第341話

 酔鬼が引鉄を引いた瞬間、狂鬼は地面を蹴って覇鬼との距離を詰めた。瞬く間に接近する狂鬼に対し、覇鬼は手斧を投げてから動いた。投げられた手斧を首を傾げて回避した狂鬼だったが、回避した先で迫る手に顔面を鷲掴みにされた。


 「うぐっ」

 「貴様は寝ていろ」


 そのまま地面に叩き付けられた狂鬼は、負けじと牽制する為に横から大斧で薙ぎ払った。その攻撃によって拘束が解かれた狂鬼は、地面から抜け出して溜息混じりに告げる。


 「オレより数段速ぇ……(阿修羅の状態でこれかよ)」

 「どうした狂鬼よ、貴様の力はその程度か?」


 狂鬼の背後に回り込んだ覇鬼に対して、狂鬼は振り返ると同時に斬り掛かった。風を切る音と衝撃が、覇鬼の後ろにまで影響を与えている。だがしかし、狂鬼は目を見開いていた。

 

 「うぐぐ……くそがっ」

 「何度も言っているであろう。その程度では、世に勝てぬとな。――吹き飛べ」

 「うあっ!?」


 妖力のみで繰り出された衝撃波により、狂鬼は覇鬼から距離が離されてしまった。舌打ちをする狂鬼は、内から込み上げる苛立ちで眉を顰める。未だ決定打に欠けて、あと一歩足りないと思っているのだろう。

 そんな狂鬼の視界で、覇鬼の背後に回り込んだ者の姿を見たのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る