危険を感じた狂鬼は、目の前に居る相手に勝てないと悟ったのだろう。だがしかし、黒騎士であると同時に自分が弱者ではないというプライドが狂鬼の頭に後退という文字が消え去った。


 「テメェは何者だ!答えろ!黒騎士か?それとも妖怪か?――答えろ!」


 その問いに対し、仮面の存在は短く言葉を発した。


 「――それは、

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