第177話
『ガォウッ!!』
『ガァァァ!!』
「くっ、小賢しいですね」
私の気配察知能力の範囲外、そこからこの虎を呼び出したと考えて良いでしょう。ですが、私が倒されるかどうかを何処かで観察しているはず。傍観者を気取るような相手に対し、手加減する必要は無さそうですね。
「まずは数が多いので、一網打尽にしましょうか」
獲物を狩るように周囲を囲む虎は、どうやら警戒心も強く頭も良いらしい。私が攻撃すれば距離を取るのは当たり前だが、一匹が下がれば一匹が空かさずフォローを入れている。
一匹一匹に意思があるのだろう。術で生まれた存在かもしれないが、殺してしまうのが惜しいと思ってしまいますね。
「フッ……私も甘くなったようですね」
あの頃よりも、遥かに甘くなってしまったようだ。彼に出会う頃の私は傍若無人で、無差別に他者を葬っていたというのに。
『ガウッ!!』
『ガァァァァ!』
「ですが、あの頃があったからこそ……私は今もここに居るのですよ」
仮に彼が私達を捨てたとしても、私は彼の意思に従うのみ。それがここに居る理由であり、あの頃に誓った私の意思なのだから。
『――ッ!?』
『ガッ!?』
「ごめんなさい。まだ私は、死ぬ訳にはいかないのですよ」
私は周囲の虎達を氷漬けにし、砕ける様子を見届けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます