第5話 ドーラ






《各種族の代表は戦える者の数を確認した後に私に報告しろ! そして過去に死んだBランク以上の者の魔石を集めよ! 光魔王様が順次復活の儀式を執り行う! 急げ! 》




「やっぱり魔族たちも同じ魔族に指示された方が受け入れやすそうだな」


「エルフの私が言うよりは抵抗ないでしょうね」


「確かに人族の私が言ったらこうはいかないわね」


「しかしこの世界でも過去に聖魔人がいたとはな」


いつの勇者かは知らないけど、サキュバスのハニートラップに引っ掛かって手を出して子供まで作った奴がいるわけだ。

…………まさか俺の子じゃないよな?


いやいやいやそれはない。聖魔人になれば寿命が一気に延びるとか言ってたもんな。今いないということは俺の子じゃない。過去の勇者の誰かの子だな。

よし、大丈夫だ。ほかに心当たりはない。この世界で『パパ! 会いたかった! 』とかいう感動の再会はない!





俺がバガスにサンダルたちを隷属の魔法で縛ったあと、魔神だなんだと色々あったがリムに魔族たちの取りまとめをするように命じた。

リムたち三姉妹にカイやレムたち配下の者は、フロアで各魔族に指示をして忙しく動いている。


《 サキュバス族の新人のみんな〜! 光魔王軍親衛隊の特攻隊長で聖魔人のボクがまとめることになったからよろしくね! 》


《 せ、聖魔人!? あ、あの伝説の……》


《 た、確かにあの魔力は異質……角も長く白みがかってとても立派だ。話に聞く聖魔人の特徴そのもの…… 》


《 私たちの種族の中から聖魔人になった者が現れるなんて……》


《 しかも3人も現れるとは……》


《さらに光魔王軍親衛隊という確固たる役職に就いていらっしゃる 》


《 これは……デビル種の小間使いだった我らがとうとう報われる時が来たのでは? 》


《 あらあら……勘違いしないでくださいね? あなた達は光魔王軍にいるサキュバスたちの足もとにも及ばない実力ですから。虎の威を借る狐のような真似をして、私たちの顔に泥を濡るようなら使い潰しますわよ? 》



《しっかり光魔王様のために尽くしてください。そして光魔王様に認められて、それで初めて私たちと対等になれると肝に銘じてくださいね。それと光魔王様の契約魔法を全員に受けてもらいます。拒否するものは一旦魔石となって少しお馬鹿になって復活してもらいます 》



《よろしい。では光魔王様のお手が空くまでは、リム姉様に指示された通り動いてください》




お、お馬鹿……練習せねば。天使たちとの楽園のために練習して熟練度を上げねば。


俺は聞こえてくるユリの声に、今回の魔族たちの創造で熟練度を上げようと心に誓った。



まあここはもうリムたちに任せて大丈夫そうだな。


「以蔵! 」


「はっ! 」


「この一つ下の階に幹部用の施設がある。そこを押さえ皆の魔導テントを設置してくれ。そしてそのフロアはLight mare以外の者の立ち入りを禁止しておいてくれ。俺はこの奥にある魔王の居室を使う。以後は心話で」


俺は探知でこの魔王の椅子ある通路の先に後ろに、広い空間があるのを見つけたので魔王の居室だろうと思いそこに向かうことにした。


「はっ! 承知いたしました。すぐに取り掛かります! 」


「紫音、桜。それにマリーたちは付いてこい。みんなも奥に行こう」


そう言って俺は皆を連れて奥の通路へと向かった。






「うわ〜、一つ一つの家具が大きいわね。ここが魔王の住んでた部屋なの? 」


「恐らくそうだろう。魔王はグレーターデーモンで5mくらいあったからな。食事や風呂や寝るときはテントの中で過ごすし、ここでもまあ問題ないだろう」


通路の先は魔王の居室になっていて、赤い絨毯が敷き詰められている広い空間にやたら大きい椅子やソファなどが置かれていた。


天井は15mくらいはありそうだ。まあ魔王はデカかったからな。


「コウ! 見て! 外の景色が凄いわ! 本当にあの恐怖の魔大陸なのかしら? 」


「これは……ここに来るまでのイメージとだいぶ違いますね」


「どうしたのシルフィにお姉ちゃん……え? 畑? 」


「なんだ? 外に何かあんのか? って、なんだこりゃ? 」


「主様……前に来た時と随分変わってしまいました」


「そ、そうだな……もはや別世界だな……」


部屋にある大きな窓からは、魔王城の城下町とその先の山々、そして平野部と山の合間にたくさんの畑を見ることができた。

城下町は俺たちが現れた時に召集が掛かったのか武装した魔物が多くいたが、畑には鍬を手に畑仕事に精を出すゴブリンにオークやオーガ、アドバン種らしき姿が見えた。


農道には荷車を引いている灰狼にバイコーン、農機具を引く魔牛の姿なども見えた。


その姿はとても魔王のいた大陸にいる魔物の姿ではなく、人族のそれと変わらないごく普通の農家のおっさんと家畜たちだった。


バガスが言ってたのはこういうことか。昔ここに来た時は畑なんて一つも無かったのにな。

ダンジョンが無くなりドーラがいる影響から人族から略奪もできなくなり、種を存続させるためにやむを得ず畑仕事をしてるってことか。


ん? あの山にいるのはトロールか? 木材の伐採と運搬をしているのか。

よく見ると厩舎らしき建物も結構あるな。中に魔牛でもいるのかもな。

農業に畜産業、やってることは人族と同じだな。魔牛の畜産は命懸けになりそうだが。


しかしこれがあのヴェール大陸……


「魔物が鍬を持って畑を耕してるわね……」


「コウ、ダンジョンの魔物より明らかに知能が高そうに見えるわ。進化したのかしら? 」


「まさか魔物が農業をするなんて予想外でしたね」


「ダンジョンもない、魔力もないなら食料を作るしかないからな。夏海の言うようにいくら必要にかられてとはいえ、魔物がこんなことをするのは予想外だったけどな」


「紫音、城下町に市場みたいなのもあるぞ? 」


「……魚発見。漁もしてるみたい」


「ほんとにあるな……サハギンやダゴンに獲らせてるのか? 確かに人族よりは安全に漁ができそうだが……」


地上の魔物は減らせても、この世界の広い海に残った魔物はそうそう減らせないだろう。漁業では魔物たちの方が収穫量が多そうだ。


城下町では商店や市場のようなものもあり、サハギンにアラクネやオーガに吸血鬼などが店を出しているようだった。

ここでもゴブリンは雑用係っぽく、あっちこっち駆け回っていた。


配給制かと思ったら、通貨が流通してんのかよ……もう一つの国なんじゃないか?


俺の知っているヴェール大陸と魔王城周辺は、荒れ果てた土地に野ざらしにされている魔物の遺骸、ヴェール大陸の空を覆い尽くすかのような夜魔切鳥にパニックコンドルやハーピーにガーゴイルの群れ。

そして魔王城の周りに溢れかえる武装した魔物、エルダーリッチに率いられる死霊の軍団とそこは常に死の気配が漂っているような所だ。


「変わったな……」


「蘭はもしかしたらリアラ様に並行世界に送られたのではと思うようになりました」


「俺もだ……」


俺と蘭はたった1年と8ヶ月前の記憶と、現状の違いに軽くショックを受けるのだった。




しばらく記憶と現実の違いに混乱していた俺は、この世界では300年以上経っているんだと自分に言い聞かせ居室の中央にテントを設置した。


魔王の部屋の奥には寝室もあり、魔族たちが維持管理していたのか寝具も設置されていた。

この部屋は夜景も見れて雰囲気がいいので、俺が寝る時はこの巨大ベッドを使うことにした。

今夜は蘭とこの世界で久々に愛し合おうと思う。


それからテントで紫音とマリーたちと一緒に昼ごはんを食べ、皆でヴェール大陸を散策しようということになった。

紫音と桜にマリーたちは魔王の部屋の掃除と、俺が寝る予定のベッドの寝具を取り替えたいというので残ってもらうことにした。

別の日にこの子たちを連れて行ってやろうと思う。いつも本当に助かってるからな。


俺はリムに心話で少し散歩してくると伝え、部屋から見える南の山の麓に恋人たちを連れて転移をした。





「さて、お待たせ蘭。ここなら大丈夫だろう。魔王城じゃパニックになるからな」


「はい! ドラちゃんを呼びます! 」


「蘭ちゃんがいつも話していた風竜ね。この世界でダーリンと蘭ちゃんと共に魔王軍と戦った最強の竜だったわよね。とうとう見れるのね」


昨日からエフィルやララノアの心配をしつつも、ドーラがどうしているかずっと言ってたからな。

この世界を離れてからも時折エメラを見てドーラを思い出していたみたいだし。

魔王を倒して俺と共に来ることを選んだ時にドーラとの別れは覚悟してたはずだけど、こればかりは理屈じゃないんだよな。


「蘭ちゃんはこの世界に置いていってしまったドラちゃんのこと心配してたものね。この世界に来る時も、着いたらドラちゃんを私たちに紹介しますって嬉しそうだったわ」


「ドーラって蘭が言ってた旦那さまが限界まで強化したって竜だろ? クオンより強いのか? あたし戦えるかな? 」


「うふふ、クオンちゃんじゃ瞬殺されてしまいます」


「まじか! ドーラやばいな! 」


大丈夫だ。クオンはドーラの装備を見ただけで逃げるから戦いにならない。


「ドーラに会うのは久しぶりね。あの子、私がいてびっくりしそうね」


シルフィもドーラに懐かれてたな。同じ風を操る者同士だしな。


シルフィを失ったあの時、王国の命令で当時中位竜だったドーラを王都の防衛に行かせていなければ……あんなクソみたいな王族を守るためにドーラを取られていなければあの戦いももっと有利に……いや、それでも公爵の裏切りは予想できなかった。

前線にシルフィのことで報告があった時は、もう既にシルフィが禁呪を発動した後だった。ドーラを呼び戻して全力で向かってもシルフィが死ぬ未来は変わらなかったか……


ドーラもあの時は悲しんでいたと蘭が言ってたから、シルフィが生きていたと知れば喜ぶと思う。

俺はあの時ドーラに山に帰れと言って放置してたから知らないが……

あの時の俺は本当に自分のことしか考えていない最低な野郎だったな……蘭に支えられていなかったらあのままずっと娼館勇者のままだったかもしれない。


あの時一年近く放置したドーラを迎えに行った時のことを考えると、相当怒ってるだろうな……300年だもんな。再会する予定がなかったからまったく考えてなかったよ。

やべえなぁ、なんであんなに強化しちゃったんだろうな俺。

契約解除しちゃってるしな。最悪隷属……は蘭が本気で怒りそうだからやめておこう。口きいてくれなくなりそうだ。


俺は嬉しそうに心話でドーラに呼び掛けている蘭の横で、ひとり戦々恐々としていた。


「主様! ドラちゃんがいました! 」


「そうか……生きてたか……で? どこにいるって? 」


「それが魔王城の近くにいますよと伝えたらかなり興奮して、すぐに来るって感情が伝わってくるだけでどこにいるのか答えてくれなかったです」


トランス状態か……やばいな。

アトラン大陸にいるはずだから南から来るのは間違いないな。それなら魔王城周辺には被害が出ないだろう。


「もうちょっと南に移動するか。海から来るだろうからな」


「はい! アトラン大陸からならここまで2時間くらいでしょうか? 」


「ドーラが全力で飛べばな。まだ時間はある。もう2つくらい山を越えて南に移動しておくか」


「うふふ、ドラちゃんはお転婆さんですからね」


そんなレベルじゃないけどな。


俺は不思議がる凛たちを連れて上空に飛んでからさらに南へ、アトラン大陸のある方向へ転移した。

ここからならもう魔王城も視界に入らないし大丈夫だろう。

俺は椅子とテーブルを出してみんなでお茶をすることにした。

ドーラが来たらすぐわかるからな。ここなら余裕を持って対応できる。




それから40分ほど経過しただろうか?


蘭のドーラとの思い出話をみんなで聞いていると、凛がなにかに気付いたのか西の方を見つめていた。


「あれはなにかしら? 竜巻? 」


「凄い勢いでこっちに向かって来てるように見えますが……」


「ん? げっ! アトラン大陸にいたんじゃなかったのかよ! 」


「あ、主様……」


俺が凛の見ている方向に目をやると、巨大な竜巻が山を越えてこちらへと向かってきていた。

それは俺と蘭の魔力を感知したのか、さらにスピードを上げて向かってきた。


「な……なによあれ……お、大きすぎない? それに雷が凄いわ 」


「まさかあの竜巻の中にドーラがいるのですか? 」


「なんだあれ! エメラの魔法の10倍はあるぞ! しかも雷付きだ! 」


「コウ、シルフがあの風はかなり興奮していて手がつけられないって言ってるわ」


「あ、主様……」


「行かなきゃマズいだろ……ちょっと想像以上の規模だけど」


ドーラ強くなってるな。魔王軍の残党狩りしてたのかな。

あ〜あ、兜鎧に付与した天雷撃ちまくってるよ……装備だけでも外してくれないかな。

待たせたこともあるしあんまり手荒なことしたくないんだよな。


「俺と蘭とシルフィで行くから凛たちはここで待っていてくれ。ちょっと予想より興奮してるみたいだから叩き落としてくる」


「わ、わかったわ。でもなんで久しぶりに会うのにあんなに危険な雷と竜巻をまとってるのよ……」


「凛ちゃんの言う通りですね。300年ぶりの感動の再会なのになぜ……」


「うれションみたいなもんだ」


「「うれション!? 」」


「犬みたいだろ? 能力は上がったようだけど、中身は300年経っても全然変わってなさそうだ。まあ適当にじゃれてくるさ」


前にドーラを迎えに行った時は鎧は装備してなかったから竜巻だけで済んだけど、今回はなかなかに強烈そうだ。


俺は蘭とシルフィを抱き抱え、ドーラのがいる方向へと転移した。


ドーラの魔法の範囲外へと転移した俺は、飛翔の魔法で滞空しながら女神の護りをシルフィと蘭に掛けた。

シルフィはシルフの力で、蘭も飛翔のネックレスでその場に滞空している。

そして無駄だと思いつつもドーラに心話を送った。


《 ドーラ、俺だ。300年も待たせて悪かったな。魔王は倒した。そのあと別の世界に強制的に転移させられたんだ。そしてリアラの力でまたここへ戻ってきた。もう一人にはさせない。ずっと一緒だ。だからその魔法を解除してくれ》


《 ルオォォォン! ルオォォォン! ルオォォォン! 》


あ、あかん。絶賛大興奮中だ。


「蘭は? 」


「やっぱりドラちゃん興奮していてお話を聞いてくれないです」


「私なんて応答もしてくれないわ。コウとランちゃんしか視界に入ってないみたい」


「わかった。仕方ない。シルフィはシルフに言って落下速度の減速と、落下地点にエアクッションを頼む」


「あの巨体を!? ハァ〜仕方ないわね。シルフ、竜巻が消えたらお願い」


「蘭は俺が叩き落としたらドーラを落ち着かせてくれ」


「はい! 」


俺は2人に簡単な段取りを説明し、そろそろドーラの魔法の効果範囲に入りそうなので魔法を一点集中しやすいよう聖剣を取り出し構えた。

とりあえずどれくらいの威力でやればいいかわからんから鑑定してみるか。



『鑑定』



ドーラ


種族:竜種


体力:SS


魔力:SS


物攻撃:S


魔攻撃:SS


物防御:S


魔防御:SS


素早さ:SS


器用さ:SS


種族魔法:竜魔法(障壁・ブレス)


備考: 上位風竜



まあこんくらいになってるよな……すでに古代竜か四天王クラスのステータスだな。そのうえ俺が与えたミスリルの鎧と、それに付与した女神の護りの結界に天雷を付与したミスリルの兜鎧か……


俺が与えたこれらの装備には、ドーラの魔力を消費しないで発動できるよう大型の魔結晶を埋め込んである。


このステータスの魔法障壁と女神の護りを破ってドーラを行動不能にするには……こんくらいかな? まあ少し気絶するくらいだろう。



ルオォォォン! ルオォォォン!



「おいっ! このお転婆娘! いい加減落ち着け! 『神雷』! 」


俺は迫り来る天雷付きの巨大な竜巻の中心部に向かって、聖剣で威力を増幅せずに轟雷を放った。


ドンッ!


聖剣を通して放たれた魔法は聖属性へと変換され、光となって上空の雲に向かっていった。

そしてすぐに白い光をまとった雷が、ドーラがいると思われる竜巻の中心部に突き刺さった。


「ドラちゃん! 紋章『転移』『女神の護り』 」


「シルフ! 支えて! 」


神雷を受けたドーラは魔法障壁も結界もあっさりと突き破られ、その身に神雷を受けたことにより発動していた全ての魔法が解除された。

そして全身を硬直させた後に、ゆっくりと地上へと落下していった。


それを見た蘭はドーラの背に転移をし女神の護りをドーラに掛け、シルフィはシルフでドーラの身体を支え落下速度を落とした。そして落下地点にエアクッションを作り、ゆっくりとドーラを受け止めた。


かなりうまくいったな。だいぶ神力で上がった威力を把握できてきたぞ。


俺はドーラが落下した山の麓に転移をし、ドーラの身体を上級回復魔法で回復した。


『ラージヒール』


俺が回復魔法を放つと、ドーラの身体の鎧が覆っていない部分から少し出ていた煙が収まり、焼けて剥がれかけていた鱗もみるみる元に戻っていった。ドーラはショックで気絶しているようだ。

今のうちにがんじがらめに縛りたいが、蘭がべったりだもんな。


「ドラちゃん! 主様と蘭が迎えにきました! ドラちゃんに蘭はとっても会いたかったです! ドラちゃん長い間ひとりにしてごめんなさい。ドラちゃんに寂しい思いをさせてごめんなさい。ドラちゃん……ドラちゃん……」


《 ……ルオ? ルオォォ!? ……ルオッ!ルオッ!ルオォォォン!ルオォォォン! 》


蘭がドーラの首にしがみつきながら泣いていると、ドーラが目を覚ましやっと蘭の存在に気付いたようだった。

蘭ちゃん? 蘭ちゃん!? 蘭ちゃんだ! 蘭ちゃんだ! ってドーラも嬉しそうだ。


「ドーラ、覚えてるかしら? シルフィーナよ。私、実は生き返ったの。また仲良くしてね? 」


《 ルオッ!? ルオォ!? ルオォォォ! ルオォォォ! 》


「ええそうよ生き返ったの。悲しんでくれてありがとう。また4人で暴れましょうね」


《 ルオォォォン! 》


ドーラはシルフィがいることに今さら気付いてかなりびっくりしている様子だったけど、細かいことは気にしないガサツな性格だからすぐにシルフィを受け入れて喜んでる。

また暴れましょうね、うん暴れよう。だってさ。

どこで暴れるつもりなんだろ……


「ったく! 手間かけさせやがってこのお転婆娘が……まあ、ドーラただいま。長い間待たせて悪かったな。もうどこにも行かないからおとなしくしてろよ? 」


《 ルオォォ……ルオッ! ルオッ! ルオォォン!! ルオッ! 》


「うおっ! ちょ、待て! その兜痛え! 突くな! 痛ぇっ! 怒るなって! おい! ちょっ! 」


なんで俺にだけ怒ってんだよ! 頭突きすんなこのドラ娘!


「うふふふ、ドラちゃんの愛情表現久しぶりに見ました」


「ふふっ、そういえばよくコウを小突いたり噛んだりしてたわね」


「はい! ドラちゃんは主様が大好きなのに素直じゃないから、ついついああいう風にしちゃうんです」


なんだよそれ! そんな暴力でしか愛情表現できない女なんかごめんだって!


《 ルオォン! ルオッ! ルオッ! 》


「なんだよその全然好きじゃないだからねっ! って。竜のツンデレとか誰得だよ! 」


《 ルオォォォン!! 》


「おわっ! お前ここで天雷とかっ! やめろ! 当たる! おいっ! シャレんなんねーぞ! ちょ、連発はやめろ! 風刃を混ぜるなこのドラ娘! お、おいっ! 蘭! 押さえてろって! なんで離れんだよ! 」


「うふふふ、あの時と同じです」


「ふふっ、そうね。10年前のあの時と同じ。まだ小さかったランちゃんと、まだ中位竜だったドーラ。私は短い期間だったけど、ドーラと私とコウとランちゃんの4人で旅をしていたあの時と同じね」




こうして俺たちはこの世界に残していったドーラと再会を果たすことができた。


俺と蘭は2年にも満たない時間だったけど、ドーラにとっては300年振りで……


俺がやったドーラお気に入りのミスリルの鎧はよくみると傷だらけで……


ずっと俺と蘭が守ろうとしたアトラン大陸を守っていたんだよって自慢げに言っていて……


そして300年以上ずっとあの場所で待っていたんだって、全然寂しくなかったって強がっていて……


そんなドーラの気持ちを想うと、俺はドーラに黙って怒られることしかできなかった。


痛いしずっと愚痴言われ続けるし、最後には号泣されるしで散々だったけどな。




ただいまドーラ。


300年待たせて悪かったな。


これからはずっと一緒だ。


またよろしくな。







**************



筆者より。



更新日を間違えないよう、毎週火曜日と木曜日と土曜日に更新します。

更新時間は早くて12時。遅くて18時です。


最初の頃のように思うがままに書き殴っていた頃と違い、話数を重ねれば重ねるほど自分の作った設定にがんじがらめになって書くのに時間が掛かってきています。


設定やセリフになるべく矛盾のないよう書いていきたいと思いますので、引き続きご愛読いただければ幸いです。



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