第306話
「「っ!?」」
衝突しようと攻め込んだ茜と桜鬼。そんな彼女達の間に割り込むように現れた人影。その人影を見た瞬間、彼女達は目を見開いてその人物の姿を見て目を疑った。
「な、んで?」
「えっ、うそ、だろ?」
渾身の一撃を振るおうとし、衝突寸前まで手を抜いているつもりは無かった。しかし、それでも自身の技が一瞬にして相殺された事に戸惑いを感じていた彼女達。だが、それよりも……彼女は目の前の現状に頭が追い着いていなかった。
そんな様子の彼女達に対し、両腕で攻撃を相殺して受け止めていたそれが顔を上げる。白い髪を揺らし、深く被っていたフードがゆっくりと外れる。
「相変わらず仲悪いな、お前等。……たまには仲良く出来ねぇのか?」
「っ……(この気配、この声……間違えるはずがない)」
「どうした茜、驚き過ぎて言葉を失ったか。つか、あれほど鬼化するなって言ってあったはずなんだがな」
「あ、あぁ……ほ、ほーくん、なのか?」
「鬼化して言葉遣いが変になってるぞ」
驚きを隠せない様子の茜に対し、溜息混じりに肩を竦めた焔鬼は言葉を続ける。
「正真正銘、オレはお前の幼馴染で腐れ縁のほーくんだ。つか、いつまでその呼び方を続けるつもりだよ。オレはその呼び方するなって何度も――っ」
「ほーくんっ……ほーくんだっ、本物のほーくんだっ」
「おい、テメェいきなり抱き着くな。鬼化して纏いもしたまま抱き着くんじゃねぇよ!お、おい苦しい、殺す気か」
「……本当にほーくん、何だよな?」
抱き着く強さを微かに緩まり、顔を見上げて茜は焔鬼に問い掛ける。疑いつつも、期待するような眼差しが焔鬼に向けられる。その視線を受けた焔鬼は、口角を上げて茜の頭に手を乗せた。
そのまま手を流し、歪な形をしている片角に触れながら目を細める。
「この角を折った相手を忘れられるのか?お前は」
「っ!――あぁ、お前は本物のほーくんだ♪」
その言葉を聞いた茜は、涙を流しながら笑みを浮かべてそう言った。しかし、そんな彼等のやり取りを遮るように桜鬼は声を荒げたのである。
「う、嘘だ!!お、お前が兄様な訳がないっ!!」
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