第236話
殺気が、殺気が近付いて来る。
「――っ!」
ドス黒いオーラに包まれる彼女は、凄まじい程に色濃く、そして深い溝を覗き込んでいるような気分にさせられる。妖力の弱い者が近くに居た場合、立っている事は難しいだろう。
半妖である私でさえ、動く事を一瞬でも取る事を恐れたのだ。彼女と対峙した事は一度もない。でも、今ならその理由が分かった気がしなくもない。
「……」
昔の私はきっと、彼女と敵対したくはなかったのだろう。同性である事、目線だけで同じ相手に好意を抱いた事……そして、私が彼女を可愛いと思ったから。
「許さない、許す訳がない。……絶対に殺す、魂の芯まで焼き尽くしてやる!」
「せっかく思い出したのに、すぐに退場っていうのは嫌かな。これ以上は出番不足で、いつの間にか忘れられるとか勘弁して欲しいし」
「あ?何の話だ。ふざけてるのか?」
「こっちの話。……でも、そうだなぁ。私、サクラちゃんと戦いたくなかったよ」
そう、きっと私は彼女――友人になりたかったのだろう。
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