第77話 セルト
リムたちとスフィンクスの戦いを見届けた後、俺は彼女たちを連れて光一たちのいる場所へと戻った。
「これで終わりだ! 『冥界の黒炎』 」
《 ギュピィィィィ…… 》
「みんな! 掃討を頼む! 」
「わかったわ! 光魔隊突撃! 」
「「「ハッ! シルフィーナお妃様! 」」」
俺がクオンの背に戻ると眼下に大量にいた魔物のほとんどが殲滅されており、最後に残ったAランクのデスワームを光一が倒したところだった。
そしてシルフィの号令で光魔隊が一斉に槍を構え急降下をし、地上に残る砂蜘蛛やレッドスコーピオンにデザートミノタウロスなどの生き残りを掃討していった。その間も光一は探知を全開にして警戒をしているようだ。
そうだ、それでいい。
「南に出た! 恐らくボスだ! 」
「セルトか……やっぱ砂漠は難易度高いな。光一! セルトだ! 頭が狼で首から下は人間の巨人だ! 砂と風を自在に操る! コイツにお前の魔法は効きにくいから肉弾戦でいけ! 光魔隊は空から一緒にいるデザートミノタウロスを始末しろ! 全員に魔法を掛ける! 気合い入れていけ! 『ヘイスト』 」
俺は久しぶりに感じる魔力反応に記憶を呼び起こし、この魔力反応はセルトのだと思い出した。
セルトは狼頭の5mほどの巨人で手に槍を持ち、主に砂嵐や砂を固めた攻撃をしてくる。近付くのが容易ではないが、動き自体はそれほど素早くないため近接戦に持ち込めれば光一に勝機はある。
「「「ハッ! 」」」
「人型!? わかった! 俺が突っ込む! まず足を狙う! 」
「凛! セルトは火魔法に耐性がある! 氷で行け! 賢者の杖を通したならば効果がある! シルフィはセルトの風の魔法を中和してやってくれ! 夏海はリムたちの援護でミノタウロスを! 蘭は手を出すな! 光一たちに経験させる! 」
「わかったわ! 炎と氷の魔女の面目躍如よ! キッチリ凍らせてあげるわ! 」
「昔は手こずったけど今の私なら中和できるはず。やってみせるわ! 」
「わかりました! リムの後方から援護をします! 」
「むむむ……蘭も戦いたいです」
「蘭が入ったら瞬殺しちゃうだろ? みんなに経験を積ませたいんだ。ここでおとなしくしてろ」
クオンと蘭が参戦したら間違いなくすぐ終わる。光一にはもっと経験を積ませたい。
「む〜仕方ないです。でも楽しそうです」
俺はクオンの上で蘭を抱き寄せて慰め、グリ子たちに乗ってセルトとミノタウロスの反応がある場所へ飛んでいく皆の後を追いかけた。
《 ウオオオオンン! 》
「見えたわ! そこでおとなしく凍ってなさい! 『氷河期』……くっ……魔法抵抗高いわね。足しか凍らせられなかったわ」
「サンキュー凛さん! 十分だ! ……『転移』 もらった! 」
《 ウオーーーン! 》
「なっ!? 急に砂嵐!? くっ……近付けない」
「まったくせっかちね! 少しは待ちなさい! シルフ! セルトの風を無力化して! 」
《 ウオオン!? 》
「シルフィーナさん助かる! これで! うおおおお! 」
《 ウオーーーン! 》
「当たるかよ! オラァ! 」
《 ギャイン! 》
「いいコンビネーションだな」
俺がセルトのいる場所に着くと凛が早速魔法をぶっ放していたが、セルトの魔法抵抗を見誤り足しか凍らせられなかったようだった。だがそれで十分だと光一が剣を両手に駆け寄ったが、セルトの魔法によって起こされた砂嵐により前進を止められてしまった。
しかしそこへシルフィが到着し、セルトの魔法を無効化して砂嵐を吹き飛ばしたところに光一が改めて突っ込み、凍っているセルトの足を砕いた。
セルトは犬のような鳴き声をあげてからバランスを崩し、残った足で片膝をついて槍を杖代わりにして倒れることを防いでいた。
そして足を砕いた光一に向けて無数の砂の槍を射出するが、光一は当たる寸前で転移を発動して避け、セルトの頭上に転移をした。
しかしそれに気づいたセルトは砂のドームをを作り光一の攻撃を防いだ。
「ちっ! 守ってばかりかよ! シルフィーナさん! 」
「まかせなさい! シルフ! あの砂を押し潰して! 『シルフの鉄槌』 」
《 ウオオオオン! 》
「すげっ! 今なら! 『転移』 ……っしゃおらあっ! 『冥界の黒炎』 」
《 ウオォォォン…… 》
「ん〜まあいっか、お疲れさん! 次はシルフィ無しが良さそうだな。精霊魔法が強すぎた」
「ハァハァハァ……そうだな。今のドームは魔力を込めた攻撃で壊せたかもしれない。まだまだだな」
「その剣ならいけたかもな。お? 風の上級魔法書だ。光一、鍵と一緒に回収しとけ。明日もまたこの砂漠だしとっとと帰るぞ」
クオンも上位竜になって少し小さくなったしな。暑いし日帰りできるならそれに越したことはない。
さすがに砂漠の魔物はしぶとくて倒すのに時間が掛かるから1日1フィールドの攻略が限界だ。夜は冷えるから戦闘したくないしな。
「ああ、玲が待ってるしな。あと少し……あと少しで夏美を……」
「そうだ。あと少しだからこそ焦らず確実に攻略していこう。大丈夫だ、夏美さんも待っててくれる」
ホント彼女は拠点で首を長くして待ってるよ。実力が今少し足らないから大世界には連れてきてないけどな。毎日夏海に言われた訓練メニューをひたすら消化してる。
あと9フィールドで砂漠も終わりだ。攻略フィールドの門の上にある五芒星も現在4つ点灯している。この砂漠を全て攻略したら5つ目が点灯するはずだ。そうなったら新しい門が現れて方舟の甲板にある建物に入れるのか、それともラスボス的な存在がいる部屋に繋がっているのか……
一番いいのはラスボスがいて宝物庫があってアイテム大量獲得なんだけど、リアラの塔はそういうの無かったからな。神様が作った系のダンジョンって結構報酬ショボいよな。
ならせめてリアラの塔のようにレア魔法を覚えられないかな? うん、ありそうだな。なんだか楽しみになってきたぞ。
こうして俺たちは翌日からも暑さと戦いながら砂漠フィールドを攻略していった。
途中で俺が与えた魔法の扱いがだいぶ上手くなったことから、新たな魔法を光一に付与した。
これは光一に好きな魔法を選ばせてやった。悩んだ末に光一が選んだ魔法が『氷結世界』と『雷矢』と『鑑定』、そして『遮音』だった。まあ使い勝手がいい魔法だしな。『遮音』は約束通りSランクになった時にすぐ付与してやろうと思ったけど、夏美のことがあって光一もそんな気分じゃないだろうと思って今日まで付与しなかった。
実は光一も今回特に欲しいとは言っていなくて俺が勝手に付与してやった。夏美と再会したら必要になるだろうからな。
俺が色々と魔法を付与しても、光一はサンキュと言葉少なめに言うだけで特に喜んでもいなかった。
もう砂漠を完全攻略することしか頭にないようだ。
あのエロい光一はどこへ行ったのか……俺は寂しいよ。
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