第274話

 「無事かぁ?猫」

 「お、お前は……っ」


 その声の主を確認した魅夜は、戸惑いを覚えたがすぐにその相手から距離を取った。そんな条件反射で離れた魅夜を見て、呆れた表情を浮かべたまま溜息混じりに告げるのだった。


 「馬鹿かぁお前は。警戒するのは勝手だがよぉ~、状況はきちんと把握しろよ」

 「は、離せ。ボクはこいつを倒さなくちゃいけないんだっ」

 「お前じゃあの人に勝てねぇよぉ。無理だから、ここは一度立て直す為に離れるんだよぉ、理解しろ」


 そう言いながら脇に魅夜を抱えたその人物は、魅夜と対峙していた相手を見据える。敵意はあるが、戦闘の意思がないと伝わったのか。その相手は小さく笑みを浮かべて言った。


 「良いだろう、見逃してやる。往くが良い……酔鬼よ」

 「その姿のままで居るつもりなら、俺はあんたを殺すからなぁ?覚悟しておけよぉ?よぉ」

 「フッ……クク、ククク……世を殺す?それは無理な話だ。貴様では、いや……貴様ら程度の力では、世を殺すなど不可能だ」

 「それを決めるのはあんたじゃねぇよぉ。まぁ退屈させる気はねぇからよぉ、楽しみにしとけよなぁ。覇鬼様……いや、魔境王さんよぉ」


 そう言って酔鬼は、魅夜と共にその場から姿を消した。抱えられたまま移動する酔鬼に対して、魅夜は不満気に問い掛けるのである。


 「お前、何でボクを助けた?」

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