第266話
刹鬼の挑発から始まった桜鬼との睨み合い。会合が始まったばかりだというのにもかかわらず、両者の妖力はその場を押し潰そうとしていた。
会合に参加していた龍鬼と魔鬼は、対峙する二人を眺めて言葉を交わしている。
「個人的には、どっちが勝つのか見物なのよね」
「そうなんですか?僕はどうでも良いんですけど、こんな事して叱られないかが心配です」
「大丈夫でしょう。この塔は黒騎士しか入れないし、入れても見習いの一部。それに塔自体も頑丈だし、大した事にはならないでしょ」
「……だと良いんですが」
周囲を気にする龍鬼に対し、睨み合う様子を傍観する魔鬼。そんな二人を放置して、刹鬼と桜鬼は睨み合いながら言葉を交わしていた。
「オレ様より弱い奴に従うのは御免だ。テメェの妖力は大したもんだが、オレ様には遠く及ばねぇ。三下は三下らしく、オレ様の言葉に黙って頷けば良いんだよ」
「はぁ……どうしてこんな奴を黒騎士に、まったくあの人も無茶を」
「あ?」
「貴方の意思は理解しました。ですが……」
「っ?(こいつ、いきなり妖力が上がって……)」
溜息混じりに肩を竦める桜鬼は、口を開きながら目を鋭く細める。その瞬間、周囲がさらに重くなり、凄まじい圧力がその場に居る者達の全身を押し潰そうとしていた。
まだ戦っても居ない。居ないはずなのに、刹鬼は目を見開きながら悟った。
「(こ、こいつの妖力は……潜在能力は、力は……オレ様よりも上っ)」
「跪け、でしたっけ?弱い犬程、良く吠える……とは良く言ったものね、現世の人間は。そっくりそのまま返すわ、跪きなさいゴミ」
「うぐっ……チッ……み、認めねぇぞ。テメェのような奴に、オレ様が劣るなんてなぁっ」
「どうぞ、ご自由に。私にとって、貴方達はおまけですから」
そう告げた桜鬼は、ニヤリと笑みを浮かべて身動きの取れない刹鬼に手を差し出した。やがてその手から火球が出現した途端、ハッとした表情で刹鬼は理解したのである。
――今のオレ様じゃ、こいつに勝てねぇ!!!
「ぐはっ!!!」
「寝言は眠ってから言いましょうね?刹鬼」
それが刹鬼の初めて味わった敗北だった。そして、桜鬼の本質を知った瞬間だった。
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