第88話 エピローグ





眩い光が辺りを包み込み、急激な魔力の減少により全身の力が抜けることに俺は耐えていた。

少しして一瞬の浮遊感覚を覚えた後に、まぶた越しに光が収まっていくことがわかった。


俺は送還が終わったと思い少しづつ瞼を開けていくと辺りは真っ暗だった。

夜か……正宮だけじゃなくて近くに橋と内宮も見える。ここは元の世界の伊勢神宮で間違い無さそうだな。

無事送還が終わったようだ。しかしこれは何度経験しても慣れないな。



「うっ……ち、力が……」


「コ、コウ……」


「だんな……さま……」


「こうき……は……無事で……」


「凛ちゃんになっちゃん!シル姉さんにセルちゃんも大丈夫ですか! 」


「あれ? みんなどうし……くっ……これは……」


俺が目を開け周囲を確認していると、クオンの背に乗っていた恋人たちとリム三姉妹、そして以蔵や静音までその場にぐったりとしていた。

蘭はそんな凛たちにポーションを飲ませようか飲ませまいかとオロオロしていた。


どういうことだ? 方舟世界に召喚された時はこんなことなかったのにと、身体を動かそうとして自分の身体も鉛のように重いことに気づいた。


お、重い……

俺は取り急ぎ大幅に減った魔力を回復するべく、魔力回復ポーションを口に含んだ。

とりあえず全力の身体強化で無理矢理でも動かさないと。



『条件を満たした者がいるようです。佐藤殿は意外でしたが……今後も増やしていくといいでしょう。それでは私はこれで……皆さんご苦労様でした』


「あ、アマテラス様! 条件とはいったい? 増やすってなんのこ……と……あ〜あ、いっちゃったよ」


くそっ! 毎回毎回去り際に意味深なことを言って去るのは神様のお約束なのか?

でもアマテラス様が悪く言ってないならみんなは大丈夫そうだな。

とりあえず人のいない深夜を選んでくれたみたいだし、早いとこ移動しないとマズいな。


「皆! アマテラス様は深刻な状態じゃなさそうなことを言ってるから多分大丈夫だと思う。とりあえずここを離れよう。今から家の前にゲートを繋ぐ……ってクオンもかよっ! 」


俺がゲートを発動しようとしたらクオンは地面に頭を伏せて脱力していた。


『ク……クオオ……』


「はぁ〜。グリ子たちだけゲートで帰すのもめんどいから転移で帰る。蘭はグリ子たちを頼む」


「は、はい! 主様……本当に凛ちゃんたちは大丈夫でしょうか? 」


「ん〜わからん。加護が関係あるのは間違い無さそうなんだが、全員じゃないってのがな……とりあえずさっきのアマテラス様の口ぶりでは問題無さそうなことを言っていたから大丈夫だろう。加護を得て死ぬとかあり得ないだろうしな。悪いことにはならないと思う」


そうなんだよな。ほかのダークエルフたちやサキュバスにインキュバスたち、それにドワーフやホビットたちはなんともない顔をしてるんだよな。もちろんマリーたちもだ。力が入らず倒れているのはSランク以上の者ばかりだ。

ランクが高いから何かしら加護の影響を受けているのか? でもそれだと蘭が平然としているのはおかしい。

俺も今までこんなことは無かったのに……


「そうですね。加護を得て悪いことになるとは思えないです」


「そういうことだ。早く帰ってとりあえず家で皆で休もう」


「はい! 」


それから俺はクオンとグリ美とグリ男を、蘭は残りのグリ子たちをその背に乗る者たちごと家の前へと転移させた。


そして家の前に着くと、深夜警備をしていた留守番組のダークエルフとサキュバスたちが駆け寄ってきた。

俺は労いの言葉をかけた後に、明日改めて帰還の挨拶をするので今日は騒がないようにと伝えた。

そしてリムたちと以蔵夫婦はほかの身体が動く者たちで運ばせ、恋人たちは俺が部屋へ運び、クオンは蘭が寝床まで運んだ。グリ子たちは元気なものでキュオキュオ言って巣に戻っていった。


それからマリーたちに恋人たちの着替えを頼み、俺と蘭で皆を囲むようにベッドで寝たのだった。

俺もかなり身体がキツかったけど、身体強化全開にして頑張ったよ。

でももう無理……おやす……み……







そして翌朝。



「ええーー!? な、なにこれ……」


「う……ん……うるさいわね凛……どうしたのよ……」


「んにゃ……凛……どうしたんだ? 」


「凛ちゃん朝から大声出さないでよ……」


「凛ちゃんうるさいです……」


「耳が……痛てえ……」


気持ちよく寝ていると隣で寝ていたはずの凛が、寝ならがら自分の手を見つめて突然叫び声をあげていた。

シルフィたちもびっくりして全員起きてしまった。

俺も耳にダメージを負って起きたけどな。


俺は上半身を起こし巨大ベッドで寝る恋人たちを見回して……

ん? なんかおかしい……なんだこの魔力に……神力?


「だ、ダーリン! か、鑑定! 鑑定して! いつもの簡素化したやつじゃなくて種族まで見て! 」


「はあ? 種族? 」


何言ってんだ凛は……確かに人間を鑑定する時は種族なんて項目必要無いから非表示にしてるけど……


「いいから! 見て! 」


「あ、ああ……『鑑定』 ……は? 」


俺は凛に言われ彼女を鑑定して固まった……




皇 凛


種族:ハイヒューマン


職業: 賢者


体力:B→A


魔力:S


物攻撃:B


魔攻撃:S


物防御:B


魔防御:S


素早さ:B


器用さ:S


運:C


取得魔法:中級火魔法、上級火魔法


備考:紋章魔法使用可能:転移、氷結世界、竜巻刃、鑑定、探知、暗視



最後に見た時より体力がなぜかランクアップしていたがそれはいい。それよりハイヒューマンてもしかして……

凛の以外の恋人たちもよく見ると存在感が全員上がってる気がする。例えていうならオーガとオーガキングくらいの違いか? ハイオーガでもいいが……間違いなく種として上位の存在になってる気がする。


「ハイヒューマンかよ……」


「そ、そうなの! 起きたらなんか身体がおかしくて、おかしいというか軽い? 力が溢れる? そんな感じで自分を鑑定してみたの! そしたら体力が上がってて種族が人間からハイヒューマンてのになっててびっくりして……」


「言われてみれば私も身体がおかしいわ……え? シルフはなんで私に土下座!? 」


「あっ……あたしもなんか変だ……今なら竜化を完全にできそうな気がする……」


「私も身体が恐ろしく軽い気がしますね……これはいったい……」


「蘭も魔力ではない力が湧き出てます……あっ! 主様から神力を感じます! 」


「ええ!? 何を言ってんだよ蘭。ってか蘭から神力を感じるぞ? 」


「ええ!? 」


ちょっとみんな何言ってるかわからない。

とりあえず落ち着こう。

まずは全員を鑑定して何が起こっているのか確認しないと。


「とりあえず中級鑑定魔法や鑑定の羊皮紙だと詳細が出ないから、俺が凛と夏海とセルシアを鑑定して書き出すよ。シルフィと蘭は上級鑑定魔法持ってるから自分のを書き出してくれ」


「わ、わかったわ……なんだか怖いわね」


「わ、わかりました」


俺はそう言って自分を鑑定し……見なかったことにして無心で紙に書き出し、凛と夏海とセルシアを次々と鑑定して書き出した。シルフィは自分を鑑定して少し固まった後に震える手で紙に書いていった。気になったが後だ。

そうして一通り書き出し、1ヶ月前に成長発表会で皆が鑑定の羊皮紙を使って出したステータスも用意し、すごく嫌だったけど言い出しっぺの俺のステータスから出すことにした。




「だ、ダーリン!? 」


「コ、コウ……あなた……」


「ええー!? 旦那さまが!? 」


「こ、光希……」


「あ、主様……」


「どうしてこうなった……」




佐藤 光希


種族:人族→デミゴッド半神


職業: 神話勇者


体力:SSS→EX


魔力→神力:EX


物攻撃:SSS→EX


魔攻撃:EX


物防御:SSS→EX


魔防御:EX


素早さ:SSS→EX


器用さ:EX


運:A→S


取得魔法:最上級雷魔法、最上級空間魔法、最上級時魔法、上級結界魔法、上級水魔法、上級闇魔法、上級鑑定魔法、最上級付与魔法、上級錬金魔法、上級土魔法、紋章魔法


備考:三柱の加護(リアラ・ヴリエーミア・天照大神)及び一定の信仰により半神と認められる。



「……私のダーリンは神でした」


「コウが神で神話の勇者で……」


「すげー……あたしの旦那さますげー……」


「た、たとえ光希が神でも私の愛は変わりませんから! 」


「蘭の主様は神でした」


「は、半分だ! まだ半分だから人間だ! それより皆も人のこと言えないぞ! 蘭、シルフィ、見せてくれ」


俺は半神と神力という表示に混乱しつつも、蘭とシルフィにステータスを出すように言った。


「はい! 」


「え、ええ……」





種族:神狐


職業: 佐藤 光希の従魔→眷属


体力:S


魔力→神力:A→S


物攻撃:S


魔攻撃:A→S


物防御:S


魔防御:A→S


素早さ:S


器用さ:B→A


運:C→B


✳︎神狐時全能力2ランクアップ


取得魔法:最上級火魔法、上級錬金魔法、上級付与魔法、紋章魔法


種族魔法:人化、幻狐、狐火、狐月炎弾、狐縛炎、大狐嵐動、再生(神狐時)、神炎(New)


備考:従魔契約(佐藤光希)、紋章魔法使用可能:転移、天雷、契約、女神の護り、空気圧壊、竜巻刃、探知



備考:眷属効果により能力上昇、神力開放(New)







風精霊の谷のシルフィーナ


種族:エルフ→ハイエルフ


職業: 精霊師


体力:B→A


魔力:SS


物攻撃:A


魔攻撃:SS


物防御:B


魔防御:S


素早さ:A


器用さ:SS


運:B→A


取得魔法: 上級鑑定魔法


種族魔法: 精霊魔法(契約時)


備考: 風の特位精霊シルフと契約。

紋章魔法使用可能:転移、女神の護り、天使の護り




「眷属にハイエルフ? そういえばシルフィは前よりも透明感があるような……」


「確かに前も綺麗だったけどより神秘的な感じがしますね……」


「言われてみればそうだな〜シルがハイエルフかぁ……ハイエルフってなんだ? 」


「まさか私が……シルフ? いつまで平伏してるのよ……いい加減にしてちょうだい」


「うふふ、蘭は神様の眷属になりました」


なんだ? ハイエルフってシルフより上位の存在なのか?

そう言えばハイエルフは前に記述を読んだことがあるな。


「ハイエルフか……ハイエルフはリッチエンペラーの書物に書いてあったな。確か精霊神の直系の子孫で、加護が薄くなった者がエルフとダークエルフだとか? 」


確か神話の時代に存在した種族だったよな。他にも鍛治神の子孫のエルダードワーフなんかもいたと書いてあった。

シルフィは先祖返り的な何かをしたってことか?


「そうよ……ハイエルフはエルフの始祖とも呼べる存在。神話の時代に世界樹の巫女として存在していたの。そしてそのハイエルフを外敵から守る役目があったのがエルダーエルフ。ダークエルフの始祖ね。私たちの祖先は神話の時代に世界樹を失ったことで、加護と力も失いエルフとダークエルフになったのよ」


「世界樹は小説によく出てくるから聞いたことはあるわね。大きな木という事くらいしか知らないけど」


「世界樹は神界から神力をこの地上に送り満たす役割があった大樹よ。遥か昔の神話の時代には地上は神力で満たされていたの。でもある時、神の一柱と人族により燃やされてしまったわ。それ以降ハイエルフもエルダーエルフも各地に散らばり集落を築いて生き延びたと聞いているわ」


へえ〜世界樹ねえ。確かに神力は神社や神殿とかからしか感じないな。その世界樹が無くなり、ダンジョンとか魔脈からそれまで抑えられていた魔素が流れ出て地上に満たされたのかね?

まあ使えるならなんでもいいが、天使と戦った感覚から言えば神力は魔力より濃度が濃い感じなんだよな。聖の属性も含んでいるし魔物を相手にするにはかなり強力だ。

あれ? 俺はもしかして闇と聖の相反する属性を手に入れたんじゃないか?


聖属性は欲しいと思っていたけどこういう形で手に入れることになるとはな……

半神……デミゴッドか。

お袋……俺は普通の人間じゃなくなっちゃったみたいだ。


それよりも蘭はこれ以上進化しないから俺たちみたいにならなかったのはわかるが、能力がかなり上がってるな。人化した状態だとそうそう上がらないんだけど俺の影響かな? それに神力を使えるようになっているのは驚きだ。


「蘭は神力が覚醒した感じか? 本来なら相当な時間が掛かるって聞いたんだが、まあラッキーだったな。それに眷属になったことで俺のステータスの影響で底上げされてるっぽいな」


「はい! 蘭はとうとう神力を手に入れました! 新しい神炎という魔法を早く撃ってみたいです! 」


神炎はルシファーが使ってたやつだな。豪炎より強力だが飛び道具じゃないから大丈夫だろう。

後から飛び道具の魔法増えないよな?


「蘭ちゃん神狐になったらオールSSSランクじゃない……そんな力で撃たれたら私たち浄化させられそうだわ……」


「ら、蘭ちゃん。家ではやめてね? ダンジョンでやってね? 」


「むう〜蘭は凛ちゃんやなっちゃんに撃ちません! 」


「なあなあ! あたしは? あたしはどうなってんだ? 凄い力を感じるんだ」


「ああすまん。セルシアも多分上位種になってるな。これは俺も知らない種族だ」


俺は目をキラキラさせて迫るセルシアの腰に手をやり抱き寄せ、セルシアのステータスが書かれた紙を出した。




セルシア・ドラス


種族:竜人→ハイドラゴニュート


職業: 拳聖


体力:S→SS


魔力:C


物攻撃:S


魔攻撃:C


物防御:S


魔防御:A


素早さ:S


器用さ:D


運:D


✳︎竜化時物攻撃・物防御・魔防御が1ランクアップ、素早さ1ランクダウン


取得魔法:


種族魔法:竜闘術、竜化


備考:竜化時侵食未制御→完全制御(New)、紋章魔法使用可能:転移、探知




「ハイドラゴニュート? 竜人の上位種っぽいけど……」


「聞いたことないわね……」


「でも竜化がいつでもできるようになったのは凄いですね」


「セルちゃん良かったですね」


「んん? よくわかんないけど強くなったならいいや! これで竜化がいつでもできる! 」


「竜化は本来200歳以上の者しかできないからな。ただ、それにしても俺の知る竜化ができる竜人より遥かに強い存在力だ……恐らくランクは実質+1ランクアップにはなってるだろうな」


ランクはあくまでもその種族の中での強さのパラメーターだ。当然ゴブリンのAランクとオーガのAランクでは圧倒的にオーガの方が強い。魔物の場合はそこまでランク上がる前に上位種にはなっているけどな。

まあだから桜島の時に、AランクのクオンにSランクのシルフィとセルシア二人掛かりで手も足も出なかったというわけだ。


その種族としてのランクが上がったということは、魔力の数値が以前と同じSだとしてもSSくらいになったと考えた方がいいだろう。俺に関してはもうわからん。魔力が増えたというか底なしになった気がする……


「ホントか!? すげー! あたしすげー! あとでクオンにリベンジしに行ってくる! 」


「ははは、クオンも強くなったからまだ無理だな。桜島の時のクオンならシルフィと二人で倒せると思うけどな。さて、凛と夏海のはこれだ」


そう言って俺は二人のステータスを出した。





皇 凛


種族:人族→ハイヒューマン


職業: 賢者


体力:B→A


魔力:S


物攻撃:B


魔攻撃:S


物防御:B


魔防御:S


素早さ:B


器用さ:S


運:C


取得魔法:上級火魔法


備考:紋章魔法使用可能:転移、氷結世界、竜巻刃、鑑定、探知、暗視






多田 夏海


種族:人族→ハイヒューマン


職業: 剣王


体力:S→SS


魔力:B


物攻撃:S


魔攻撃:B


物防御:S


魔防御:B


素早さ:S


器用さ:B


運:C



備考:紋章魔法使用可能:転移 初級、闇刃、探知




「確かハイヒューマンてのは神話の時代にたくさんいたらしい。神が地上からいなくなると同時に力を落としたと聞いている。人族の始祖とも言われているから恐らくシルフィと同じく先祖返りだろう」


「ん〜……ということは私たちは神話時代の人間になったってことなのね。人間の範囲ならまあいいわ。それより魔力が凄く増えてるのよ。私も実質1ランク上がった感じがするわ」


「そうですね。私も身体が強くなったような気がします。魔力も増えてますね。これがクオンが感じた上位種になった時の感覚なのですね」


「確かに上位種になったという表現がしっくりくるな。元々神が作った人種は強大な力を持っていたというからな」


俺はその人族の上位種をすっ飛ばして半神になってしまったけどな。

俺のステータスの備考を見るに、半神になるには三柱の神の加護と信仰されることが条件だったようだ。


信仰か……心当たりがあり過ぎる……



こうして俺たちはお互いのステータスを確認し合い、少し落ち着いてからリビングに行きマリーたちの食レポをBGMに皆で朝食を食べた。


マリーたちは味覚を覚えてからはスイーツだけではなく、様々な料理に挑戦するようになった。

今日も五人で席に座って俺たちと一緒に食べながら、少し塩分が多過ぎたとかこの方がいいだとかあーだこーだ言っていて賑やかだ。

この後は留守番をしていたほかのオートマタたちにも味覚を与える予定だ。

既にオートマタ同士の念話で矢の催促が来てるらしい。


そうそう、本命だった心話だが、通信したい相手を強く思い浮かべて話しかけると、相手側の脳に直接声が聞こえる。その時に相手が応じないと繋がらない感じだ。

念話と同じだから俺と蘭はすぐに使いこなせたが、恋人たちは苦戦しているようだ。最初は雑念が入るし、話すつもりのなかった心の声まで相手に伝えたりしちゃうからな。要練習ってことだ。


心話はマリーたちも使えるようになっていた。オートマタだから加護が得られるか心配していたが、どうやら半生体ということもあり、新種族として認めてもらえたのかもしれない。

ただ、リアラは物に対して加護を与えられるからそういう可能性もあるが、俺は一人の生命体として認められたと思いたい。

マリーたちはもう人種だ。もしも神が認めないなら俺が半神として認めるさ。


そして朝食を食べた後はずっとソワソワしていた凛とセルシアに、夏海とシルフィを保護者として付けて中華大陸に行くことを許可した。

もう二人とも暴れたくて仕方ないって感じだったよ。

蘭はメイとスーと遊びたいからと行かなった。

一年ぶりだからな。メイと水竜のスーとたっぷり遊びたいだろう。こっちは1ヶ月しか経ってないはずだけどな。


そんなわけでリビングで凛たちを見送ったあとは俺と蘭でメイの巣に行き、欠伸をしてくつろいでいたメイが蘭を見てギョッとした顔をした後に媚びるような顔をして、その後蘭に抱きつかれているのを見届けて俺はエメラとクオンの巣に向かった。

きっとメイは蘭がいない平和な日々を送っていて幸せだったんだろうな。

悪いなメイ。蘭のペットに心休まる日は無いんだ。



《 クオーーン♪ クオーーン♪ 》


《 クオッ! クオオッ! 》


《 クオッ! クオオッ! 》


ん? エメラの甘ったるい鳴き声とクオンの声に、もう一つもクオン? どういうことだ?


俺がクオンとエメラの巣に歩いて向かっていると、巣の中から三頭の竜の声が聞こえた。

あれ? 創造で竜は増やした覚えがないんだけどな……

俺は不思議に思い囲いの向こう側の巣の中に転移した。


するとそこには頭が二つに増えたクオンがいた……


《 クオッ! クオッ! クオオ! 》


《 クオッ! クオオッ! 》


「ど、どういうことだ? ツインドラゴンになんでなってんだ? 」


俺を見たクオンが機嫌良さげに、朝起きたら増えてたと二つの頭から言うもんだから俺は混乱した。

と、とりあえず鑑定だ。




クオン


種族:竜種


体力:S


魔力:S


物攻撃:A


魔攻撃:SS


物防御:A


魔防御:S


素早さ:A


器用さ:A


種族魔法:竜魔法(障壁・ブレス)


備考: 上位火竜亜種・双頭火龍



うおっ!魔法攻撃がSからSSになってる! 頭が二つになったからか? 確かにダブルブレスを吐いたら強烈だろうが、双頭火竜?ツインドラゴンの火竜版てことか?

亜種って書いてあるからこれは進化というか変化したのか。

亜種になるには強い想いと加護が条件だったってことか?

強い想いはまあわかるな……まさかクオンをやる気にさせるために言ったことが現実になるとはな。


《 クオッ! クオオ! 》


「ん? 俺のいう通りだったって? どこまでも着いて行くって、お前調子いいな……」


《 クオーーン♪ クオーーン♪ 》


「エメラはイケメンが増えてハーレム気分だからそんな甘ったるい声を出してんのか」


まあヘタレのイケメンが上位種になって帰ってきて、イケメン顔が増えてたなんてそりゃ興奮するよな。


「エメラ? でも増えたのは頭だけだぞ? それでいいのか? 」


《クオーーン! 》


「最高って……まあお前がいいならいいけど……」


いくら美人でも頭二つとか俺は嫌だけどな。そこは竜の感覚だとアリなのか……

しかしクオンがエメラを前に堂々としていて、まるで「困ったメスだぜ」的な余裕出してるのがイラっとするな。まあ長くは続かないだろう。

確かに今回の旅でクオンは大きく成長した。だが、所詮お前はヘタレ竜だ。

俺には見える……数日もしないうちにエメラの尻に再び敷かれるお前の姿がな。


俺はラブラブモードのエメラの邪魔をしたら悪いと思い、恋人たちと同じく体調の悪かったリムや以蔵たちの様子を見に家の二階へ転移した。



「光魔王様! いまお伺いしようとしていたところでした」


「光魔王様! ボクたち大変なんだ! もうどうなってるのか全然だよ! 」


「お屋形様。我らはとんでもないことになっておりまして……」


「お屋形様……まさか私たちが始祖と同じ存在になるとは……」


俺が二階にあるリビングに転移をすると、リムと以蔵たちがちょうど集まっていたらしく、俺を見るなり興奮気味に話しかけてきた。リムたちも以蔵夫婦もその手には鑑定の羊皮紙を手にしていた。


「やっぱりお前たちもか……俺も凛たちも種族が変わった。どうやらアマテラス様の加護の影響のようだ。恐らくある一定のランクに到達した者は進化するんだと思う」


俺はそう言って俺のステータスが書き出された紙を以蔵たちに渡した。


「か、神!? 」


「お、お屋形様が神……それに神話の時代の勇者様だとは……」


「なっ!? 光魔王様が光魔神に!? 」


「ひゃーー! 光魔王様が神様になっちゃったよ! 」


「あらあら……魔王様どころか魔神になってしまわれたのですね」


「半分な! 半分人間だからな! そこを誤解するなよ!? 」


なんでみんな半神の半の部分や、デミゴッドのデミの部分を見なかったことにするんだ?

絶対わざとだろ!


ったく、まあいい。とりあえず鑑定して見てみるか。




リム


種族:サキュバス族(純血種)→聖魔人


体力:A→S


魔力:S


物攻撃:A


魔攻撃:S


物防御:B


魔防御:S


素早さ:A


器用さ:S


魔法:上級闇魔法


種族魔法: 魅了、催淫、幻術、淫夢、影忍、麻痺眼(New)、聖魔の癒し(New)


備考: サキュバス種




暗黒の森の以蔵


種族:ダークエルフ→エルダーエルフ


職業: 大精霊使い


体力:A


魔力:S→SS


物攻撃:A


魔攻撃:S


物防御:B


魔防御:A


素早さ:S


器用さ:A


運:C


取得魔法:


種族魔法: 精霊魔法(契約時)


備考: 闇の上位精霊ネルと契約。




暗黒の森の静音


種族:ダークエルフ→エルダーエルフ


職業: 大精霊使い


体力:A


魔力:S→SS


物攻撃:B


魔攻撃:S


物防御:B


魔防御:A


素早さ:S


器用さ:A


運:B


取得魔法:


種族魔法: 精霊魔法(契約時)


備考: 闇の上位精霊ネルと契約。



「聖魔人にエルダーエルフか……聖魔人は大昔に四天王にいた魔人のことだよな? 確か常に魔王から離れず、回復魔法を使えてかなり厄介な魔人だったと古代書に書いてあった。そうか、サキュバス種だったのか」


リムたちのステータスは三人とも全く同じだった。

それにしても大昔に一体だけいた魔王の右腕の聖魔人がサキュバス種だったとはな……


「は、はい! 勇者とサキュバスの子で神の祝福を受けたと伝わっています。我ら純血種はその子孫であるとも。我ら最弱の魔族のサキュバス族から、唯一四天王にまで登りつめた種族です」


マジか!? 俺以外にもサキュバスの誘惑に引っかかった勇者がいたのか!

わかる。わかるよその気持ち。


「まさか我らが神話の時代に世界樹と、その巫女であるハイエルフを守る役割を持った始祖のエルダーエルフになるとは……」


「神の加護を再び得ることが条件だったとは知りませんでした」


「シルフィもハイエルフになっていた。アマテラス様が加護はそれだけで恩恵があると言っていた意味がやっとわかった。人族はハイニューマンになり、竜人はハイドラゴニュートになった。そして俺は半神だ。クオンは……あとで見てくるといい。まあなっちまったもんは仕方ない。皆それぞれその力を使いこなせるようにしろ」


「し、シルフィーナがハイエルフに!? ……はっ! この力を使いこなし、より一層お屋形様のお役に立ちまする! 」


「はっ! 必ずやこの力を使いこなしてお見せします。お屋形様のために」


「ハッ! 光魔神軍親衛隊としてこの力を必ずモノにしてみせます! 」


「まかせてよ! ボクが光魔神様を守るんだから! ぐへへへ、ボクが聖魔人……もう無敵じゃないか」


「ミラ姉様……フラグがまた建ちましたわ」


「期待している」


俺はまた調子に乗っているミラをスルーして、リビングからプライベートルームへと転移した。


これは今回の参加者たちもランクが上がれば進化しそうだな。個人的にはホビットとグリ子たちの進化が見たいな。ちょっと鍛えるか。


しかしアマテラス様の依頼を受けて良かったな。これほど戦力が上がるとは思っていなかった。

これならもうどこに召喚されても余裕じゃないか? 創造魔法もあるし過去の魔王の四天王もいる。

俺たちが魔王軍になったりしてな。なーんちゃって! あははは!


俺は今回の旅で得たものを思い出し上機嫌になっていた。


うっかりフラグを建てたことに気付かずに……




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