第164話
陰陽堂に迫り来る餓鬼に対し、一瞬で凍り付かせた一人の妖怪。白い容姿という印象を受けざるを得ない程、その身を白装束で包んでいるのは鬼組幹部の一人である彼女――雪女の妖怪である刹那だった。
あと数歩で陰陽堂を攻め込む事が出来たにもかかわらず、たった一人で数体の餓鬼を氷漬けにして粉砕した刹那は目を細める。その視線には殺気が包まれており、一歩でも動けば同じように処理されると理解したのだろう。
餓鬼達は、たじろいでその場から動けなくなった。文字通り、文字通り以上の意味で全身が凍り付いていた。まるで足場が全て凍っているかのような錯覚を受けた餓鬼達に対し、刹那は目を細めたまま言葉を続けた。
「今なら退いても良いですよ。私は戦意が喪失している者を追う趣味はありませんから。逃げたければお好きにどうぞ」
ニコリと笑みを浮かべる刹那。そんな刹那の言葉通り、餓鬼達は逃げたいという感情が込み上げているはずだ。だがしかし、その感情は本能が拒んで動けずに居る。
一歩でも動けば同じ目に遭うと理解しているのだから、無闇に動くような事はしないだろう。本能的に動く餓鬼だとしても、自分よりも遥かに強者であると理解している様子だった。
『情けないわね。これだからお前達は、弱いままなんだよ』
「――っ!(
聞き覚えのない声と共に現われた気配を感じ、氷の壁を一瞬で生成した刹那。凄まじい勢いで生成された氷の壁の様子に戸惑った陰陽師達だったが、壁の向こう側を睨み付ける刹那の様子に生唾を呑み込んだ。
「……何者でしょう?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます