第177話

 『ガォウッ!!』

 『ガァァァ!!』

 「くっ、小賢しいですね」


 私の気配察知能力の範囲外、そこからこの虎を呼び出したと考えて良いでしょう。ですが、私が倒されるかどうかを何処かで観察しているはず。傍観者を気取るような相手に対し、手加減する必要は無さそうですね。


 「まずは数が多いので、一網打尽にしましょうか」


 獲物を狩るように周囲を囲む虎は、どうやら警戒心も強く頭も良いらしい。私が攻撃すれば距離を取るのは当たり前だが、一匹が下がれば一匹が空かさずフォローを入れている。

 一匹一匹に意思があるのだろう。術で生まれた存在かもしれないが、殺してしまうのが惜しいと思ってしまいますね。


 「フッ……私も甘くなったようですね」


 あの頃よりも、遥かに甘くなってしまったようだ。彼に出会う頃の私は傍若無人で、無差別に他者を葬っていたというのに。


 『ガウッ!!』

 『ガァァァァ!』

 「ですが、あの頃があったからこそ……私は今もここに居るのですよ」


 仮に彼が私達を捨てたとしても、私は彼の意思に従うのみ。それがここに居る理由であり、あの頃に誓った私の意思なのだから。


 『――ッ!?』

 『ガッ!?』

 「ごめんなさい。まだ私は、死ぬ訳にはいかないのですよ」


 私は周囲の虎達を氷漬けにし、砕ける様子を見届けた。

 


 

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