第322話

 「――気安くボクの名前を呼ぶなっ!」

 

 覇鬼の背後に回り込んだ魅夜は、力の限りに拳を振るった。振り向かずに魅夜の拳を防いだ瞬間、衝撃によって覇鬼の足が少し地面に沈んだ。


 「っ!」

 「怒りに任せて世を倒せると思っているのか?」


 ニヤリと笑みを浮かべる覇鬼に対して、魅夜は奥歯を噛み締めながら防がれた瞬間に体勢を変える。視界外から蹴りを繰り出した魅夜だったが、覇鬼は溜息混じりに再び片手間で防いだ。

 そんな魅夜の攻撃を防いでいた覇鬼だったが、防いだ瞬間に覇鬼の足元が凍り付いた。

 

 「私を忘れられては困りますね」

 「……」


 その様子を見た魅夜が目を細め、ニヤリと笑みを浮かべて距離を取った。片腕から重みが消えたのを察した覇鬼は、離れた位置から地面を凍らせている刹那へ視線を向ける。

 

 「次は貴様か、刹那……貴様の力では、世を倒す事は不可能だ」

 「そんな事は重々承知ですが、私も鬼組の幹部の一人ですからね。……それなりに戦わせてもらいますよ」

 「この程度で足止めのつもりか?」


 視線を鋭くした覇鬼に対して、刹那は覇鬼の体を凍らせる為の妖力を惜しみなく使ったのである。しかし、そんな刹那の様子を嘲笑した覇鬼はその場から動かずに妖力を上げたのだった。

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