第361話
胸を貫かれていた焔鬼は、蒼鬼の攻撃によって自由になった。それによって、覇鬼を拘束する必要が無くなったのである。胸を貫かれた激痛に耐えながら、口元から血を垂らしつつも覇鬼との距離を詰めた焔鬼。
その命知らずの行動を取った焔鬼を見て、覇鬼は表情を歪ませて目を見開いた。それは咄嗟の物だった。焔鬼の奥に見えた人影、それは時を見計らっていたように妖術を同時に放とうとする茜と桜鬼の姿である。
「タイミングを合わせて!」
「チャンスは一度、絶対に逃す訳には行きません!!」
焔鬼が覇鬼の懐に入ると同時に彼女達は動き出していた。傷を受けた焔鬼が心配で気が気じゃなかった茜だったが、蒼鬼の一撃によって自由になった焔鬼の背中を見て奮起したのだ。
そして、焔鬼と蒼鬼が作り出したチャンスを逃す訳にはいかない。何故なら、この機を逃せば、もう二度とチャンスは訪れない可能性があるからだ。いや、可能性は低いと言っても過言ではない。
――その理由は明白だった。
叛転していた纏いが、自由となったと同時に解除されていたからだ。叛転による纏いの発動は、通常の纏い以上の反動を受ける。それを理解出来てしまう程、焔鬼の気配が微かな物となっていたのである。
「っ……(この一撃に全てを賭ける)」
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