第79話 再会







「あ〜やっぱりこっちのパターンか」


「ダーリンが言ってた新しい門が現れるかもって予想が当たったわね」


「でもこれは扉付きよね。神殿ほど派手じゃないけど、この扉に描かれている8枚羽の悪魔? はなにかしら? 」


「これやべーぞ? 中からもの凄い力を感じるぞ? 開けたら駄目なやつだろこれ! 」


「確かに強い存在の力を感じますね。この扉に描かれている悪魔のものでしょうか? 」


「俺はこんなやつ知らないな。神や女神が作ったダンジョンのラスボスはたいていが天使やら神獣なんだが、これは角があるし悪魔か? でも悪魔で複数の羽付きなんかいたかな〜? 天使なら上位の熾天使セラフィムにいたが、男性体のセラフィムは見たことないしな。わからん 」


方舟最後の砂漠フィールドを攻略した後に、光一が管理者登録をしたことにより俺たちは資源フィールドにある攻略フィールドに繋がる門の前に出された。

するとそこには俺たちがいた門の前に、高さ5mほどの門扉が出現していた。

その門扉にはデカデカと8枚羽の悪魔らしき上半身裸の二本の角を生やした男が空に浮かび、地上にいる人々に対して両腕を広げている姿が描かれている。それはまるで全てを支配しているかのように見える。


「お待た……せ……なんだこの門は? なんか凄い威圧感を感じるんだけど……」


「おう、光一お疲れさん。全てのフィールドを攻略したら現れたんだよ。恐らくラスボス的なものがいるんじゃないかな」


俺たちが新たに現れた門を眺めていると、管理者登録を終えて戻ってきた光一が門を見て驚いていた。


「つまりそのラスボスを倒せば願いが叶えられるんだな? なら早速いこう! 」


「まあ待てって。門の隣に台座があるからまずそれを調べてからだな。俺の予想じゃSSランク以上のボスがいると思ってる。慎重にいかないとな。それに光一はもう戦う必要は無いぞ? 」


「は? なんでだよ! ラスボス倒さないと夏美を生き返らせられないだろ! 俺はそのために戦って来たんだ! SSランクだろうがなんだろうが絶対に倒してやる! そして夏美ともう一度会うんだ! 」


「だからお前の願いはもう叶ってるからこれ以上戦う必要が無いんだよ」


お? ちょうど資源フィールドの入口に蘭が到着したようだな。


「はあ? なに言ってんだよ。夏美を生き返らせるのが俺の……」


「主様お待たせしました。二人を連れて来ました」


「いいタイミングだ。光一、辛い気持ちを堪えてよく頑張ったな。神の使いとしてお前の願いを叶えてやる」


「玲……に確かダークエルフの刀を使っていた……お、おい! なんで泣いてるんだよ……それに光希が願いを叶えるだって? なに言ってんだ? 」


「相変わらず鈍いやつだ。蘭、幻術を解いてやれ」


俺は心底意味がわからないという顔をしている光一を見て、蘭に夏美に掛けた幻術を解くように言った。

神崎とこのタイミングで刀を扱うダークエルフが一緒でその子が号泣していてさ、俺が神の使いとして願いを叶えるって言ったんだから少しくらい気付けよ!


「はい! 涙のご対面です! 」


「!? あ……な……なつ……み? 」


「こう……いち……ぐすっ……光希さんに生き返らせてもらったの」


「夏美! 夏美夏美夏美夏美ぃーーー! 」


「光一! 会いたかった……いえ、ずっと光一をダークエルフとして見てた。私のためにあんなに傷付いて戦ってくれて……ごめんなさい。光一の気持ちも考えずに勝手に死んでごめんなさい……ううっ……ごめん……なさい」


《 グスッ……私こういうの弱いのよ……》


《 うっ……ううっ……私もコウと再会した時を思い出したわ……》


《 夏美……良かった……本当に良かったわね……》


《 あ、あたしは全然ヘイキだからな……スンッ……死んだはずの恋人との再会とか映画でもあるしな……スンッ……》


《 ああ……セルちゃんの泣き顔が可愛いです……蘭が抱きしめてあげます》


『 ちょ、蘭! やめろよ……あたしは泣いてなんかないって! スンッ……》


恋人たちが気を利かせて離れた場所でこの感動の再会にウルウルしてるようだ。



「なつみ……ウオォォォ……夏美……俺が馬鹿だったから……弱かったから……俺のせいだ……ごめんな夏美……痛かったよな。ごめんな……ごめん……くっ……ううっ……」


「いいの……光一が生きていてくれればそれで良かったの……でも光希さんに生き返らせてもらって、あんなに傷付いた光一を見て……私はもう二度と死なないわ……次に同じ状況になっても最後まで諦めない」


「俺は夏美がいないと本当に駄目なんだ……お袋や玲がいてくれて、光希が希望を見せてくれたからなんとか前に進めただけなんだ……ハッ!? そうだ! 光希! なんで夏美が生き返ったんだ!? 時戻しじゃ死者は生き返らせられないって……」


「ん? ああ、時戻しじゃ生き返らせられないぞ? でも蘇生魔法なら色々条件はあるが生き返らせられる。夏美さんは条件を満たしていたから死んだその日に生き返らせた」


うん、俺は嘘は言っていない。

しかし光一も夏美も涙で顔がぐちゃぐちゃだな。いや〜自分の泣き顔とかキモイわ〜


「は? 蘇生魔法? それに死んだあの日にもう生き返ってた? なんだよそれ! 聞いてないぞ!? 」


「言ってないからな」


「なっ!? 」


「光一さんごめんなさい! 私は知ってたの……でも教官が光一さんの心を強くするためだって……だからずっと黙ってて……ごめんなさい……ううっ……」


「玲も!? 俺の心を強くするためだって? 」


「そういうことだ。力を過信し調子に乗って恋人を死なす馬鹿にお灸を据えるためと、お前を強くするために俺が神崎に口止めした。結果としてお前は強くなった。もう恋人を失うような馬鹿なことはしないだろうよ」


あの時光一の前ですぐ生き返らせたら、光一はそれに頼った戦い方をしたかもしれない。俺たちがこの世界からいなくなった時に取り返しのつかないことにならないよう、大切な人を失うことがどういうことか長い時間体験してもらった。

死後何ヶ月も経ったら蘇生は不可能だしな。光一に二度と恋人を死なせることのないよう、心も体も鍛える必要があったんだ。


「……そうか……そうだな。俺は馬鹿だった……玲、心配掛けてごめん。それにずっと支えてくれてありがとう」


「光一さん……うわあぁぁぁん」


「光希……感謝の気持ちとなんでもっと早く教えてくれなかったんだよという気持ちと色々複雑だけど、光希がいなかったら夏美は生き返らせられることはできなかったんだよな。だから夏美を生き返らせてくれてありがとう。しかし攻略したら神様が願いを叶えるというのがこのことだったとはな」


「俺は神の使徒らしいからな」


「ぷっ! そうだったな。アマテラス様の使いだったな。そうか、神の使いが願いを叶えてくれたのか……俺も光竜教に入信した方がいいかな」


「その必要はない。お前が崇拝される立場だからな」


「は? 俺が? なん……で……って! 俺と夏美に顔を隠させたのはまさか! 」


「今頃気付いたのか? お前は俺の影武者だ。この世界の抑止力として、ついでに光竜教の神として俺の代わりに頑張ってくれ! 」


「なっ! なっ、なんだってーーーー!? 」


どんだけ鈍い男なんだよ。夏美さんは気付いてたぞ?

さすがに光竜教のことは俺も予想外だったが、まあ光一がうまく立ち回るだろう。

俺はこの世界には資源回収にしか来るつもりは無いしな。


あっ! その件もアマテラス様に会ったらちょっとお願いしてみようかな。方舟支社の倉庫と俺のアイテムボックスを繋ぐことができたら楽なんだよな。俺が取り出したい時だけ繋がるようにしてくれないかな? 頼むだけ頼んでみるか。


俺は目の前で聞いてないとか詐欺だとか、神様役なんて嫌だとかわめいている光一を無視してこの世界になるべく来ないで済む方法を考えていた。



まあ光一の件はこれで取りあえずハッピーエンドにできたし、次はこの気になる門を調べてみるかな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る