第156話
力を解放した事もあり、周囲の様子が耳に届く。どれくらいの距離かを説明するのは難しいが、それでもかなりの距離からの音が耳に入って来ている。
雷鳴白虎は身体能力の超向上による移動速度の上乗せ効果が主だが、未だに知らない所があるようだという事は理解した。そんな事を考えながら、周囲の音から聞き慣れた金属音が耳に入った。
「ハヤテ……苦戦してる?」
鬼組で二刀流で戦う人物は、一人しかいない。途切れる事のない金属音と共に、ヒュルリヒュルリと風の音も混ざっているからすぐに分かった。どうやら、相手している者の強さが勝っているのだろう。
代理とはいえ、鬼組の総大将という立場を担っている。その責任感もあるだろうと思いつつ、心の何処かで危険かもしれないという事が脳裏を過ぎった。
「これは、助けに行った方が良い?それとも、ボクは先を急いだ方が良い?」
ただの自問自答だ。けれど、心の何処かで彼が負けるかもしれないと考えてしまう。消えた気配の事も考えれば、十分に可能性があるのだ。少しだけ見に行っても、問題は無いだろうと思った瞬間だった。
「――見に行く必要は無いぞ、魅夜」
「っ!?」
その声を聞いた途端、背筋だけではない。全身に包まれる程に、感じてしまったのである。動かなければ……死ぬと。
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