7章 株式会社Light mare ドラゴン事業部

プロローグ 【挿絵地図】






『光球』


「うん、意識しないでも動かせるようになったな」


暗視の魔法があるから必要ないっちゃ必要ないが、ダンジョンに誰かを連れて行く時もあるだろうしな。


方舟世界から帰還してからは、留守中に溜まっていた軍からの注文を全て無視して俺たちは5日間の休暇を取っていた。

ただ、帰還した翌日だけは遠征組と留守番組とでお疲れ様会を行い皆を労った。

その時に留守番組からもう7月だと聞かされたて少し驚いたけどね。


アマテラス様には1ヶ月しか経過していないように戻してくれとは言ったはずだが、2週間ほどオーバーしていたからだ。一応保険で各所に2ヶ月は留守にするとは言ってあったから、まあいっかと思うことにした。

神様ってのは大雑把なもんだからな。想定の範囲内だ。


留守中に社長代理として会社を守ってくれていた新堂さんから、注文が溜まってると言われたけど俺と蘭は聞かなかったことにした。

シルフィとセルシアも、冒険者連合にはまだ戻ってきていないことにして休むと言っていた。

一年振りだからな。少しはこの世界でゆっくりして帰ってきたことを実感したいさ。


そして帰還した2日目には、恋人たちはおしゃれに目覚めたダークエルフたちを連れて街へと買い物に行っていたよ。

ニーチェはイスラと留守番組だったホビットたちと一緒に映画を観に行くとか言ってたな。


以蔵たちは紫音と桜を残し、女神の島に建築中のダークエルフの里に戻っていった。

紫音と桜は2階のゲストルームに用意した部屋に住み、休暇が終わったらメイドの仕事をしてもらうことになっている。約束したからな。

新しい恋人のセルシアは、さっそく5階のプライベートエリアに用意した部屋に引っ越してきた。そこは蘭の向かいの部屋で、二人とも嬉しそうだったよ。


俺はというと恋人たちとイチャイチャしたり、執務室で翻訳済みの古代書を読んだり、創造魔法用の魔石を仕分けたり魔法の練習をして過ごしている。


今まで魔石はランク毎にしか分けてなかったからな。魔物の種類ごとに分けるのはなかなか骨が折れる作業だ。上級鑑定魔法じゃないと魔石を鑑定しても、なんの魔物の魔石かは分からないからな。

俺と蘭で手分けしてやっているよ。いずれ役に立つと思うから少しづつやっていこうと思う。


そして今日は朝から聖魔法の練習をしていた。

やはり半神になったことで聖属性を得たらしく、試しに初級聖魔法書を開いたら開けてしまった。


聖魔法書は俺も恋人たちも適正が無かったから死蔵していたのでたくさんある。

アトラン時代に最上級聖魔法書を2冊手に入れていた。魔王を倒す前に最上級悪魔系ダンジョンで1冊手に入れて、魔王の宝物庫でもう1冊手に入れたんだ。

初級や中級は20冊以上はあるし、上級も6冊は持っている。最上級なんて覚えたら俺は教皇を超えるな。


というわけで、まずは初級から習熟訓練をしているってわけだ。

一気に覚えても使いこなせないなら意味が無いからな。初めての属性だし初級からゆっくり覚えるさ。


初級聖魔法には、照明にも攻撃にも使える『光球』と攻撃魔法の『光矢』、そして『ヒール』がある。

ヒールは初級ポーションレベルの回復魔法だ。


中級聖魔法になると、『ミドルヒール』という中級ポーションレベルの回復魔法を覚える。

上級聖魔法だと範囲回復魔法の『エリアヒール』を使えるようになり、広範囲にヒールを掛けることができる。さらに『ラージヒール』も覚えられ、上級ポーションレベルの回復が可能だ。当然欠損部位もくっ付けることができる。


そしてさらに最上級聖魔法になると、過去の勇者の日記と教会の古書の知識だけど、エリクサークラスの回復魔法の『完全再生』を使えるようになるらしい。これは病気には効果が無いが、欠損部位が再生し体力も完全回復するとんでもない魔法のようだ。


過去に習得したのは勇者と聖女だけで、その時は魔王討伐にかなり役に立ったそうだ。

俺には聖属性も聖女もいなかったけどな。

あ、シルフィという性女はいたか。

体力が回復するどころか極限まで失っていたような気がするけど。


そんなこんなで、まずは室内でもできる初級の光球の練習からしている。ヒール系やほかの攻撃系の聖魔法は、ダンジョンか中華大陸にでも行って魔物と戦いながら練習しようと思う。

ちょっとエグい魔法もあるから日本じゃ無理だ。


「これは光量も調整できるんだな。フラッシュグレネードみたいな使い方もできなくもないか? 」


コンコン


ん? 誰か来たな。この気配はリムかな?


「開いてるぞ」


「失礼します」


俺が返事をすると白いスーツ姿のリムが執務室へと入って来た。そして自分に掛けていた幻術を解き、黒のビキニアーマー姿になって俺の執務机の前に来た。

スーツを着ていたという事は外に出ていたんだな。

ちゃんと前に言った通り、俺の前では幻術を解くようになったな。

ホントこのビキニアーマーを考えた奴は天才だよ。


「リムか。報告か? 」


「ハッ! オーストラリア大陸に潜伏していた者の報告をまとめ終えました」


「みんなが休んでいる時に悪いな。こっちにおいで」


「は、はい……」


俺は執務机から立ちソファへと腰掛けてからリムに隣に座るように誘うと、彼女はそれまでのキリッとした顔を赤らめて恥ずかしそうに俺の隣へと腰掛けた。

この子のこういうギャップが堪らないんだよな。


「なんだ? まだ恥ずかしいのか? この一年の間に何十回とスキンシップしてきたじゃないか」


「こ、こういうのはなかなか慣れないもので……で、でも! う……嬉しいです」


くぅぅぅ! なんなのこの子! 過去俺を誘惑して来たサキュバスとは雲泥の差!

アイツらがこんな感じだったら、俺は今頃生きてなかったかもしれない。いや、あの時も結構危なかったか……


俺はいじらしいリムが愛しくなってそのまま肩を抱き寄せ、空いた手でリムの太ももを撫でた。


「あっ……こ、光魔王様……」


「相変わらず白くて柔らかい太ももだな。このまま報告を聞きたいな」


「は、はい。お好きにしていただいて結構……です」


「ありがとう。それで? オーストラリアの件だったか? ダーリントン鉱床にあるクイーンズランド都市連合の駐屯地に魔物の群れが向かったのは、やはり俺の作った魔誘香が使用されていたか? 」


方舟世界に行く前に、留守番組のサキュバスに調べるように言っておいたんだったな。


「はい。魔誘香が使用されていました。正統オーストラリア共和国の仕業でした」


「やっぱりか……よくも俺が作ったアイテムを悪用してくれたな」


チッ! 舐めやがって!


「実際に魔誘香で魔物を誘導した実行部隊の者を捕らえており、現在パースの街で監禁しております」


「そうか、とりあえず生かしておけ。俺が契約の魔法か隷属の首輪を使って洗いざらい吐かせる」


「ん……んふっ……は、はい」


実行者を捕らえてあるなら、日本政府も俺を説得しようとは思わないだろう。日本政府のたっての頼みで魔誘香を売ったんだからな。


確かクイーンズランド都市連合の後ろ盾になっているソヴェート軍が、オーストラリアから軍を一時撤退させたタイミングでやられたんだったか。

ソヴェートも上海の死霊の氾濫で、酪農地帯の防衛線を突破されて国内がめちゃくちゃだったからな。


それにしても正統オーストラリアが、ダーリントン鉱床を手に入れるために魔物を利用するとはな。戦争なら仕方ない部分もあるが、俺が作ったアイテムを使ったのが許せん。

魔誘香は民を守るためということであの国に特別に売ったんだ。それを戦争や私利私欲のために使った代償はきっちり払ってもらうからな。


正統オーストラリアは確か……シドニーを首都とした壁に囲まれた都市だったか? 一年振りで記憶が曖昧だな。クイーンズランド都市連合はブリスベンだっけ? あれ? ケアンズだったか?


「リム、地図を出してくれ。久しぶりで場所がイマイチ思い出せん」


「は……はい……そ、その……光魔王様胸からお手を……」


「ん? おっといつのまに!? すまんすまん。これじゃあ地図を出せないな」


まただ。どうもリムとミラとユリが聖魔人になってから、近くで見ているとムラムラする。

進化によって魅了か催淫が強力になって、まだ制御できずに駄々漏れしているんじゃないか?

俺が無意識にビキニアーマーの中に手を入れて、直に揉んでいることに気付かないとは……


昨日もミラと話している時にミラの尻や大事なとこを無意識に触ってて、気が付いたらミラがぐったりしてたんだよな。

これは危険だな……俺以外の男には絶対に触らせないとは言ってはいたが、力を制御できるようになるまではあまり外に出したくないな。


「いえ、光魔王様だけは私の身体をお好きにしていただいていいので……」


「そうか、なら遠慮なくそうするさ。それとリムとミラとユリは、力を制御できるようになるまで他の男と接することを禁ずる」


「え? は、はい……」


「無意識とはいえ、ほかの男を誘惑させたくないんだ」


「あ……はい! 光魔王様以外の男には決して近づきません! 」


くっ……可愛い。

満面の笑みを浮かべたリムが可愛すぎる!


「そ、そうか。なら地図を頼む」


「はい! 」


リムは上機嫌でアイテムポーチから地図を取り出し、テーブルに広げた。



https://28930.mitemin.net/i399594/




「ああそうだった。この北東のクイーンズランド州のブリスベンとケアンズを中心とした、海岸沿いの小都市連合がクイーンズランド都市連合で、南東のシドニーとメルボルンとキャンベラの都市と、周辺の小都市の連合が正統オーストラリア共和国連邦だったな。元々は南西のパース市を含め各都市が協力して魔物からの防壁を築いていたんだけど、クイーンズランド都市連合が独立したんだったよな。んで、パース市にあるダーリントン鉱床の取り合いになって、パース市は両連合に挟まれてどっちかにつくわけにもいかず、労働者として鉱夫を派遣してるんだったか? こりゃパース市が中立になるのは地政学的に仕方ないな」


「はい。元々軍の基地や装備は東側に偏ってありましたから、パース市は人口も軍備も少なく独立も厳しい状態です」


「それでもレアメタルが大量に採掘できる、パース市近くのダーリントン鉱床の取り合いに巻き込まれ、何度も戦火にさらされてきたんだろ? 大変だよな」


確か正統オーストラリアが人口350万でクイーンズランドが180万だったか? それに対してパース市は30万程度だったな。さらに戦闘機や銃器が東側に偏って配備されてたんじゃどうしようもないな。

壁に囲まれた都市にこもって両連合の鉱夫として稼いていくしかないよな。


どう考えてもこの大陸の奴らはダンジョンを攻略する余裕なんてないだろうな。

日本のようにダンジョンを壁で囲んでいるのでも、中華広東共和国のように街に繋がる道に何重にも及ぶ防衛陣を構築しているわけでもない。

アトランと同じく街を壁で囲いその中で生活をしている。唯一船が出入りできる港が生命線だな。

採掘も鉱山までの道は危険だが、護衛を付けてレアメタルを採掘してからそれを大国に売り、食糧などと交換した方がダンジョンよりは安全に稼げるか。

たとえ全都市がまとまっていたとしても、一千万人にも満たない人口でこの広い大陸はどうしようもないか。

中華国のように滅ばなかっただけマシなのかもしれないな。



「パース市の市長がなかなか有能な者のようで、両勢力に駐留しているソヴェート軍や米軍とうまく外交を行っているようです」


「へえ〜、まあ地政学的に不利な都市だからな。必要に駆られて有能な者がトップになったんだろう。先ずはその実行部隊の奴を尋問して、もっと詳しい情報を得てから日本政府にクレームを入れるか。それからお仕置きだな」


俺はとりあえず首謀者がわかったので確実な証拠を手に入れることにした。

さて、どんなお仕置きをしようかな。



「あっ……恥ずかし……ん……」


俺はどうやって正統オーストラリアに落とし前をつけさせるか考えながら、また自然とリムを膝の上に乗せて触っていたのだった。


ハッ!? また無意識に……


性魔人の能力パねぇな!





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