第196話

 「くっ!」

 「……」


 ――強い。


 目の前に居るこの仮面野郎は、鬼組の面子だけじゃない。オレを含めた黒騎士の面子と比べられない。それ程に強いし、圧倒的な実力差がある事が理解出来る。


 「チッ……はぁあ!」

 

 オレの力で出現させた武器だけじゃ、奴に通用する気配がないに等しい。それどころか、オレが完璧な状態じゃない事がバレてるんだろうな。さっきから衝突する度、手加減されてるのが分かる。

 これは黒騎士としても、鬼組あいつらの仲間としても屈辱でしかない。


 「?」

 「すぅ……はぁ……纏い――鬼神・阿修羅っ」


 戯鬼と戦った傷が完治していない中、オレは躊躇なく力を使う事にした。出し惜しみしたままじゃ、絶対勝てないと理解した。そうしなければ、オレが奴に勝てるビジョンが浮かばない。

 そう思ったオレは奴との距離を一気に詰め、奴が油断した一瞬の隙を狙って大斧を振るった。回避が間に合わなかったのか、それとも回避しなかったのかは分からない。

 

 「なっ……んだと!?て、テメェは、いったい……っ」


 だがしかし、それと同時に頭の中が真っ白になった。偶然にオレの攻撃が当たったが、当たったのは仮面に当たったらしい。徐々にヒビ割れた仮面が割れ落ち、奴の素顔が明らかになった事でオレは目を疑わざるを得なかったのだ。

 だってそうだろう。奴の仮面の下には、オレが良く知ってる存在……焔鬼の顔があたのだから。

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