第28話
「さて、シルフィーナ。もう落ち着いたかな?」
「はい勇者様。もう大丈夫です。勇者様を奴隷か何かのような言い方をしたのに、みんな許してくれて少し救われました。本当にごめんなさい」
「シルフィーナがそんなつもりで言ったわけじゃないのは分かってるから気にしてないよ。ただ俺はもう二度と国や権力者に力を利用され、大切な人を失いたくない。俺は世界なんかのためではなく、俺の大切な人だけを守るために剣を振るうと誓ったんだ。それを邪魔する者がいるのであれば、俺は日本にとって世界にとって魔王となることに躊躇しない。それだけは認識しておいてほしい」
「勇者様……は、はい肝に命じておきます」
なんだ? シルフィの顔が赤いぞ? どうしたんだ? また何か妄想してんのかな……
「それで攻略中に得た魔石は決まりに従って協会に納品するけど、知っての通り俺は上級の錬金魔法と付与魔法を持ってる。だからコアは魔道具を作るために自分で使いたいんだ。ダンジョンコアに関しては提出の義務は無かったよな?」
「ええ、魔石に関しては私たちが伝えた技術でエネルギーに変換できましたが、コアの膨大なエネルギーを制御する術を私たちは知らなかったので、協会設立当初は提出義務の項目を設けませんでした。最近になり制御に成功してからは、資源省の横槍があり結局提出の義務は見送りになっていました。勇者様の仰る通り確かに錬金付与魔法を使えるドワーフなどは、喉から手が出るほど欲しい魔結晶ですが……破片はいいですから、塊だけでもなんとか探索者協会を通して国に売却していただけませんでしょうか?」
「それは無理かな」
「破片だけでは足りませんか……」
「いや破片は無いんだ」
「え?」
そう言って俺はアイテムボックスから革の敷物とコアを取り出し、テーブルの上に置いた。
ゴトッ
「ふぁっ!?……か、完全体の……こ、コア」
「な? 破片なんて出しようが無いだろ?」
「い、いったいどうやってあの硬い台座からこのような1メートルもあるコアを……私たちだって慎重にやって40センチの塊しか…」
「俺の空間魔法で斬った」
「空間魔法でですか? 空間魔法に攻撃系があるとは知りませんでした」
「最上級を覚えればあるんだ。この魔法は戦闘中は使いにくいが、それ以外の場合この世で斬れないものは無い」
「それではまるで石川五右衛……あっ、いえ、凄い魔法ですね」
おいっ! 今何か言ったろ! この子日本に長く住んで勇者オタからアニオタへクラスチェンジしたんじゃないか?
「それはもう凄かったんだから! 4面をV字にキンッキンッ! って」
「あの硬い台座が豆腐のように斬れてました」
「そんなに呆気なくあの台座から……」
「まあ厳密に言うと台座は底の部分だけしか斬ってなくて、後は魔結晶を削り斬ったんだけどね。それでそのコアなんだけど、シルフィーナがどうしてもと言うのなら条件付きで探索者協会を通して売ってもいい」
「ほ、本当ですか? どうしても探索者協会を通してほしいです! これ程の物があれば資源省に対し大きなカードになります! その……条件とはなんでしょうか?」
「出自は孤児でも捨て子でもいいので、俺と蘭に正式に日本国籍を与えてほしい。その際に佐藤光希という人物がいたら俺は倉木という家名で、存在しなかったら佐藤で頼む」
「ええ、分かりました。並行世界のご自分がいる可能性があるわけですものね。国籍の取得に関してはお二人とも上級ダンジョン攻略の実積がありますし、なによりSランク探索者ですのでむしろ政府の方から国籍取得をお願いされます。ですから問題無く取得できます」
「ありがとう。そのSランクになるのはいいんだけど、俺と蘭のステータスは勇者や神狐だと知られたくないからまた少し擬装する。蘭は狐獣人ということにしてくれ」
「はい。それはもうそのようにさせていただきます。先程蘭さんのステータスを拝見して、神獣である神狐と知り本当にびっくりしました。さすが勇者様の従魔だと」
「蘭は俺以上に頑張ったからな」
「主様の愛があったからです」
「俺も蘭の愛と支えがあったから強くなれた」
「……主様」
「蘭ちゃんいいなぁ私もダーリンに言われたい」
「はぁ〜2人の関係みたいに早くなりたいですね」
「………羨ましい」
ん? シルフィーナがうつむいて何かボソッと言ったな、なんだ?
「ごめん話が逸れたね。次の条件だけど横浜ダンジョンがあった壁の内側の土地の所有権が欲しいんだ」
「ええ!? あの土地全てですか!?」
「そう、もちろんダンジョン内に残る魔獣は俺たちで責任を持って掃討する。まだ下層に吸血トロールとかいるしね。俺たち以外だと相当な被害が出るよ? そうなればいつまでもあの土地は使えないだろ? 元々俺たちが攻略しなければ使えない土地なんだし。もちろん魔獣の掃討が終わったら、調査などで自由に出入りしてもらっても構わない。俺はあの土地を誰にも渡したくないだけなんだ。これを呑んでくれればコアは2000億で売ってもいい」
「た、確かに勇者様の言う通り勇者様が攻略しなければ、あの土地はずっと使えなかったのは確かです。それに吸血トロールやハイオーガなんて相手にできるのは、私ともう1人くらいしかいません。当然その他の同行者には犠牲が出るでしょう。わかりました。土地の件はその方向で政府と交渉してみます。あとコアの価格ですが私たちが過去に得たコアは、千葉の舞浜に異世界人特区を設けてもらうことで相殺したのでいくらが相場なのかわかりません。海外でも前例がありませんし…」
「そうだな……魔結晶の出力や永久機関であることを考えると、このコアくらいなら中規模原発くらいにはなるんじゃないか? そう考えると原発の建造費が平均3000億だから、維持費の格安さや環境破壊の廃棄物など出さない分、魔結晶の方が低コストクリーンエネルギーだと思うんだ。なら2000億は安い買い物だと思う」
「わ、分かりました。詳しい者を連れてその方向で話してみます。しょ、証拠に写真いいですか?」
「うん、撮っておいて」
「大きさの比較ができるように、私も勇者様と一緒に写っていいでしょうか?」
「ああ、いいよ。凛撮ってあげて」
「はーい!」
「あ、ありがとうございます!」
色々とシルフィーナに厳しい交渉をお願いすることになった。写真は意図が見え見えだけどね。こういう所が出会った時のシルフィにそっくりなんだよな。
俺は顔を赤くしながら隣に立つシルフィの肩を抱き、凛がこちらに向けて持つスマホを見るのだった。
「あっ……勇者様……」
「せっかくだから、ダンジョン攻略者と友好関係築いてますよとアピールしとこう」
「あ、はい!」
「ハイ! チーズ!」
ピロリロン♪
「これ政府の人に見せるの?」
「え? あっ……そうでした……も、もう一枚普通のお願い」
「ぷっ……あはは、わかったわじゃあ普通のハイチーズ!」
「あ、ありがとう皇さん。やだ恥ずかしい……」
俺が肩を抱いて友好関係アピールしようと言ったら、嬉しそうに両手で俺の腰に手を回して俺の胸に顔を埋めてきてそれを写真に撮られてしまった。これでは政府に見せるのはマズイと撮り直したら、顔を真っ赤にしてうつむいてる写真になった。
まあ、俺とというより勇者とツーショット写真撮れて嬉しかったんだろうな。シルフィの考えが手に取るようにわかるわ。
「ははは。勇者大好きっ子だからなシルフィーナは」
「そ、それだけじゃないです! あ、いえその写真ありがとうございます」
「交渉の方、なんとか頼むよ」
「はい! 全力で交渉します。それまでどうか資源省にはお気を付けください。警察とも繋がりが深く、過去に上級ポーションや上級魔力回復促進剤やレア魔法書など貴重なアイテムを手に入れた探索者が、何人も謂れの無い罪で投獄されてます。中には護送中抵抗されたとかで殺された者や、行方不明になった女性も何人かいます」
「そこまで権力持ってるのか、貴族と変わらないな」
「ええ。冒険者からレアなアイテムを奪うやり方は貴族そっくりですね。特にこっちの世界では上級ポーションを調合できる者がいないため希少性が高く、出世の道具としてはこれ以上無い物のようです」
「そうして探索者の寿命を縮め、巡り巡って国の寿命をも縮めているわけだね。まっ、こっちも準備をしておくさ」
「警察も探索者課ができてからは、探索者が相手の場合正当防衛であれば死なせてもやむを得ないということになってます。くれぐれも先に手を出さないようにしてください」
「そうか、まあ一定のランクの探索者には銃が通用しないしそれに合わせた法律なんだろうな。ありがとう、気を付けるよ。いざとなればアメリカにでも逃げるさ、ははは」
「勇者様をこの国から追い出すほどの無能政府であれば、探索者協会も閉鎖しようと思います。この国が一番先に滅ぶ可能性が高いのに、最大戦力を追い出すのは自殺行為です。日本には過去色々と良くしてもらいましたが、自ら船底に穴を開けて沈もうとする船に乗り続ける気はありませんので」
「その辺は職員の命を預かっている者の判断に任せるよ。俺は敵対するならアトランの貴族と同じく潰すだけさ」
「ええ、勇者様はご自身の幸せのために思うがまま行動してください。私たち異世界人は全力でサポートします。それが過去幾度となく勇者様の犠牲の下に救われた世界に住む者のせめてもの恩返しと考えます。どうぞ自由に生きてください」
「そうか助かるよ」
「お気になさらず」
「じゃあシルフィーナ、蘭の探索者証発行とタブレットの発行に俺の探索者証の更新を頼むよ」
「はい!お任せください。他の者には見せず全て私がやりますのでしばらくお待ちください。それと、後ほど上級ダンジョン攻略報酬の申請手続きもお願いします」
「ああ、わかった」
そう言ってシルフィは部屋の外に出ていった。しかし資源省は思ったより権力持ってるな。警察のしかも探索者課を手駒にするとはな……今後のためにも機会があれば潰しておきたいな。
「凛、夏海」
「なーにダーリン」
「はい、どうしました?」
「ちょっと資源省辺りが思ったより手段選ばなさそうだから、凛達のマンションに俺も付いていくよ。帰りは転移でホテルに飛べばいいしな」
「もう心配性なんだから。でも嬉しいわありがとう」
「光希に心配されてる……嬉しいです」
「あ、そうだ! ダーリンなんで横浜ダンジョン跡なんて欲しがったの?」
「そうです! コアの販売価格下げてまでなぜですか?」
「あ〜いや〜その〜まあ、なんとなく欲しかったからかな〜ほら一等地だろ?」
「えー絶対嘘よそれ。何か理由あるんでしょ? 土地だけじゃなくダンジョンまで欲しいって普通じゃないわよ」
「そうです。土地はまあ魔獣が出ないならおっしゃる通り一等地ですから分かりますが、ダンジョンなんて持っててどうするんです?」
「あ、うん……その〜まあ、り、凛と夏海とその……思い出というかその……深い関係になった場所というか……はは」
「……ダーリン! 好き好き好き大好き!」
「……光希! 愛してます! 嬉しい!」
「あ、おっと……はは……恥ずかしいな……」
2人が横浜ダンジョンの土地がなぜ欲しいのかグイグイ聞いてきて誤魔化しきれず、俺は立ち上がり歩きながら2人から目を背け観念して理由を話すと凛と夏海が抱き付いてきた。
俺は2人との関係が深まったこのダンジョンを残したかった。場所が場所なだけに安全宣言が成されたら国もある程度土地を確保するだろうし、企業もこの立地を放っておかないだろう。そうなると調査用にダンジョンが残ったとしても、今のこの風景とは一変すると思った。それは2人との思い出をどこか汚されるような気がして……でも言うのは恥ずかしい! こういうのをサラッと言うのがイケメンモテ男なんだろうな。俺にはまだまだハードル高いわ。あー恥ずかしい!
そうして抱きつき頬ずりしてくる2人をあやしながらなんとか落ち着かせ、離れ際に2人にキスをしてソファに座らせたところでシルフィーナが戻ってきた。
「勇者様、蘭さんお待たせしました。こちらが勇者様の探索者証と、こちらが蘭さんの探索者証にタブレットとなります。蘭さんここの部分を触っていてください。本人登録しますので」
「はい」
シルフィーナは探索者証とタブレットを持ち正面のソファに座ると、俺と蘭に次々と渡して蘭には探索者証中央とタブレット側面を触らせ本人登録をさせていた。
俺は新しくなった探索者証を見るとカードの縁の色が金になっており、カードに魔力を通すとこれまた金色でSという文字が出てきた。黒の背景に金とか……まあ確認する側は分かりやすいけど。
Aランクは確かカードの縁も文字も銀色だったよな、そっちの方が好みなんだけどな〜。
俺がそんなことを考えているうちに蘭の登録も終わり、その後ダンジョン攻略報酬の申請を俺が代表してやりまずは一段落がついた。
「シルフィーナありがとう。手間かけさせたね」
「いえ、勇者様のお役に立つのは当然のことです」
「なるべく甘えないようにするよ」
「頼ってくださっていいのに……」
「ははは。あとシルフィーナ、他の人がいる所では倉木で頼むよ」
「……そうですね、残念です」
外で勇者様とか呼ばれたらステータス偽装している意味ないからな。大丈夫だよなシルフィ言わないよな? 不安だ……この子頭は良いのにドジなんだよなぁ。
「じゃあ俺たちはこのまま出て行くとマスコミに追いかけ回されるから、ホテルに転移するわ。裏口から出たとでも言っといてよ」
「はいそれがよろしいかと。先程外を見ましたら大変なことになってました」
「まあマスコミの良いネタだろうからね。じゃあまた! 何か進展したら携帯かタブレットに連絡してくれ! 今日会えて良かった」
「え?……はい! 必ず連絡します! メールもします! 毎日します!」
「理事長またねー」
「理事長失礼します」
「シル姉……シルフィーナさん失礼します」
俺は凛と夏海、蘭を抱きかかえながら俺の連絡先の書いた紙をシルフィに渡し転移をした。
転移をした俺たちはホテルの部屋のリビングに立っていた。
「さて、どうするかな。ホテル前にもマスコミいるんだよなー」
「うーん変装する?」
「下手な変装だとバレそうですね」
「あっ! そうか! 蘭! 幻術を皆に掛けてくれ、全身がいいな。蘭にまかせるよ」
「はい! 蘭にお任せください! 街で見かけた人に見えるようにします」
「え? 蘭ちゃん耳と尻尾消せるだけじゃなかったんだ」
「私も耳と尻尾だけかと思ってました」
俺たちの素性を凛達に話した時から俺たち4人でいる時は蘭は幻術を解いていた。初めて解いた状態を見た凛は真っ白! 綺麗! モフモフだぁ〜って大はしゃぎだったっけ? 蘭も褒められて嬉しそうにしてたな。普段は幻術で見えないようにしてると聞いた2人はさすが狐さんだと感心してたけど、消せるだけだと思ってたみたいだ。
蘭の幻術は正式には幻狐という種族魔法らしいが、言いにくいから俺は昔から幻術と言ってる。アニメの影響だな。この幻術は物にも他人にも掛けられる便利能力なんだよね。
「それじゃあ蘭、全員に頼むよ」
「あ、待って! 蘭ちゃん、ダーリンには綺麗な女に見られたいからこの雑誌の子でお願い!」
「わ、私もこの子でお願い」
「はい、わかりました。あ、蘭はこの子にします」
「じゃあダーリンはこの男性なんてどう?」
「光希は今のままがいいですが、まあこのモデルの男性で妥協します」
「ちょ、ちょっと待って! 俺をそんなイケメンにしないで! 魔法解けた時凹むから!」
「何言ってるのよダーリンはこんな男よりずっとイケメンよ! 顔のパーツなんて飾りよ! 男は中身よ!」
「凛ちゃん……光希地味に凹んでるから」
「あっ! そうじゃなくてダーリンの顔のパーツが悪いと言ってるわけじゃないの! 大好きよダーリン誤解しないで!」
「あ、うん、蘭……早くやっちゃって……」
「はい。うふふふ」
「ダーリンごめんってばー」
俺は遠回しに顔のパーツが良くないと言われ、自覚はしていても恋人に言われると地味に凹み蘭に早くこの空気からオレを解放してもらえるように頼んだ。いいんだ、顔が良くなくてもこんなに美人な3人の彼女がいる俺は間違いなく勝ち組なんだ。いいんだ顔のパーツなんて……
そうして自分を慰めずっと腰に抱きついている凛に気にしてないよと笑顔を向け、蘭に幻術を掛けてもらった俺たちはホテルを出てタクシーを拾い乗り込んだ。
恋人たちは雑誌のモデルの顔をしてたけど、幻術掛けない方が美人なので特になんとも思わなかった。
途中美味しそうな和食料理店でお昼を食べてからちょっと買い物したりして、結構な時間寄り道してしまった。
そうしてやっと中目黒のタワーマンションに着いて早々にイケメン幻術を解いてもらい、凛と夏海の部屋へ案内された俺と蘭はリビングでコーヒーを飲みながら2人の身支度を待っていた。
「蘭。シルフィはやっぱりシルフィだったな」
「はい、勇者大好きなシル姉さんのままでした」
「死んだんだよな……でもまた会えた」
「ええ、あの時のことは忘れません……でもまた会えました」
「自分が生きていた世界と似た世界か……死んだ人が生きていて、生きていた人が死んでたりするんだろうな。この世界に俺の両親はいるんだろうか?」
「蘭には並行世界? というのが今までよく分かってませんでしたが、シル姉さんを見てなんとなく理解できました。まるで鏡の世界に入ったみたいです」
「鏡か……シルフィが存在する鏡に映った世界から来たシルフィーナ理事長」
「ええそうです。シル姉さんがあの時生きていて、記憶を無くしているだけのようにも蘭には思えます」
「ははは、それはないよ禁呪を発動したんだ。でもまたシルフィの笑顔が見れた。昔を思い出して辛い記憶も蘇るけど、今生きてるシルフィを見るとなんだか幸せな気持ちになるんだ」
「主様……私も昔に戻ったみたいな気持ちになりました」
「今度は守ってやりたいな」
「はい今度こそは……もうあの時の蘭じゃありませんから」
「ははは、そうだな。蘭は強くなった。俺のために心も身体も強くなった」
「そうです、蘭は強くなりました。蘭の全てである主様を支えるために」
「蘭は俺の全てでもあるからな。これからは凛と夏海と4人で支え合っていこうな」
「はい! 蘭は群れを守ります!」
「ははは、そうだな俺たちの群れだ。蘭……愛してる」
「主様愛してます……んっ……ちゅ……」
死んだはずのシルフィに会った。でもそのシルフィは並行世界のシルフィで……俺と蘭はお互いの気持ちを整理しながら、少しずつ少しずつこの世界のシルフィを受け入れていこうとしていた。
俺たちが長いキスをしているとこちらへ歩いてくる気配がしたので、名残惜しいがキスをやめ凛と夏海を待った。
「お待たせー! 凄いの! このアイテムポーチ! たくさん入るから殆どの荷物入れちゃった♪」
「お待たせしました。私も誰も置いていかないで済みました」
「ん? 誰も? 置いていく?」
「い、いえなんでもありません!」
「あ〜お姉ちゃんせっかく秘密にしておいてあげたのに、自分で墓穴掘っちゃってあーあー」
「ん? 秘密にしてた? ん?」
「ちょっと凛ちゃん! ほ、ホントなんでもありませんので!」
「お姉ちゃん可愛いもの好きでお部屋中ぬいぐるみだらけなの!」
「あ! 凛ちゃん誰にも言わないって約束したじゃない!」
「だってあそこまで自分で言っちゃったら時間の問題よ。それともダーリンに嘘つくつもりだったの?」
「あぁぁぁぁ……嘘はつくつもりはないけど……こんな私が可愛いもの好きだなんて光希には知られたくなかったの……」
「うん? 何がおかしいの? 女の子が可愛いもの好きで、ぬいぐるみ部屋に飾ってって何もおかしくないよね?」
「でしょ? ね? お姉ちゃん大丈夫だったでしょ?」
「あ、え? へ、変じゃない……ですか?」
「全然変じゃないよね。夏海が女の子らしくて普通に可愛いと思うよ?」
「か、かわいい……私がかわいい……そうですか……変じゃない……変じゃない」
「夏海はもっと自分の容姿に自信を持つべきだよね。夏海は何を着ても何をしても綺麗だし、魅力的だし可愛いよ。少なくとも俺にはそういう風に見える。まあそうやって照れてる夏海も可愛くて好きなんだけどね」
「あ……ああ……光希が私を……ありがとうございます。光希にふさわしい女になれるよう綺麗に可愛くなります」
「そのままで十分だよ無理しなくていいんだ。今のままの夏海が好きなんだ」
「あ……はい」
「きゃーお姉ちゃん可愛い♪」
「なっちゃん顔が真っ赤で可愛いです」
「ははは、あんまりからかったら駄目だよ。それじゃあホテルに戻ろう! みんな掴まって」
「はーい! これから毎日ダーリンと一緒だーわーい!」
「ふ、不束者ですがよろしくお願いします光希」
「大切にするよ2人とも。『転移』」
そうして夏海のまた新たな一面を知った俺たちはホテルに戻った。皆にはリビングで寛いでもらい、俺は軽く変装してからフロントへ行き隣のスイートルームの部屋も借りた。今まで蘭と2人だったが今後ベッドが足らないので、この追加で用意したスイートルームは夜に恋人と一緒に寝る部屋だ。俺とお風呂に入る子と一緒に寝る子はこの部屋に来て2人だけの時間を過ごす。
蘭とお風呂入る時は凛か夏海と一緒に寝て、凛か夏海とお風呂に入る時は蘭と一緒に寝る。なるべく全員とイチャイチャしたいがために用意したスイートルームだ。
俺はイチャイチャ用スイートルームに入り夜を想い興奮していた。よしっ! この部屋の事をこれから『愛スイートルーム』と呼ぼう!
並行世界にいる母さん俺は今モーレツに幸せだよ!
そんな幸せを噛み締めながら俺は隣の部屋にいる恋人たちの下に戻った。
「ダーリンどこ行ってたの?」
「ああ、宿泊の延長をね。長期間住むことになりそうだからさ」
「そっか、ダーリンとずっと一緒だね。でもベッド2つしかないわよ? その……夜とかその……皆の隣でするの?」
「隣のスイートルームも借りたよ。俺はお風呂入る時と寝る時に1人ずつ連れていくよ。いいかな?」
「え? 隣も!? お、お風呂をダーリンと……恥ずかしいわ……」
「わ、私は大丈夫です。お、お風呂でお背中流します」
「あっ! お姉ちゃんズルイ! 私も大丈夫! 私もダーリンの背中流すから」
「ありがとう。きっと疲れが取れると思う。蘭は凛か夏海とお風呂入った時は一緒に隣の部屋で寝ような」
「はい主様」
「今日はお風呂は蘭と入りたいから2人は夜一緒に寝ようね」
「うん……まだ慣れるまでお姉ちゃんと一緒がいい!」
「え?凛ちゃんまさか!」
「ふふふふふ……お姉ちゃん見ててあげるからね」
「イヤーー!凛ちゃんが先よ、そして早く寝ちゃってよ」
「いーやーでーすーお姉ちゃんを私は見て眠りたいんですー」
「大丈夫だよ2人一緒に、ね?」
「うん」
「は、はい」
俺は内心で歓声をあげた!
俺たちはその後夕食まで各々が荷物の整理をしたり、コーヒーや紅茶を飲みながら外に見える夕焼けに染まる海を見たりたまにイチャついたりして過ごした。
夕食の時間になり皆で揃ってホテルのレストランへ食べに行き、その日はイタリア料理を堪能して少しお酒が入った状態で部屋へと戻っていった。
「蘭、お風呂入ろう」
「はい主様」
「凛、夏海、後で迎えに来るから待っててね」
「うん! お姉ちゃん一緒にお風呂行くよ〜」
「ま、待ってます。あ、凛ちゃん待って」
俺はお風呂へと向かう2人を見届け蘭に触れ隣の部屋へ転移をした。
愛スイートルームに着きバスルームへと入ると早速蘭の胸と口によるご奉仕で俺の身体も魔王棒も綺麗になり、俺もお返しに手にボディソープを付けて蘭の身体を隅々まで洗ってあげた。
身体を綺麗にした俺たちは、お互いをバスタオルで拭き合い髪を乾かしあってリビングに向かった。
リビングで冷蔵庫から冷たい飲み物を出し、お互いバスローブ姿のままソファにぴったりくっついて座り、2人で夜景を見ながら他愛もない話をしたりキスをしたり、そのままソファに押し倒して激しく愛し合ったりで充実した時間を過ごした。そしてもう一度2人で軽くシャワーを浴びて汗や体液を流してから隣の部屋へ戻った。
甘える蘭を抱えベッドに寝かせて軽くキスをしてからおやすみと言い、俺はリビングへと向かった。
リビングでは下着の上にバスローブを着ている凛と夏海が、緊張した面持ちで待っていた。
「2人とも湯冷めしなかった?」
「う、うん大丈夫」
「は、はひっ、だいじょうぶでふ」
「じゃあ行こうか」
俺は2人の肩を抱き隣の部屋へと転移した。
緊張している2人をリラックスさせるためにリビングのソファに俺の右側に凛、反対側に夏海と座らせた。お酒を用意して2人と飲みながら今日あったこと、理事長の意外な一面をなど時に笑い合いながら話した。
時折胸元からチラチラ見える2人の大人っぽい下着姿に俺は我慢ならなくなり、そろそろ寝よっかと軽く2人を促しベッドへと向かった。
ベッドに2人を寝かせ凛、夏海と舌を絡めた濃く長いキスをした後に俺は夏海へと覆い被さった。濃いキスをしながら凛の視線を意識して熱くなっている夏海に俺の魔王棒を咥えさせ、それからお互いに繋がって愛し合う姿を凛に見せつけた。夏海は終始顔を真っ赤にしていて、凛も顔を手で覆いながらも隙間から見て興奮していた様子だった。
俺は夏海の中に吐き出すと次に凛へと近づき、夏海と同じように俺の魔王棒を丁寧に舐めさせたあとにお互いキスをしながら激しく愛し合った。
凛の中に吐き出した後はまた夏海のところへ行き、次は四つん這いにさせて後ろから獣のように激しく愛し合った。そのあと凛にも同じ姿勢を取らせ平等に愛したあと、俺は疲れて眠ってしまった2人に布団を掛け、軽くキスをして2人の間に入り眠りについた。
愛し合う度に2人が俺の中でその存在を大きくしていくのを感じながら、俺はこの愛する2人を何があろうと守っていこうと誓うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます