第十九夜「鬼化」
第254話
――数百年前、魔境。
桜鬼よりも先に黒騎士見習いとなった焔鬼と茜は、魔境に侵入した陰陽師の遣いである式神を排除する任務に取り掛かっていた。魔境へ侵入した式神は生き物のようだが、実体はあっても気配は通常と異なるものだ。
その気配は異様な物であり、焔鬼や茜と同じような気配に似ている。しかし、気配は似ていても、自然な気配ではない事を理解していた。それが陰陽師の術であり、式神である事を知っているからだ。
それを見据える焔鬼は、睨み付ける視線を向けて刀を抜いた。
「これが今回の侵入者か。馬鹿デカイ狐の式神だが、妖力は大した事ないな」
「大きいね、背中乗ったら楽しそう」
「迂闊に近付くなよ茜。奴はオレ達の敵だ、気を付けろ」
「分かってるよ」
笑みを浮かべた茜は、焔鬼と同じように刀を抜き始める。だが表情に対し、行動は臨戦体勢となっている。戦う気は満々だと理解出来るが、その物腰は柔らかいものだと焔鬼は目を細める。
「分かってるなら良いが……これは遊びじゃない。油断するなよ?」
「はーい」
焔鬼の言葉に対し、茜は笑みを浮かべたまま返事をした。焔鬼は肩を竦めつつ、茜の様子を気にしながら武器を構える。対峙している狐の式神は、咆哮と共に前足を思い切り叩き付けた。
それを回避して分かれた焔鬼と茜は、同時に左右から攻撃を仕掛けたのである。
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