第175話

 空から降る氷雨を回避しようとした魔鬼だったが、回避し切れずに防御という選択を取らずには居られなかった。それが間違った選択と理解した時、魔鬼は自身の取った行動を呪う暇など無かったのである。


 「この術は、降り注ぐ氷雨に当たれば氷の華が咲くようになっています。その華は貴女の体を凍て付かせ、徐々に身動きが取れないように自由を奪います」

 「……」

 「まぁ、既に聞こえていないと思いますが……」


 氷の柱が町の中心に聳え立ち、その柱の中間辺りに魔鬼が柱の中に囚われている。その様子を見つめながら、刹那は白い息を吐きながら肩を竦める。微かに消耗したのか、自然と溜息を漏らしていた。

 

 「さて、誰かの手助けでも行きましょうか。陰陽堂の護衛も、飽きて来た所ですし。実際問題、もう私がここに居る必要は無いでしょう」


 そう言いながら陰陽堂に背中を向け、その場から離れようとした刹那。自然と氷柱から視線を外す事になった。その瞬間、氷柱にヒビが入った事に気付いた刹那は足を止める。


 「っ……まさか、あの状態から動けるというのですか」 

 「……」

 「気のせい、ではないですね。出て来られる前にトドメを刺す事にしましょう」


 刹那はヒビの入った箇所へと狙いを定め、巨大な氷槍を生成し始めた。数秒足らずに出来上がった氷槍を構え、深呼吸をして狙いを定めたままさらに集中する。

 やがて目を見開いたと同時に、刹那は氷柱の中に居る魔鬼へと氷槍を放った。

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