第195話

 気配すら感じず、妖力の規模も計り知れない存在。そんな相手と対峙していた狂鬼は、久しく経験してなかった強敵との対面によって気分が高揚していた。

 血が滾るような興奮状態となっているのか、高揚感に満ちた狂鬼の表情は狂喜に染まっている。その様子を眺めているのか、仮面で顔を覆い隠している相手は赤錆びた刀を振るっている。

 

 「(あんな刀身だってのに、オレの斧をいとも容易く弾いてやがるな)」

 「……」


 何者なのか正体は掴めないが、自分よりも強者である事は理解が出来ているのだろう。狂鬼は無理に攻める事はなく、堅実に様子見をしつつ攻撃を仕掛けに動いている。

 その様子見の攻撃では、流石に通用しない事は明らかだ。明確な力量差を計ろうとしている狂鬼だったが、埒が明かないと考えたのだろう。数本の手斧を出現させて、相手へと投げて牽制し始めた。

 順番に弾きつつ、一歩も動く様子がない。それを見据えつつ、狂鬼は手斧を投げ続けて様子を見続けたのである。

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