第2話
「う……ここは……ああそうか確か魔王城で送還陣が発動して……」
そこまで思い至った所で俺は、背中に感じる冷たい土の感触と左腕を包み込む柔らかく温かい感触に気付いた。ふと横目で見ると蘭が俺の腕に抱きついていて安堵する。
「良かった蘭も一緒に来れたか。蘭、おい蘭、起きろ!」
俺は蘭を揺するが起きる気配が無いので胸元に手を伸ばし、服の下に手を差し入れその豊満な胸を揉むことにした。
「ん……んん ふっ……あふん……ある……じ……さま?」
「おーい蘭! 起きろ〜」
「あるじさま……ちゅーもして……」
「寝ぼけてんな蘭起きろ〜」
「ん……あ、主様!」
「うわっ! ととと」
上半身をやや起こして蘭を起こしていたら、やっと起きた蘭が寝ぼけ眼で俺を見た途端抱きついてきた。俺は体勢を崩してしまい、蘭に覆い被さられる状態で倒れてしまった。
「主様主様主様〜」
「おーよしよし大丈夫だここにいるよ。一緒に無事送還されたからなもう大丈夫だ」
胸元に抱きついた蘭ごと再度上半身を起こし周囲を確認する。ここは何処かの山の中っぽいな。周りに生えている木々はなんだか見覚えがあるし、頭上を見上げると木々の合間から三日月と知っている星座が見える。
無事地球に戻って来れたのだろう。
あのクソ王国め……召喚された公園ではなく全く違う場所に送還するなよなここどこだよ。
しかし地球は結構魔素があるんだな。向こうの世界よりは薄いけど思ったよりある。
召喚される前は魔素を感じる能力なんてなかったから、これ程あるとは思って無かった。
これなら魔力が空になっても2日もあれば満タンに復活できそうだな。魔力補充用として大量に魔石を持ってきたが、これは無駄になるな。
「主様、ここが主様が言っていたチキュウのニホンですか?」
「ああ、地球なのは間違い無い。多分日本だとは思うが、少し山を下りてみないとわからんな。道路とか民家とかあれば大体の場所は分かるんだが……あっ、蘭は耳と尻尾を幻術で隠してな」
「はい主様。この世界は人族しかいないんでしたね」
「そうだ。まあそのままでもコスプレだと思って騒ぎにはならないと思うが念のためな」
「こすぷれとは確か偽物の耳やら尻尾を付けて獣人になりきる事でしたっけ?」
「ああうん、まあそんな感じかな」
「うふふ♪ なんだか不思議な国ですね」
蘭が幻術で耳と尻尾を隠したのを確認して俺も装備を外し、アイテムボックスに保管している黒い竜皮のズボンとシャツに着替える。
この格好なら平成日本でも目立たないだろう。蘭は……まあ少々目立つが着物と言えば着物だし、今の朱色メインの配色を変えさせて胸元をしっかり閉めさせれば大丈夫だろ多分。
「兎に角山の麓へ向かって少し移動してみよう。まずは現在地を確かめ…ん?」
「主様!」
移動しようと身を起こしたら魔力探知に何かが引っかかった。蘭も気付いたようだ。でも地球で魔力探知に引っかかる程の魔力を持つ生物? 探知した数と移動速度と魔力の大きさから、向こうの世界の狼系の魔獣にそっくりだ。
「8頭がこっちに向かってるな。どういう事だ? 地球の動物には実は魔力があったとか?」
あと少しで姿が見える。色々思う所はあるがまずは見てからだな。
「蘭は回り込もうとしている右3頭を! 俺は残りをやる!」
「はい!」
少ししてそいつの姿が見えた。アレは灰狼だ! 俺は正面の3頭と左側面へ回り込もうとしている2頭に対し魔法を発動する。
「グルルグアッ!」
『雷矢』
『炎矢』
俺が魔法を発動すると同時に蘭も発動した。灰狼は素早く避けようとするが、俺たちの魔法はホーミング機能付だからまず外さない。ほどなく全弾命中した。
「「「「「ギャッ!ギャウ〜ン」」」」」
襲い掛かってきた灰狼は全部一撃で絶命しており、その灰狼を見下ろしている蘭に目が行く。
うーん月明かりに照らされ少しハダけた着物姿の蘭は美しい……普段は優しい表情と眼差しなんだが、戦闘になると口元が少し笑い目が鋭くなりとても残酷そうな表情になる。このギャップに毎回俺はドキッとさせられる。
魔王と戦っている時は全長5メートルはある白銀の神狐の姿で、それはそれで神々しいというか美しかったんだが、人化した蘭は美しさと妖艶さを兼ね備えていて決して飽きる事なくいつもついつい見惚れてしまう。おっと灰狼確認しなきゃ
「ま、灰狼じゃこんなもんだな。ちょっと魔石を確認してみるか」
俺は倒した灰狼の胸を次々と解体用ナイフで開け魔石を取り出す。
「うーんあっちの世界の灰狼の魔石より少し小さいかな。同じ魔獣ではない? いや魔素濃度の問題か?」
体感だが異世界と地球では魔素濃度は2分の1位だと思う。異世界の灰狼が地球に住み着き、繁殖で生まれてくる子が魔素濃度の違いにより異世界の灰狼より弱いとかか?
そもそもなぜ地球に魔獣が? サッパリわからん!
取り敢えず蘭に灰狼の亡骸を燃やしてもらい山を下りることにする。
考えて分からないなら行動あるのみだ!
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