第162話

 目の前に仁王立ちしている蒼鬼の見上げ、ニヤリと笑みを浮かべる焔鬼。戦うつもりは無いという蒼鬼だったが、改めて焔鬼と対面して実感したのである。


 「(やはり気配は焔鬼そのもの……しかし、何かを感じてしまうのは何故だ?)」

 「どうした蒼鬼、お前が話したい内容を聞かせてみろよ。それとも、オレをここで足止めするのが目的なのか?」

 「足止めした所で、容易に止まる貴様ではなかろう」

 「まぁ、確かにな」


 蒼鬼の言葉に対し、焔鬼は肩を竦めながら頷いた。自分であれば、蒼鬼に足止めされたとしても問題は無い。そんな余裕さえも感じてしまうが、それを気にせずに蒼鬼は溜息混じりに問い掛けた。


 「私が聞きたいのは、今回の事だ。何故、貴様は彼等を裏切った」

 「彼等?」

 「鬼組の者達とこの町の者達の事だ。裏切る必要は無かったはずであろう。なのに何故、貴様は彼等を人間を裏切った!答えろ、焔鬼!」

 「……

 「っ!?(空気が変わった?これは、殺気っ)」


 殺気に包まれた事を察した蒼鬼は、素早く突き刺していた大剣を構えようとした。だがしかし、その程度の速さでは生温かったのだろう。構えるのに間に合わず、焔鬼からの一太刀を受けてしまったのである。


 「良い機会だから教えてやる。お前は……いや、は弱者だ」

 「貴様……は、何も、の……」

 「知りたいか?ならば教えてやる。我が名は……――」


 その言葉を聞いた瞬間、蒼鬼の意識は途絶えた。

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