第91話

 ――黒騎士・戯鬼ぎき


 黒騎士の中でも黒騎士とは異なり、餓鬼とも言い難い存在である戯鬼。その存在は、黒騎士の血液を採取して生み出された。黒騎士とも餓鬼とも違う存在である以上に、その戦闘能力は遥かに高い。

 暴走状態であれば、黒騎士を総動員しなければ止める事は困難だろう。それ程に戦闘能力が高い為、黒騎士内では封印されたという話を聞いていたのだ。聞いていたのだが、何故戯鬼が平然と動いているのだろうか。

 そんな疑問を浮かべる狂鬼は、睨み付けるような視線を向ける。睨み付けられた戯鬼は、首を傾げて狂鬼に問い掛けた。


 「まだ生きていたのかネ?狂鬼」

 「あの程度でられるような柔な奴だと思われてたなら、この上なく心外だなこの野郎」

 

 戯鬼の言葉に対して、不快感を覚えた狂鬼は眉根を寄せた。黒騎士となると同時に戯鬼の事を聞かされていた狂鬼は、戯鬼がして来た過去をある程度は知っている。

 だからこそ、戯鬼の戦闘能力が高い事を熟知している。熟知しているからこそ、狂鬼は戯鬼を早々に倒そうと考えていた。だがしかし、詳しい実力が分からない中で迂闊に攻め込むのは危険だろう。

 

 「ワタシを倒すつもりなラ、本気で戦う事をオススメするヨ」

 「テメェに言われなくても本気で戦ってやるよ。おい烏丸、テメェは空中から援護を頼む。だけどオレが手伝えって言うまで、戦いに参加するんじゃねぇぞ」


 そう言いながら手斧を出現させる狂鬼の背中を見つめ、烏丸は戸惑いつつも頷いた。烏丸も実力差がある事は知っている事で、無闇に戦闘に参加しようとは考えていないのだろう。

 素直に狂鬼の指示に従い、烏丸は空中へと飛んで行った。その様子を眺めつつ、戯鬼は烏丸を見送った後にもう一度首を傾げて狂鬼に問い掛ける。


 「二人で攻めて来ると思ったけド、一人でワタシと戦うつもりカ?」

 「テメェなんかオレ一人で十分だ。黙って掛かって来いよ、人形野郎」


 

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