第138話
……一方。
現実世界で虚ろな目をしている魅夜を見下ろす右近と左近は、魅夜の事をどう痛め付けようかと考えていた。
「お姉様、この猫をどう弄ぶのですか?少しでも遅ければ、ただの壊れた玩具にしかなりませんよ」
「壊れた玩具であれば、それ以上に壊れる事は無いわ。それに、ただ痛め付けるだけでは足りないわ。私はともかく、貴女の事を傷付けたのだから……相応の報いを与えるのは当然でしょう?」
「お姉様……」
右近の言葉を聞いた左近は、感激したような表情を浮かべる。目を輝かせつつも、右近の言っていた魅夜を痛め付ける方法に思案を巡らせる。
しかし、なかなか思い付かず、左近は目を細めて小首を傾げた。
「お姉様は何か妙案はありますか?私では、特に思い付かないのですが……」
「殺す事は容易い事よ。だから、死ぬ事を懇願するような事をするのが最善ね。自分から死にたくなるようになれば、この猫も幸せになるでしょうから」
「流石です、お姉様♪」
右近の言葉に頷く左近は、両手を合わせて笑みを浮かべた。そんな反応をする左近が愛らしかったのか、右近はニコリと笑みを浮かべて左近の頭を撫でる。
やがて右近は、腕を組みながら目の前で生ける屍となっている魅夜へ視線を落とす。色のない虚ろな瞳と無気力となってしまっている表情を見れば、既に戦意は喪失していると言っても過言ではないだろう。
だが、今の状態はただの術中でしかないのだ。それが解ければ、再び厄介な立ち回りを捌かなくてはならないのだ。それだけは避けようと思案を巡らせる右近に対し、左近は少しばかり不満そうな目を向けるのであった。
殺してしまえば良いのに――と。
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