第293話

 背中から生えた二本の腕……気色悪いですが、この禍々しい気配は危険です。妖力だけではなく、身体の奥底から受けてはいけないと警告しているようです。

 そうと決まれば回避する必要がありますが、蒼鬼さんが瞬時に動けるかは定かではない。動けるとは思いますが、高望みをすれば総崩れする可能性がある。それならば、私が動くしか無いでしょう!


 「蒼鬼さん、こちらへ!!」

 「ぐぉっ!?……刹那殿、何を」

 「良いから大人しくして下さい!殺しますよ?」

 「しょ、承知」


 ハヤテさんが動きを止めていると言っても、そう長くは持たないはず。それでも、回避してハヤテさんを孤立させれば、村正さんの後を追わせてしまう可能性が出てしまう。

 距離を作る訳には行きません。私の妖力を使って、その攻撃逸らさせて頂きます。


 「ほぉ?世の攻撃を受けようとするか?良かろう、ならば食らうが良い」

 「姐さんっ、駄目っス!!避けてくれっ」

 「おっと、貴様の動きは厄介だからな。このまま拘束させてもらうぞ?貴様の仲間が死ぬか生きるか、それを見届けるのも一興。共に見届けようではないか」

 「ぐっ、この野郎っ!!(こいつ……俺の剣を片手で凌ぎながら、もう片方の腕で俺の腕を掴んでやがるっス。このままじゃ……!)」


 そんな焦らなくても、問題ありませんよハヤテさん。私は鬼組の幹部の中でも、貴方と同じ時間を過ごした身です。この程度を切り抜けなければ、あの人の隣になど、居られるはずも無いでしょう!


 「――凍て尽きなさい!」

 「姐さんっ!!」


 ハヤテさんの呼ぶ声と共に、私の視界は禍々しい妖力に覆い尽くされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る