第二十三夜「鬼、蒼炎に散る」
第291話
――ハヤテと刹那が覇鬼と対峙する少し前。
「ぶほっ……な、何が起きたのだ!?」
「あ、やっと起きたっスか」
森を抜けた平地の上で倒れていた者を見つけ、刹那はその者の顔に冷え切った水を被せた。甲冑越しに被せられたその者は勢い良く起き上がり、甲冑を外して頬杖をしてしゃがみ込んでいた人物の名を呼んだ。
「ハ、ハヤテ殿……刹那殿……」
「おはようっス、蒼鬼さん」「随分と寝坊をしたようですね?お気楽な事で」
「私は既に負けた身だ。私にあの方と戦う資格はないっ」
「あの方?蒼鬼さん、あんた……敵に敬いを向けるつもりっスか?」
「――っ!?」
目を見開いて告げられたハヤテの言葉は、まるで冷気に包まれている程の冷ややかな物だった。殺気と言っても良いだろう。その殺気を感じた蒼鬼は初めて感じたようだが、長い時を共に過ごしていた刹那は冷や汗を頬に滴らせていた。
「ハヤテさん、冷静さを欠くのはらしくないですよ」
「やだなぁ姐さん、俺は別にいつも通りっスよ」
「(普段は陽気なハヤテさんは、鬼組の中でも過激派。総大将が居た頃は大人しく自制していましたが、そろそろ我慢の限界でしょう。仲間がやられているのも含め、代理という立場がストレスになっているはずです)」
そんな事を考えながら、刹那はハヤテの言葉に呆れた物言いで返したのである。
「ふざけてる場合ですか?さっさと行きますよ、お二方」
「そうっスね……あんたも行くんスよ?蒼鬼さん」
「(拒否権は無い、か。止むを得ない……覚悟を決めるとしよう)」
こうしてハヤテと刹那に同行した蒼鬼は、再び覇鬼と対峙した――。
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