第161話

 焔鬼の移動を遮るように大剣を地面に突き刺し、頭上から降りて来たのは元黒騎士である蒼鬼。地面を揺らす程に力強く着地した蒼鬼は、腕を組んで焔鬼の事を睨み付ける。

 蒼鬼よりも身長の低い焔鬼は、少し見上げる形となって目を細める。


 「へぇ……蒼鬼の顔を見るのは、久し振りだな」

 「現世こちらでは必要無いのでな、甲冑は戦闘時以外では着用しないのだ」

 「なら、どうしてオレの前で甲冑を外す?今のオレはお前等の敵だ。戦う気が無いのか?」

 

 そう言いながら構える焔鬼だったが、蒼鬼は腕を組んだまま目を細める。見下ろす視線を受けた焔鬼には、やはり蒼鬼から戦闘意思を感じられない。それに違和感を覚えた焔鬼は、構えを解いて小首を傾げた。


 「鬼組の連中が死に物狂いで戦っている最中さなかだというのに、お前は旧友を見つけたから挨拶しに来た。なんて言わないよな?」

 「フッ、私もそれ程までに愚かな行為はしない。だが、一つだけ貴様に問いたい事があったのだ。問いた後に抜けば良い」


 未だに腕を組んだままの蒼鬼の言葉には、嘘偽りは無いのだろう。その言葉に溜息を吐いた焔鬼は、肩を竦めながら睨み付けて問い掛ける。


 「――それじゃあ聞いてやるよ。何なんだ?お前の聞きたい事ってのは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る