第10話 修羅界






「無駄に派手で大きな扉よね」


「この扉以外は出入り口が無さそうね」


「キンキラキンだな! あたし目が痛くなってきた」


「あっ! 光希! 扉の横に鍵穴らしきものがあります」


「お? あれか? 俺も目がチカチカしていて見落としていたよ」


中世界草原フィールドのボスを倒した俺たちは、ボスからドロップした黄金の鍵を持って突然フィールドの最奥に現れた神殿までやってきた。途中襲い掛かってきた生き残りの夜魔切鳥や黒死鳥は、魔法失敗の汚名返上とばかりに凛が蹴散らしていた。

後方からは各国の軍らしき集団が俺たちを追ってきているが、地上の魔物と交戦しながらだからここに辿り着くのはまだまだ時間が掛かりそうだ。


神殿は黄金の光を発しており、柱や壁には見覚えのある天使の壁画が描かれていた。扉は巨大で高さが20mはありそうだ。その扉にも装飾がなされており、ずっとみていると目がチカチカしてしまうほど光っていた。見て欲しいんだか欲しくないんだかわかんない建造物だよな。


そして俺は夏海が見つけた扉の横にある鍵穴らしき所に鍵を差し込み回してみた。すると巨大な扉が内側へと開きはじめた。


「あっ! 動いたわ! ハリボテじゃなかったのね! 」


「これさ、軍とかが追いついてきたら迎撃しながら扉を通らないといけないな」


「そうね。各国が協力していれば気にすることは無いんでしょうけどね」


「それは無いだろうな……なんだ? 全部開くわけじゃないのか? まあいい、このままグリ子たちと中に入ろう」


俺たちは10mほどのスペースができたところで開くのを止めた扉を、グリ子たちに乗ったまま通ることにした。やっぱあんなに巨大な扉にする意味ないよな。


扉を通ると外の派手さはなんだったのかと思うほどに何も無い真っ白な空間だった。いや、中央に黒い鉱石でできた四角柱の物体がポツンと佇んでいる。あの台座みたいなのが制御装置やら登録装置的なものかな? 鑑定が弾かれるからさっぱりわからん。


「まさかの外観だけゴージャスパターン」


「外側があんなのだから中は相当と思っていたら何もないわね」


「神様って結構手抜きするんですね」


「せめて教会みたいにすればいいのにな。まあ見た目なんてなんでもいいさ、あの中央にある台座がこのフィールドを攻略した事を登録できる何かだと思うからちょっと行ってくるよ」


俺は皆にそう言って中央まで歩いていき、黒い台座の前に立った。すると台座の上に石版のような物が現れたと思ったら、俺の脳裏に石版に手を触れよというイメージが伝わってきた。俺は指示された通り石版に手を触れた。するとさまざまな情報が俺の頭の中に入ってきた。

俺は慣れない感覚に一瞬驚きつつも、入ってきた情報を一つずつ整理していった。


この石版に最初に触れた者がこのフィールドの管理者となる。

管理者は鍵があればいつでもこの神殿に出入りでき、条件等の変更ができる。

管理者はこのフィールドを開放することも、未攻略の状態に戻すこともできる。

管理者は地上及び方舟内にある特別エリアに、このフィールドに繋がる門を設置することができる。

管理者は同一の管理者が管理しているフィールドに限り、フィールド同士を繋げることができる。

管理者は大まかにフィールドへ入れる者を指定できる。

このフィールドは開放後50年経過すると未攻略フィールドに戻る。


こんな感じかな……まず管理者はこの石版に最初に触れた一人だけがなれるみたいだ。管理者になった者は様々な権限があるが、中でもフィールドを未攻略の状態に戻せるというのが強力な権限だな。しかしそれをするには鍵を持ってまたこの神殿に来なければいけないから、個人が過大な権力を持つことは防げるだろう。管理者に鍵を持たせなければいいだけだからな。それに最悪管理者を殺してしまえば条件の変更ができなくなるだけで、フィールドはそのままみたいだから管理者になった者は馬鹿なことを考えないだろう。

門を新たに設置できると言ってるけど特別エリアってなんだ? 以蔵もリムたちもそんなこと一言も言ってなかったぞ? これは再度調べさせるか。

それと門を繋いだら大まかにだけどフィールドに入れる者を指定できるみたいだ。個人とかはできないけど、例えば日本人だけとかそういった指定ができるらしい。


そして一番やばいのが50年後に問答無用でフィールドが未攻略の状態に戻されるというものだ。50年後に未攻略フィールドに戻ると魔物が現れるらしく、7日後には全ての資源フィールドの門と繋がるらしい。つまり他国が攻めてくるってことだ。だから7日以内に再度攻略しなければならないらしい。


おいおいおい! 方舟だろ!? 人類を救済する船じゃないのかよ!? 攻略したら終わりでいいじゃん! なんで期限つけるんだよ! 借地フィールドかよ!

あれ? 確かこのフィールドはってニュアンスだったよな? 中世界で50年なら小世界は? 同じ? いやそんな甘くは無さそうだ。それに7日間の猶予も小世界はそこまでの日数は無さそうだよな。


俺は神の本当の試練というものに愕然としながらも入口で待つ皆のところに戻り、石版から得た情報を全て伝えた。


「なにそれ! 攻略したらずっといれるんじゃないの!? 」


「これは神も厳しいことするわね……」


「試練というより人類に対しての罰ですよね……」


「なあなあ、つまりフィールドを手に入れてもずっと鍛錬してろよってことだろ? 」


「ああ、セルシアの言う通りだな。創造神が言った力を示せっていうのは、最初だけじゃなくて世代が変わってもずっと力を示し続けろってことなのかもな」


何世代も人類が力を合わせ続けることができれば、期限があろうが無かろうが大したことじゃない。が、恐らく無理だろう。その場合ずっと人類は戦い続けることになる。そうしているうちにいつか全てのフィールドを征服する勢力が現れるだろう。そしてその勢力はいずれ内部分裂してまた群雄割拠となり戦いがまた始まる。地上と同じだ。ここは人類を救済する方舟なんかじゃない。何千年もいがみ合い戦い続け、果ては世界を壊した人類に対し、そんなに戦いが好きなら永遠に戦っていればいいと神が用意した修羅界だ。


「そんなのずっと戦い続けてなきゃいけないじゃない……」


「50年後に全てを失うかも知れない中で生活するなんて……」


「北欧神話に似たような話があったな。それに当てはめると、第三次世界大戦がラグナロク終末戦争、戦い続ける人類は生きながらにしてエインヘルヤル死せる戦士たちとされ、神によってヴァルハラ方舟に送られる。そこで戦士たちは永遠に戦い続ける」


「方舟がヴァルハラ……」


「神は人類に愛想が尽きたのかもしれないわね」


「そんなに戦いたいなら永遠に戦っていればいいということですか……」


「参ったな……当初考えていた事とこれほど違ってくるとはな。創造神がこの世界を捨てたというのはこういう意味だったのか……サクッと日本人を収容できるだけのフィールドを攻略してとっとと帰るつもりだったんだけど、それじゃあ50年後には他国に滅ぼされそうだ。アマテラス様が合格をくれるか微妙だな」


「ダーリン、一応住める土地を用意して伊勢神宮を移設すれば条件は満たされるなずよね? 」


「凛ちゃん確かにそうだけど、それなら50年後にまた呼ばれるかもしれないわよ? 」


「それは嫌ね……」


「ありえるな。しかも50年もすればAランクになっている者も複数いるだろう。魔法を使える者も増えているかもしれない。今より手が掛かりそうだ。そこでまた土地を俺たちが守っても、また次も呼ばれるとか勘弁してもらいたい」


解決方法はある。それは日本人以外を全て滅ぼすことだ。期限がきて数日後に土地を奪いにくる敵がいなくなれば、あとは魔物だけに集中できる。内戦は起こるかもしれないが、最後に残るのは日本人になるのは変わらないからアマテラス様の依頼を達成したことには変わりがない。

でもできるわけないよな、魔王じゃあるまいし。あ〜リムが何か閃いたって顔をしてるよ。言わなくていいから、何を言うか想像つくから。


「これは作戦を考えなきゃ駄目ね。さっさと帰ってみんなで考えましょ! 」


「そうね、帰ってから考えればいいわね。時間はまだあるんだし」


「それもそうだな。今日の目的は達成したしとりあえず帰るか。ここからでもエスケープで資源フィールドに出れると思うからみんな固まってくれ」


エスケープを使うとどうなるかはこの中世界に来て真っ先に試した。すると資源フィールドのこの世界に繋がる門の前に出たからこの神殿からでもいけるはずだ。俺は皆を一箇所にまとめて魔法を発動した。


「とりあえず開放はまた今度ということで! 『エスケープ』 」




そして俺たちは資源フィールドの山岳地帯前にある5つある門の前へとやってきた。


「コウ、石版見てみて。六芒星の光が消えてないわ」


「あ、ほんとだー。つまり未攻略扱いってことよね。このまま私たちが開放しなかったら、二つ目のフィールドにずっと行けないままなのかしら? 」


「さすがにそれは無いだろう。数日もしたらまたボスが現れるんじゃないか? それならそれで別にいいし、他国がすぐに攻略できるとも思えないしな。しばらくは大丈夫だろう」


鍵を無くしたやつなんていたらずっとその先のフィールドを攻略できなくなるからな。そういう時のために一定期間が過ぎるとボスが再度ポップするはずだ。


「それもそうね。私たちを追いかけてきてた軍はみんな足留めされてたしね。あの分じゃボスが出ても無理ね」


「この鍵さえあれば実力の証明になるからな。目的は達したさ。もう帰ってお風呂入ろう」


「そうね、今日はいっぱい魔法撃って疲れたわ。帰ってお風呂でゆっくりしよっと! 」


「旦那さま! あたしも今日は一緒にお風呂入るぞ! ま、また洗ってやるから……な」


「せるちゃん一緒に主様を洗ってあげましょう! 恥ずかしがるせるちゃん可愛くて蘭は好きです」


「え……ああ……そうだな。頼むよ……」


また我慢地獄かよ……あの爆乳でまた俺を追い込むつもりだな。探知の魔法をあの爆乳に付与して報復してやる!


「し、紫音……我らもお屋形様のお背中を流した方がいいんじゃないか? 」


「……桜、焦っては駄目。もっと奥方さまたちに気に入ってもらってから」


「そ、そうなのか? しかし湯着を身に付けて背中を流すだけなのに……」


「……チッチッチッ、桜はお子ちゃま。奥方さまたちはみな全裸。湯着なんて着たら浮くだけ。やるなら私たちも全裸でやるべき」


「え!? ぜ、全裸でか!? わ、私は……恥ずかしい……」


「……ふっ……お姉ちゃんが合図するその時まで心の準備をしておくべき」


「わ、わかった……お屋形様になら……」


「……ダンジョンで既に見られてる。いまさら」


俺は紫音と桜の会話が聞こえ興奮していた。紫音と桜は他のダークエルフより忍者忍者してない! これはビーチでムフフの可能性が高くなってきた! この二人を呼び水に他のダークエルフの女の子たちも……そしてビーチで囲まれて……未来が明るくなってきた!


俺は紫音と桜や他のダークエルフの女の子たちに囲まれて、ビーチでキャッキャウフフする事を想像しながらフィリピンの門を出た。そしてゲート魔法を発動して拠点へと帰るのだった。


その日のお風呂タイムでは、蘭にまた連れてこられたセルシアが相変わらず恥ずかしがりながら爆乳を使って俺の背中を洗ってくれた。俺は元気になりつつも前から凛と夏海に口で処理をしてもらいなんとか耐え、報復とばかりにセルシアの胸を揉みピンクの突起をつまみながら紋章魔法で探知の魔法を付与した。セルシアは声を押し殺しながら顔を真っ赤にして耐えていた。そして紋章魔法で魔法陣を右胸に刻み込み終えると、旦那さまからもらった魔法……と言いながら魔法陣に手をあてて目を瞑っていた。ちょっとドキッとした。


ちょっと危なかったのでさっさとお風呂を出て、夜は凛と蘭の二人の大きな胸に挟まれながらエッチなことをいっぱいして眠りについた。途中から幻術で二人がダークエルフになったから、ついつい興奮してかなり頑張ってしまった。

ほんとよく見てるよな……


こうして俺たちはこの世界での方舟フィールドの初攻略を達成した。


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