第76話 三姉妹






光一をSランクにしクオンを上位竜するという目的を果たした俺は、上位竜になりひと回り小さくなったがパワーアップしたクオンと共に、大世界山岳フィールドを次々と攻略していった。

飛行速度もエメラ並みに上がったことからこの広い大世界をクオンは飛び回り、魔誘香も活用しつつ初日より短時間で攻略することができた。

まあ俺や恋人たちも参戦したからな。余裕だったよ。


山岳フィールドのボスは竜で固定らしく、ボスが出た時のみクオンに1対1で戦わせた。それを俺たちは遠くから怪獣大決戦をみるが如くお茶をしながら観戦していた。動画も撮ったから元の世界に戻ったらネットにアップしようと思う。絶対高評価もらえると思うんだ。

方舟も撮ったから動画タイトルは『並行世界に召喚されたら世界は滅ぶ寸前で怪獣大決戦をしていた! 』とかにしようかな。


冗談はさておき、相変わらずもう帰りたいとかブーブー言うクオンのケツを叩き、一週間掛からず山岳フィールドを全て攻略した後は、光一とダークエルフを誘って大世界海フィールドの攻略を開始した。

光一は神崎に相当癒されたらしく森フィールド攻略後のような危ない雰囲気は和らいでいたが、いざ魔物と対峙すると以前より集中力が増したように思えた。なんだか一皮向けたって感じだ。


海フィールドでは、Aランクの下半身が魚で上半身が美しい女性の姿をしているセイレーンが複数現れ、強力な精神魔法による攻撃にダークエルフが数名レジストに失敗し、一時混乱したりしたが俺がその都度雷矢で気絶させていったので最悪の状況にはならなかった。サキュバスより強い魅了の魔法なんだよね。

セイレーンの精神魔法は、たとえダークエルフたちがAランクでもレジストは50%の確率だからな。結界を張るのが遅れた者が魔法を喰らったようだ。その者たちは以蔵にめっちゃ怒られてたよ。


そしてAランクのキングクラーケンとクイーンクラーケンというクオンほどもある大きなイカが現れた時は、クオンが上空からブレスを吐いてイカ焼きにして処理していった。


そのイカを倒してとうとうボスが現れたと思ったら、海のボスは水竜だったんだ。

蘭がスーちゃん……って少しホームシックにかかっていたが、これは光一とクオンによってあっさり倒された。

戦いの内容としてはクオンが上空からブレス攻撃をし、光一が俺が新しくあげた魔鉄と黒鉄でできた黒い大剣を持ち水竜の頭に転移して、魔力を大量に込めたその剣を水竜の頭に突き刺した後に剣に付与してある『冥界の黒炎』 を発動して脳を焼いて終了って感じだ。

そう、光一にやった『黒魔剣』 には上級闇魔法の冥界の黒炎を付与し、鎧も革鎧から上位黒竜の皮と鱗で作った漆黒の鎧に変えさせたんだ。黒い魔剣に黒い鎧とか厨二っぽくて面白いかなと思ってさ。でもいざ着せてみたら我ながら見ていて痛々しかったよ。

夏海と同じセリフを言うようになったら、もう二度と光一に近付くのはやめようと思う。


こうして海フィールドも難なく攻略してダークエルフたちも経験値を大量に積むことができ、二日ほど休んでから最後のフィールドである砂漠フィールドの攻略を開始した。


砂漠フィールドはダークエルフではなくサキュバスたちを連れてきた。飛行系魔物が少ないから飛べると有利なフィールドだからだ。ついでにグリ子たちも連れて来ている。グリフォンも上位種というか聖獣としてのグリフォンがいるんだけど、どうやったらなれるのかわからない。

とりあえず上位の魔物をたくさん倒させていけば、進化的なものをするかなと連れてきたけどうんともすんとも言わない。ランクは上がってるから強くはなってはいるんだけどね。


砂漠フィールドで厄介なのが巨大ミミズのワームだ。全長10mはあり鋭い牙を持つワームが突然真下から現れ地上にいる者を襲う。軍は地震探知機のような装置を使って警戒しながらゆっくり進んで対処しているが、大世界フィールドからは全長30mのデスワームが現れるようになるからお手上げだろう。小隊単位で呑み込まれるからな。

魔力探知に長けた魔法使いがいれば正確に出現する場所を特定できるからそれほど苦戦はしないと思うが、それができるのは日本と新生オーストラリアだけだろうな。


まあ俺たちはクオンとグリ子たちに乗り空を飛んでるからまったく関係ないけどね。

空から魔誘香をばら撒きながら移動して、デザートミノタウロスやレッドスコーピオンにワーム、そしてAランクのデスワームが集まるのを待って全員で上空からブレスと魔法攻撃と急降下アタックをしてお終いだ。

俺たちからしてみればこの難易度が一番高い砂漠も草原と変わらない。

ただ、飛行系魔物がちょっと強力なくらいかな。


「スフィンクスが来るぞ! ミラ! リベンジだ! 」


「やっとキタッ! もうあの頃の僕じゃないんだからね! リム姉さんにユリ! 行くよ! 」


「ああ、あの時の借りを返してやろう! 」


「私も今度こそ倒してみせますわ! 」


俺たちが新たに集めた足元に群がる大量の魔物を殲滅していると、東の空から猛スピードで迫ってくる反応があった。魔力反応からスフィンクスに間違いないと思った俺は、ミラたちにリベンジに行くように言った。

スフィンクスは以前に蘭がペット探しの旅に中華大陸に行った際に、同行したミラたちが完膚無きまでにやられたと聞いたからね。


俺も少し心配なのでクオンをはじめ皆に魔物の掃討を任せ、飛翔の魔法で後を付いていった。

ちなみにスフィンクスは人間の男の顔をした翼の生えたライオンだ。たまにニヤリとか笑ったりするから正直キモイ。


リムたち三姉妹はそれぞれグリフォンに乗ってスフィンクスへと突撃していった。が、スフィンクスは種族魔法で砂を操る。その10mほどある巨体に砂漠から巻き上げた砂を纏い、リムたちの攻撃を無効化しながら砂の槍を次々と射出していった。

しかしその攻撃をリムたちはグリフォンをよく操り回避していき、右の翼を集中的にミスリルの槍を突き刺し攻撃していった。

やがてスフィンクスの翼の砂が剥がれ右の翼が傷付き、スフィンクスは堪らず地上へと降りていった。


「やったー! チャンスだよリム姉さん! アレをやろう! 」


「ほ、本当にアレをやるのか? 私はもう恥ずかしいぞ……」


「リム姉様! 防御力のあるスフィンクスにはアレしかありませんわ! 」


ミラはスフィンクスが地上に降りたのをチャンスと見たのかリムたちに声を掛け、あまり乗り気じゃないリムを先頭にして三人が縦に一列に並んでスフィンクスへと急降下していった。

ん? 三方向から一斉攻撃するトライアングルなんとかってやつじゃないのか?


「こうなったらヤケだ! ミラ! ユリ! 私に続け! 」


「ぴったり後ろについてるよ! 」


「魔物役のインキュバスたちに呆れられつつも練習した成果をみせますわ! 」


三人はグリフォンに乗りながら見事に重なりつつスフィンクスへと急降下をしていくが、スフィンクスがリムたちに気付き砂の槍を立て続けに飛ばした。しかしその槍はグリフォンたちが装備している結界の足輪で弾かれ、少し動揺した様子を見せたあとにスフィンクスは砂のドームを作りその身を覆った。

恐らく一撃を受け止めて近接攻撃でカウンターを入れるつもりなのだろう。


「馬鹿が! そんなもので我らの攻撃を防げると思ったか! 守りに入った時点で貴様の負けだ! 我ら三姉妹の必殺技を喰らうがいい! ミラ! ユリ! いくぞ! 」


「オッケー! 」


「ハイ! 」



「「「ジェットスト○ームアタック! 」」」



「ハアッ!…… ミラ! 」


「ハイヨ! とりゃあっ! ユリ! 」


「ハイですわ! 喰らいなさい! えいっ! 」


《 ガアアアッ! 》



…………またアニメか……その技は知ってるぞ。


俺はシルフィに見せられたロボット物のアニメで、黒いロボットに乗った三兄弟が縦一列に重なって敵へと突っ込み、重なっていることで敵には一機しか見えない状態で先頭のロボットから次々と一撃を入れていき、その波状攻撃で敵を撃破するという技を思い出していた。


リムたちはまさにそれを実際にやり、リムの攻撃で砂の壁を砕き、その隙間からミラがスフィンクスの首に一撃を入れてすぐ離れ、最後にユリがミラが一撃を入れた場所に再度槍を深々と突き刺した。


スフィンクスは思いもよらない連続攻撃によって首を傷付けられ、大量の出血をしながら砂漠の上でのたうち回っていた。


「あちゃー! 首を断ち切れなかったか〜」


「砂の壁が無ければいけたんだがな」


「もうひと押しでしたわ」


「それならトドメを刺そう! 」


「そうだな。またアレをやるしかなさそうだ……」


「次で勝てますわ! 」


ん? そのまま地上戦でトドメを刺せばいいんじゃないか?

俺は既に瀕死のスフィンクスを置いて再度上空へ飛び立つ三姉妹に、なんでわざわざスフィンクスに回復の時間を与えるのかなぁと思っていた。

すると三姉妹は上空でスフィンクスを囲むように三方向に分かれ、そして……


「いっくよー! グリフォンナイトのミラ! 」


「グ、グリフォンナイトのリム……」


「グリフォンナイトのユリですわ! 」


「光魔王軍親衛隊のボクたちにトラウマを植え付けた者に裁きを! 」


「「裁きを! 」」


「「「トライアングルア○ック! 」」」


《 ガアアアア! ニン……ゲン……ガ 》


どうしてもそれもやりたかったのな……

リムも恥ずかしいなら無理してやらなくてもいいのに。


三方向から同時に首に槍を突き刺されたスフィンクスは憎しみに溢れた顔をリムたちに見せ、魔石を残しそのまま消えていった。


「ひゃっほーい! やったー! 光魔王様やったよー! 」


「ふう……倒せたか……我らも強くなった」


「やりましたわ光魔王様! ユリはAランクのスフィンクスを倒しましたわ! ご褒美のキスをしてください! 」


「お疲れ様。よくやったな。最後のやつは必要なさそうだったけどまあ念には念をだな。労ってやりたいが光一たちも地上の魔物の群れを掃討し終えそうだ。そろそろボスが出るだろうから戻ろう」


「ほーい! ボスだってボクたちがやっつけてやるんだから! 」


「コラッ! そうやってまたすぐ調子に乗るんじゃない! 」


「ミラ姉様が失敗する時のパターンに入りましたわ。いい加減学習して欲しいですわ」


俺はかしましくも仲の良い三姉妹のじゃれ合いを横目で見ながら、光一たちが戦っている場所へと戻っていった。


この子たちを仲間にして良かったな。





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