第20話 大掃除






 シドニーで正統オーストラリア大統領と各長官を捕らえた俺たちは、メルボルンでリムと合流してから蘭にメルボルンの港を破壊するように言い、しばらくその様子を見ていた。

 まあ特に問題無なさそうだと思ったので、その間に市民へと今回のことの顛末を説明しようとエメラで街に乗り込んだ。


 街を囲む壁内に入るとテレビカメラを構えてこちらを撮影している者たちがいたので、もしやと思い怯える彼らに声を掛けてみた。するとやはり彼らはテレビ局のクルーらしく、正統オーストラリア各都市に生中継している最中とのことだった。

 俺はこれは手間が省けると思い、そのまま俺を映すように言ってテレビカメラに向かって今回の件を説明することにした。



 今回俺たちは正統オーストラリアだけではなく、クイーンズランド都市連合も攻めた事やその理由を一通り説明した。するとレポーターらしき男性が、港を破壊され修復も許さないとなれば外国へ輸出入できなくなり飢えて死ぬしかなくなりますと質問してきた。

 それに対してパース市と貿易ができるように船以外の輸送手段を用意してあるから問題無いことと、今後はパース市にお願いして貿易をしてもらうようになるだろうと答えたら微妙な顔をしていた。

 よほど今までパース市を下に見てたんだろうな。これからその報いを受ければいいさ。


 それからサラッとシドニーにいたエモンズ大将の名前を出し、彼となら今後は交渉しやすいだろうなと呟いたりした。内政干渉ではない。俺は素直に思ったことを言っただけだ。最大野党に彼を御輿に選挙を戦えとは言っていない。


 その後もライフラインを人質にとるようなやり方は侵略と同じではないかと質問されたが、パース市を何度も侵略してその市民を奴隷扱いしてる奴らに言われたくないと言ってテレビ出演を終了させた。

 その場から突然消えてエメラの背に現れた俺に一同が驚いていたが、俺はいつでもこの竜を連れてここに現れることができることを忘れないようにとだけ言ってから急いで蘭の元へと飛び去った。


 だってさっきから凄い音が聞こえるんだよ。インタビューに答えている間も気が気じゃなかったよ。

 案の定俺がエメラのの背に戻り港を見ると、そこは辺り一面火の海となっていた。


 あちゃー……石油の備蓄施設でも壊しちゃったみたいだな。

 スーが水のブレスで消そうとしても消えず、蘭が空気圧壊で押し消そうとしても効果がなく、凛が氷河期で凍らせてやっと延焼を防いでいるって感じだな。


 俺は夏海と目を合わせてため息を吐いてからギャーギャー騒いでいる蘭と凛のところへ行き、地形操作で燃えている石油を地中に埋めて消した。


「あ〜焦ったわ! もう少しであの重要そうな施設に燃え移るところだったわ」


「主様、申し訳ありません。凛ちゃんが炎槍の乱れ撃ちをしたら燃料タンクに当たってしまって……」


「待って! 確かに私がタンクを壊したけど、水で消せばいいといってスーにブレス吐かせて範囲を広げたのは蘭ちゃんよ! 」


「水を掛けて消えないのはおかしいです」


「油は水を弾くから当たり前じゃない」


「火は水に弱いのは四属性の真理です」


「ここは科学の世界なの! 」


「ふ・た・り・と・も! 」


「「……はい」」


 また始まったよ……普段は仲が良いのに失敗した時にワザと言い争って、俺から怒られるのを避けようとするのはいつものことだ。実際怒る気が失せるんだけどな。


「まあ大事にならなくてよかったよ。ここはシドニーほど重要な施設はなさそうだし問題ないだろ。さあもう暗いし帰ろう」


「ごめんねダーリン」


「申し訳ありません主様。蘭は科学を勉強します」


「いいさ、スッキリしたんだろ? 」


「うん! いっぱい魔法を撃ててスッキリしたわ! 」


「はい! スーちゃんも気持ちよさそうでした! 」


「それならいいさ。後片付けは明日にでもしておくよ。ゲートを開くからみんなで帰ろう」


「うん! ダーリン大好き! 」


「はい! 主様! 」


「まったく……光希は私たちに甘すぎですよ? 」


「そうだな。でも2人が楽しそうにしている姿を見るとな。ちゃんと反省してるみたいだしいいさ。それじゃあ繋げるぞ……『ゲート』 」


 俺は呆れる夏海に笑いかけてからゲートの魔法を発動した。


 ゲートを開いてからは以蔵たちを先に潜らせ、パース市の周りに岩竜とグリフォンに餌を置いてから待機させておくように指示をし、スーと蘭たちを潜らせ俺とエメラが最後に潜りゲートを閉じた。


 パース市に着いてからは俺はスーに港で待機しているように言って川を下らせ、エメラの背のテントから捕らえた者たちを全員出して拠点にいるレムとカイを呼び出し、パース市の留置場に入れるように指示をして連れて行かせた。

 クイーンズランドの元議長や議員に魔誘香を使った実行犯は米軍に引き取りに来させ、正統オーストラリアの奴らはパース市長に引き渡して裁判を受けさせる予定だ。

 これで新しい政府ができた時に損害賠償の請求をしやすくなるだろう。


 エメラにはその辺で適当に休むように言い、パース市の拠点に数名を残して一旦家に帰ることにした。

 シルフィとセルシアには心話でちょこちょこ連絡しているが、寂しがるだろうからな。

 それから再び家の前にゲートを繋ぎ、皆には明日にまた集合すると伝えて解散した。


 ダークエルフたちは紫音と桜を除いて二階にある女神の島に繋がるゲートの魔道具で里に戻り、リムたちは家の二階の客間を正式にリムとミラとユリの部屋にしたのでそこへ戻っていった。インキュバスとサキュバスの大部屋も作ったから、女神の島の砦はリアラの塔に挑むグループの宿泊施設になっている。

 紫音と桜は俺たちの夕食の準備を手伝いにマリーの所へといった。


 俺は蘭と凛の武勇伝(?)を聞きながら5階のプライベートルームへとエレベーターで昇り、既に帰ってきていたシルフィと、俺たちに付いて行けなくて拗ねているセルシアの出迎えを受けた。

 その後はセルシアの愚痴をみんなで聞きながらなだめて、次は連れて行くからとご機嫌を取りご飯を食べた。

 お風呂もシルフィとセルシアと三人で入り、セルシアの悦びの声を聞くまでご機嫌とりの奉仕をしたよ。

 寝る時もシルフィとセルシアの三人で遅くまでベッドで愛し合ったら、朝にはセルシアは上機嫌になっていた。寂しかっただけなんだろうな。ほんと可愛いやつだよ。





 そして翌日。


 朝食を食べたのちに、上機嫌でツヤツヤのお肌になったシルフィとセルシアをゲートで冒険者連合ビルの転移室まで送り、俺と蘭と凛と夏海に紫音と桜は家を出てサキュバスとダークエルフたちと合流した。

 そして全員が揃ったのを確認してからパース市までゲートで移動した。


「今日は俺たちの別荘地となるロットネスト島の大掃除をしようと思う。島はこのオーストラリア大陸から近いせいもあって飛行系の魔物が森を巣にしていたからな。Dランクの風切り鳥がほとんどで、Cランクの紅死鳥とBランクの黒死鳥の反応が少しあったくらいだ。島の環境を壊したくないから岩竜は禁止する。これはリムがグリフォンを連れてサキュバスとインキュバスを指揮してやってくれ」


「ハッ! 一匹残らず殲滅します! 」


「以蔵たちダークエルフは島の港と軍施設のチェックに、建物から装備や食糧等を集めてくれ。蘭と凛と夏海は紫音と桜と一緒に捕虜を適当な船に詰め込んで解放してくれ」


「はっ! 」


「はい、主様」


「とうとうあの島が手に入るのね。ダーリン、捕虜を解放したら島を見て回ってもいい? 」


「ああいいよ。島の西側半分は立ち入り禁止区域にするつもりだ。俺が壁をあとで作るつもりだから、その境界線と会社の保養施設を建てる良さそうな土地やビーチを見つけておいてくれ」


「わかったわ! コテージを建てれそうなところ見つけてくるわ! 」


 俺もヌーディストビーチにできそうな所をあとで探さなきゃな。そのためにはとっとと終わらせないと。


「ヤンはレムたち潜入組を呼んで俺に付いてこい。昨日破壊した各都市の港に行く」


「ハッ! 至急呼び寄せます! 」


 ヤンはそう言ってからユリに心話でレムたちを呼ぶように頼んでいた。


「それじゃあリムたちと以蔵たちには転移のスクロールを渡しておく。このパース市と横浜の家を登録してある。これは一度に5人まで転移可能な素材を使っている。全て終わったら家に帰ってもいいし、岩竜を連れてこの辺で狩りをしていてもいい。俺を待っている必要はないからな」


 俺はそう言ってちょこちょこ作っておいた横浜の家を登録した転移のスクロールをリムに10枚と以蔵に30枚、昨日作製したパース市を登録したものを5枚と10枚それぞれに渡した。

 俺が帰ってくるまでロットネスト島にいてもつまんないだろうからな。うちの会社は仕事が早く終われば帰宅していいんだ。うん、ホワイト企業だな。


「はっ! お気遣いありがとうございます! 」


「お屋形様ありがとうございます。午後から探知の訓練を実施いたします」


 まあ以蔵たちは帰らないよな。ここにいるダークエルフは方舟留守番組ばかりだし仕方ないか。

 この島でくノ一訓練を行えば方舟組のようになるだろう。そしたら男のダークエルフと未婚でフリーのくノ一部隊で分けて活動させよう。くノ一部隊には特別に俺が手取り足取り訓練してあげなきゃな。


 俺はリムからスクロールを受け取って、転移ができるヒャッホーイとか喜んでいるミラに、無闇に使うとリムに怒られるからなと言って頭を撫でてからゲートを開いて皆をロットネスト島に移動させた。


 そしてその間にオーストラリア大陸に潜入していたインキュバスのカイとシム。サキュバスのレムとメイがやってきた。

 インキュバスはもうみんな黒髪だ。カイは長髪だがシムは短めのパーマ頭という違いしかない。二人は俺が作ってやった中位黒竜の革のジャケットと革ズボンに中級結界の腕輪を装備している。


 メイは緑色の髪のセミロングで、いたずらっ子のような愛嬌のある顔立ちの若いサキュバスだ。確かミラと同い年だったかな。今日はレムと同じく俺が渡した中位黒竜のビキニアーマーと、中級結界の腕輪を身に付けている。この子は小柄なのに巨乳でなかなかそそる身体付きなんだよな。レムは背が高くて胸もお尻も大きくてやらしい体型だけど、小柄なのに巨乳ってこのギャップがいいよな。

 是非ともロットネスト島のビーチで一緒に遊びたい。揺れる胸と鬼ごっこをしたい。


「光魔王様、お待たせいたしました。カイほか3名揃いました」


「ああ、お前たちにはヤンの指揮でこれから俺が作業している間の護衛を頼む」


「なんと!? 私に光魔王様の護衛の指揮をお任せいただけるのですか!? 」


「こ、光魔王様の護衛を我らが!? 」


「これはなんと光栄な……」


「ミラ様に自慢できます」


 ヤンとカイは大袈裟だな。レムは感激してるしメイはミラと仲が良いのかな? 自慢できるって喜んでる。

 連れて行くのは今後のためと、作業中に魔物が来ても邪魔だからつゆ払いをこの四人にしてもらおうと呼んだだけなんだが、なんか嬉しそうだから別にいいか。


「じゃあ転移するからそれぞれの腕に触れていろ」


 そう言って俺はレムとメイのお尻に手をあてて揉んだ。


「あっ……光魔王様」


「んっ……光魔王様エッチです」


「二人とはあまりコミュニケーション取れてなかったからな。落ち着いたら一緒に海水浴行こうな」


「は、はい! 是非! 」


「やった♪ 光魔王様に遊んでもらえるなんて嬉しいです」


「あの触れれば斬られるようなレムがこのような女の顔をするとはな……」


「いつもオスを見下しているあのメイが、まるで少女のような目で男を見るとは……」


「カイ? 死にたいのかしら? 」


「万年精○臭い発情男のシムさん? なにか言った? 」


「い、いや……」


「せ、精!? な、なんでもない……」


「こらこら、仲良くしろ。仲間だろ」


「ハッ! 光魔王様がそうおっしゃるのであれば喜んで! 」


「はい! 仲良くします! 」


 そう言って満面の笑みで俺を見るレムとメイに、インキュバスがサキュバス以外と子作りする理由が少しわかった気がした。

 インキュバスはサキュバス族に組み込まれていることから、完全に女性上位の世界なんだな。

 ヤンがこのやり取りを無関心で見ているのは、純血種だからだろう。純血種でないレムとメイは純血種のインキュバスよりは下ってことかな? そして純血種同士だとサキュバスの方が上で、特にリム姉妹は族長の血筋だから皆が従うんだろうな。唯一聖魔人になった存在でもあるしな。


 まあそれでうまく回っているならいいか。可哀想だから今度インキュバスたちを引き連れてパワーレベリングでもしてやろうかな。いや、男だらけでダンジョンとかやっぱ嫌だな。

 中華大陸にでも放り込んでおくか。


 俺はインキュバスの地位にほんの少しだけ同情しつつも、レムとメイの尻を揉みしだきながらまずはケアンズの港へと転移をした。






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