第22話

 


 ――探索者協会横浜上級ダンジョン支店 大会議室 支店長大須賀 実――





「それで? 自衛隊の帰還者から倉木という名前は聞いているけど、彼は探索者なの? 一緒にいた女性の情報は?」


「それが女性の方は現場で『ラン』と呼ばれていたこと以外は現時点では全く情報がございません。ただ、倉木氏の方は2週間ほど前に奥多摩ダンジョン支店で探索者登録をしております。今回の映像を見てその時対応した受付の者が名前を覚えていました。彼の名は倉木 光希、国籍は日本でCランクです」


「「Cランク?」」


「ありえないだろ……」


「そうだな、Cランクでこの動きはありえない」


  横浜上級ダンジョン氾濫から3日が経過し、本部から理事長を筆頭にお偉いさんたちがやってきて俺は今対応をさせられている。


「静かに! 今は私が報告を聞いているのですよ? 」


「「「ハッ! 失礼いたしました! 」」」


  理事長が今回の氾濫の功労者の身元を調べるよう各支店に伝達し、今日俺の所に報告が来た内容を伝えたところ、幹部たちが動揺し会議室が騒然となったが理事長の一言で静まった。

  理事長はエルフだ、風精霊の谷のシルフィーナといい、歳は怖くて聞けない。近い者からは150は超えているとの情報はあるがとてもそんな婆さんには見えない。


  見た目は数多の物語に出てくるエルフ像そのままで、160センチを少し超えるぐらいの背丈に尖がった耳に透き通るような透明感のある白い肌、金糸のように美しい髪。違いと言えば胸があることくらいだろう。同僚はDに近いCカップだと服の上から目視計測したみたいだが、誰も見たことないからわからん。

  俺はそんな目で見てると思われるのが怖いから視線は常に上だ。


  理事長は40年前にダンジョンと共にこの日本に現れた異世界人の1人だ。当時異世界人は政府によってまとめられこのダンジョンの情報を吸い上げた後に彼らに住む場所を提供し、情報協力料として生活に必要なあらゆる支援をした。

  彼らは言葉も通じないよそ者の自分たちを手厚く保護してもらったことで日本国に感謝し、ダンジョンのことでできる限り協力すると約束したそうだ。

  彼らは率先してダンジョンに入り自衛隊への教練なども行なってくれた。


  しかし、彼らだけの力では世界一ダンジョンが多く出現した日本のダンジョンを全てフォローすることはできず、主要都市のダンジョンを中心に大氾濫が起こってしまった。

  そこからは世界と日本は暗黒の時代に入り多くの餓死者を出した。

  日本にいた彼ら異世界人たちは他国に出現した異世界人とも協力し探索者協会を設立した。異世界にある冒険者ギルドというのがモデルとなったそうだ。


  その初代探索者協会理事長が彼女であり、設立してから探索者協会はひたすら魔獣の氾濫を防ぐべく魔獣の間引きに終始し、上級ダンジョンでも難易度が低く自分たちと相性の良さそうなダンジョンは自衛隊と協力し攻略していった。

  彼女自身日本に2人しかいないSランク探索者で、当時の彼女のパーティは世界最強のパーティであった。

  パーティメンバーの高齢化により現在は解散しているが、政府も彼女には最大限の敬意を払っておりアメリカ、イギリス、中台連、ドイツ、インドなど他の探索者協会とも連盟を作ったことから今世界で一番影響力のある人間である。

  俺たちがガキの頃から第一線で戦っていた憧れの探索者である彼女に逆らえる者など探索者協会には存在しない。しかし、小さい頃は憧れていたが大人になるとこれほど恐ろしい上司もいないもんだなと自分の中でのエルフ像が壊れていく音を聞きながら俺は理事長の言葉を待つ。


「彼のステータス表を出してください」


「ハッ!」


  俺は協会に登録されている倉木氏のステータスを会議室の大型モニターへ映した。



 倉木 光希くらき こうき


 国籍:日本


 職種: 魔法使い


 体力:D


 魔力:B


 物攻撃:D


 魔攻撃:C


 物防御:D


 魔防御:C


 素早さ:D


 器用さ:C


 運:E


 取得魔法:中級雷魔法、初級闇魔法


「確かに辻褄が合わないステータスね…かなりレアな雷魔法の適性がある者というのもそうだけど中級魔法…映像では彼は天雷という魔法と大津波と言っていた強力な魔法を使って500以上いる魔獣を瞬殺したわ」


「なるほど、威力もそうですが彼のステータスには水魔法がありませんね」


「ええ、魔法名は術者がイメージしやすいよう皆それぞれ自由に魔法名を付けて言うけど、あれほどの大魔法の現象は余程の高ランクでない限りはそうそう変えられないわ。あの大津波は昔見た魔法に似てるから上級水魔法ね、天雷も過去の勇者様の文献に確か同じ現象の魔法があったわ、そうなると間違い無く上級か最上級魔法ね。そんな魔法を使えるのは私がいた世界でも勇者様以外記録は無いわ」


「そうなりますと彼は理事長がおられた世界の勇者である可能性があると?」


「いいえ、残念ながら彼の名前は過去私がいた世界のどの勇者様の名前とも違うわ。ただ勇者様並の実力があると考えたならこのステータスは上級闇魔法の『偽装』をアレンジして使ってるかもしれないわね。本来は自身の見た目や声などを変える魔法なのを魔力とイメージで自分のステータスを改変するようにして使った可能性が高いわ」


「「そんなことができるのですか!?」」


「鑑定の羊皮紙まで騙せるものなのか…」


「闇魔法に関して言えば可能性はあるわ。闇魔法は魔法数が多く上級になるとどんな魔法があるか記録が少ないのよ。魔法効果も覚えた時の認識が人によって違うから、闇魔法は術者のイメージ次第で改変しやすいと以前に中級の闇魔法使いに聞いたことがあるわ」


「闇魔法がそういった特性を持っていたとは…確かにステータスを偽装しているのは上級水魔法と雷魔法を使ったことで間違いなさそうですね、魔道具ではあれほどの大魔法は無理でしょうし」


  俺は理事長の言葉に気になっていたステータスに無い魔法を使ったことについての謎が解けたのだった。しかし闇魔法の応用性には驚いた。彼らはいったい何者なのか…他国のエージェントにしては目立ち過ぎている。勇者と言われた方がまだ納得できる。


「そうね、ステータスを偽装してるのは間違い無いわ、後は何故そうしたのかというのは彼の正体と関係あるのでしょう。私が彼に直接聞いてみるわ」


「理事長がですか? 危険ではないのですか?」


「彼はこの横浜上級ダンジョン氾濫阻止の功労者よ? ダンジョンに取り残され彼に助けられた自衛隊員の話では、知り合いの探索者が24階に取り残されたからという理由で単身助けに行ったそうじゃない。しかも自衛隊の子を地上に送ってから直ぐに今回の氾濫の原因を探り当て、原因と思われる知能の高いダンジョンボスである吸血鬼を倒しにまた降りていったらしいわ。そんな人が危険人物かしら? 私には物語に出てくる勇者様そっくりの行動にしか見えないわ」


「た、確かに……」


「私は高確率で彼はダンジョンを攻略して出てくると思うわ。問題はその後よ、資源省の強欲役人が出世の道具にダンジョンコアを狙う前にこちらに譲ってもらい、協会から政府に渡せるよう交渉することと彼が日本から出ていかないよう協力を仰ぐ必要があるわ」


「資源省ですか…今の日本の繁栄は自分たちのお陰だと勘違いしている奴らですからね。国の生命線を握っている組織が欲に走るとこれほど厄介な物になるとは…もしダンジョンを攻略したとなると奴らには知られてはまずいですね。しかしダンジョン攻略など一緒に行った元々ダンジョンに取り残された2人は除外するとして、実質2人でできるものなのでしょうか? 」


「そうなの。厄介な奴らなのよ。昔は友好関係だったんだけどね、世代が変わり組織が大きくなったら途端に傲慢になって資源大臣も強く言えないみたいなのよね。今の政権は頑張ってはいる方なんだけど……ダンジョン攻略はこの横浜上級ダンジョンであれば私が昔組んでいたパーティのフルメンバー8人でなら可能ね。恐らく私の仲間に犠牲者は出ると思うけど。ただ彼の行動はどれを取っても自信に満ち溢れてるのよ、この程度のダンジョン簡単に攻略できると言わんばかりの。それにダンジョン入口の結界魔法も彼が張ったものだと助けられた自衛隊の子が言ってたわ。上級以上の結界魔法なんですって、やっぱりなんか簡単に攻略してきそうなのよね」


「あの全盛期の理事長のパーティでも犠牲者が出るほどとは……」


「それに自衛隊の子が言っていた、倉木さんが助けに行った知り合いの探索者である多田 夏海さんて子が瀕死の時に倉木さんからエリクサーをもらい、重傷の身体も4年前に欠損した右眼もその時に負った額の大きな傷も全て元通りになったらしいわ。これも確認したいわね」


「な、なんと!」


「エリクサーですと!? 」


「あの最上級ポーションと言われるあの」


「実在してたのか! 」

 

  なんてことだ、エリクサーが実在していたなんて…あの死んでいなければどんな病も怪我も過去の欠損も全て治ると言われているエリクサーが実在していたとは。


「エリクサーは私がいた世界でも過去に実在していたわ。まあそれも全て勇者様が手に入れたものですけどね、でも今は何を言っても彼が出てこないことにはどうしようもないわね」


「確かにそうですね……」


  「とにかく彼が出てくるまで私はしばらく横浜に滞在するから、出てきたら私の所へ来てもらえるようにして。そしてダンジョンが攻略されたら必ず入口で淡く発光している光が消えるわ、絶対に見逃さないでね? それと彼は最大の功労者だからね? くれぐれも丁重に扱って絶対に敵対しないように」


「ハッ! ダンジョン攻略の兆候を常時確認し、彼がダンジョンより出てきましたら理事長のもとにお連れします」


  俺は彼がダンジョンから出てくるまでここの支店にずっといることになった理事長に対し仕事しにくくなるな、彼が出てきたら何としてでも理事長の所へ連れていかないといけないな、断られたらどうしたものかなどと考え憂鬱となるのだった。






 ――横浜上級ダンジョン40階層中層ボス部屋 倉木(佐藤) 光希――





「お嬢様、オークキングは私が! フォローお願いします!……『踊れ水鳥!』 」


『炎壁』


「クッ……『水刃』! ハァッ!……オークキングクリア! 」


「夏海さん、中央オーガキングやります!『炎槍』」


「お嬢様、右オーククィーンは私が! 」


  俺たちは40階層にある中層ボス部屋に来ている。25層で装備を2人に渡してからは所々で戦い方や魔力の使い方を教えながら全て彼女2人に魔獣は処理してもらっている。そろそろ体力的に厳しいかなと思ったが、中層ボスを倒したいと言われたので後ろから見守りながら戦闘を見ているところだ。

  中層ボス部屋にはオーガキングを中央に左右にオークキング、オーククィーン。その他オーガが5体いた。

  部屋に入って早々にオーガ5体は処理しオークキングを倒したところだ。


「夏海さん、オーガキングへ!『炎壁』『炎槍』」


「オーククィーンクリア! オーガキング行きます! ハアアアア! 『黒月涙斬り』 」


「グガァァァァァ!! 」


「よしっ! 」


「やったわ夏海さん! 」


「お嬢様お疲れ様でした」


「まさか2人で中層ボス倒せるなんて凄いわ! 光希さんのおかげよ! 」


「その通りですね、この刀は凄い! 」


  蘭が夏海を心配そうに見ているが無視だ。夏海は厨二病じゃないアレは天然だ。

 

  中層ボスを倒せて喜んでいる2人を尻目に、俺はバレないように撮ってた動画撮影をやめ携帯をアイテムボックスへしまった。


  え? なんで撮影してるのかって? いや〜この間蘭とカラオケ行った時にあまりに蘭のダンスが可愛かったから記念に撮影したのをM-tubeって世界の動画サイトに載せたらさ、そりゃもうもの凄い反響が来たんだよ。チャンネル登録数が4日で確か50万はいってたと思う。そうなると俺も期待に応えなきゃと蘭の戦闘シーンを撮影してたら、今度は美女2人も戦うとか言うからこれは新たなアイドル誕生って感じで視聴者も喜ぶだろうと撮ってたわけよ。帰ったら投稿するのが楽しみだ。


「いやいや夏海の刀術が凄いんだよ、刀を持ってから動きが全然違うし身体強化も魔力の使い方がどんどん良くなってる。凛もちゃんと前に出るの我慢してよくサポートと攻撃できてたよ、お疲れ様」


「光希様に褒められた……」


「ありがとう光希さん。夏海さんを信じて我慢して、後ろで夏海さんの動きをよく見れたからかもしれないわ」


「そうだな、魔法使いは前衛を信じないとな。さて、宝箱には何が入ってる? 」


「あ、そうだ! 開けてみるわ……中級ポーション6つに中級土魔法書、初級鑑定の魔法書ね。これかなり良くない?」


「まあ中層にしては良いね」


「お嬢様かなり良い方ですよ。初級魔法書2つだけということがありましたし」


「魔道具なんて滅多に出ないしね、魔法書は特に属性のある魔獣が出ないダンジョンは4属性のどれかと鑑定魔法がランダムだからね。上級魔法書も下層の宝箱かボスからかな」


「そうなのね。でもアイテムよりも倒せたのが嬉しいの! 光希さんと蘭さんが後ろにいる安心感たら無かったわ」


「確かにそうですね、本当に2人だけだったら厳しかったかもしれません」


「そんなことないですよ、お二人でも十分倒せたと蘭は思います」


「そうだよな、安定してたしな。さあもう遅いし下に降りて野営しよう」


「そうね!お風呂お風呂♪ 蘭ちゃん今日も一緒にはいろ〜」


「はい凛さん」


「お嬢様ったら魔道具テントのお風呂が相当気に入ったみたいですね」


「私初めてかもしれない、ダンジョンの野営が楽しみなのって」


「ふふふ……お嬢様、私もです」


  なんだかご機嫌な2人を連れ41階層に降り適当な小部屋で俺たちはテントを張るのだった。





  41階層で野営をし、実は料理が得意な凛と夏海の手料理を皆で食べ、お風呂では蘭に色々処理してもらって翌日、41階層からトロールなどが出てきたので全員で戦闘を行うようにし、50階層からはハイオーガとトロールが60層からはハイオーガに吸血トロールが出てきたのを倒しつつ70層まで降りてきた。ここからは普通の鬼系ダンジョンと様子が違っていた。


「あーこりゃ凛や夏海にはキツイか?」


「だ、大丈夫よ……」


「やれます!」


「吸血鬼に血を吸われて眷属になった元探索者相手でも? 」


「……やるわ!」


「できます! 」


「わかったよ、右の2体は俺が処理する。もう2体の足も俺が止める。倒したと思っても再生するからちゃんと燃やすんだよ? 駄目そうなら言えよ? 別に恥ずかしいことじゃない。俺は初めての時は吐きまくったよ」


「うん……ありがとう」


「光希様……」


「よし、行っておいでサポートはするから何も考えず攻撃すればいい。蘭は吸血トロールを! 」


「「「はいっ! 」」」


  70層に降りてから吸血トロールに加え、吸血鬼の眷属にされた異世界の冒険者や日本の探索者が4体現れた。人を殺したことの無い2人は嫌な顔をしている。肌が青白いだけでゾンビより人間ぽいからね。普通の人間相手よりはマシだけど良い練習になるんじゃないかな。さすがに吸血鬼の眷属になった冒険者は、生前よりパワーアップしてるのでサポートする。


『人間だ! 女だ!』


「血だ! 女の血だ!」


「四肢を切り取りマスターのもとへ連れていこう」


『マスターの命令だ。女は殺すな』



「凛! 夏海! いくぞ!『影縛り』」


『闇炎』


「ギャーーー! 」


  俺はなにやらブツブツ言ってる吸血鬼の眷属たちの足を影縛りで拘束し、右の2体に中級闇魔法の闇炎を放った。足元から天井へ勢いよく吹き出す黒い炎に2体は焼かれチリとなった。


「ハァァァ……ハッ!」


「ぐああ!」


「……クッ『炎槍』『炎壁』」


「ギャーーー! 痛い! 熱い!」


『豪炎』


「ギ……グヴァァァ」


  剣で影縛りを一生懸命斬っていた吸血鬼の眷属を相手に夏海が突っ込んでいき首を刈り、凛がもう一体の胸に炎槍を放った後2体まとめて焼却した。同時に蘭が吸血トロールを容赦なく焼き殺した。しかしよく喋る奴らだ。


  4体いた眷属たちは倒れ焼かれ魔石を残していった。元人間でも吸血鬼の眷属になれば魔獣と同じ。それだけが救いだったのかもしれない。


「お疲れ様、大丈夫か? おっと」


「うん」


「はい」


「魔石が残ってるだろ? アイツらは魔獣と同じだからさ、言葉を覚えたゴブリンみたいなもんだよ」


「「うん」」


「蘭もお疲れ様」


「主様もお疲れ様でした」


  俺が近付いて労いの言葉を言うと2人は俺の胸に抱きついてきた。やっぱちょっとキツかったのかもな。

  今日もいい時間だし休むかな。


「よしっ! こういう敵はまだ若いこのダンジョンでは少ないと思うからさ、今日はもう休もうそうしよう」


「うん」


「はい」


  この後適当な部屋を見つけテントを出し俺たちはテントに入り、今日は蘭が作ったご飯を食べるのだった。


  少し元気の無い2人だったけど、お風呂から出たらいつも通りだったので大丈夫だろうと思い俺も風呂に入り、今日は軽く蘭に色々してもらってからいつもより早めに出た。

  ベッドに入ろうとしたら今日は蘭が凛と夏海の部屋で寝ると言ってきたので、心配なんだなと思いそうしてあげなと言って送り出した。


「久々の独り寝か……いつも蘭がいたから少し寂しいな。まあこんな日もあるか……寝よ」


  久々の独り寝に少し寂しさを覚えながらとっとと寝ようと眠りについた。少しすると部屋の扉が開いた気配がした。蘭が戻ってきたのかなと思い俺の布団に入りやすいように布団を少し持ち上げたら左右から入ってきた。ん? 左右?


「え? 蘭? あれ? 凛に夏海?」


「えへっ! 今日は一緒に寝ていい?」


「きょ、今日だけいいでしょうか? きょ、今日だけですので」


「ええ!?……いいよ、おいで」


「やったー♪」


「し、失礼しまふ」


  最初はびっくりして次に少しエロいこと考えた。けど今日のことを思い出してここは黙って抱き枕になるしかないなと、抵抗したら駄目なパターンだなとなるべく優しい言葉で2人をベッドに入れた。

  俺に抱きついてくる凛と夏海は間違いなくノーブラで胸の弾力と感触が薄いネグリジェを通してほぼダイレクトに伝わってきたがなんとか意識しないようにし、俺に恐る恐る手を回す夏海の初々しさも見なかったことにして俺は2人が眠るまで2人の頭を撫でていた。


「ねえ、光希さん」


「ん? まだ起きてたのか?」


「わ、私もお、起きてます」


  2人の頭を撫でていたら左側で俺に抱きついていた凛が眠れないのか話しかけてきたと思ったら、右側の夏海も何か話したげに声を掛けてきた。


「どうしたんだ2人とも眠れないのか?」


「ううんそうじゃなくてあのね、その…」


「こ、光希様……あのその……」


「あ、頭撫でられるの嫌だった?」


「ううん嫌じゃない! 撫でて!」


「い、嫌じゃないです嬉しいです」


「そ、そう?」


  な、なんだ? 俺の胸板に押し当ててる2人の胸から、もの凄い熱と早い鼓動を感じる。こ、これはもしかして……


  いや待て俺! そんな相手の思わせ振りな態度に何度勘違いした? そして何度殺されそうになった? 闇ギルドの刺客に貴族の刺客! さらに魔王からの刺客! サキュバスに足腰立たなくなるまで散々搾り取られてからの暗殺を忘れるな! 俺はアトランで普通の女性には噂のせいで避けられてたじゃないか! ハーレムなんて夢だと、蘭が望む複数婚で群れを大きくするなんて俺にはできないと何度思い知った? もう35だオッさんだ! 19才と実質21才の美女2人が俺なんか相手にするわけないだろ! 助けてもらった恩を感じて俺を純粋に慕ってくれてるだけだ、今だってお父さん的な感じで甘えてるに過ぎない勘違いするな!


  よし、冷静になれた。



「光希さん……あの……」


「光希様わ、私は……」


「ん? 何か言いたいことがあるのかな?」


「うん、わ、私…優しい光希さんが好き。恋人にしてほしい」


「わ、私も勇敢で慈悲深く私の心を救ってくれた貴方がす、好きです。貴方のものになりたい」


  は? え? なにこれ? え? え?


  キターーーー!!


  マジで? 俺でいいの? ここはアトランじゃない刺客じゃない、なら本気?

  え? こんな優しくて素直で綺麗で若い2人が? こ、これがモテ期? でも蘭がいるのになんで?


「俺も他人を思いやる優しい心を持った2人が好きだよ」


「え? ホントに? やったーーー! 大好き!」


「光希様……嬉しい……好きです」


  俺も自分の気持ちを素直に伝えると、凛は俺に抱きついている腕にギュッと力を入れ俺の胸に顔をうずめて喜び、夏海は俺に更に身を寄せて俺の右手をそっと握った。


「でも蘭がいるのに本当に俺でいいの?」


「いいに決まってるじゃない、蘭ちゃんがいる貴方を好きになったんだから。こんなに好きなんだからこの気持ちは本物よ。こんなの生まれて初めてなの」


「光希様に何人想い人がいても関係ありません。私が貴方に私の全てを捧げたいのです」


「ありがとう。蘭の存在を認めてくれるなら俺は2人を平等に愛することができる。こんな俺を好きになってくれてありがとう。2人とも大切にすると誓うよ」


「光希……んっ……」


「嬉しい……うっ……うっ……」


「ほら夏海泣かないで。その綺麗な顔をこっちに見せて」


「うっ……綺麗だなんてそんな……んっ」


  俺は蘭の存在を認めた上で、こんな俺を好きだと言ってくれる2人を大切にする事を誓った。

  そして俺の胸の位置から上目遣いで見る凛と見つめ合い、お互いの唇を重ね合わせた。

  凛とキスをしてると夏海が嬉し泣きしていたのでそれがとても愛しく感じ、夏海に顔を上げてもらい優しくキスをした。


「初めてのキスしちゃった……好き……あっ……」


「私も……はじめて……好きです……あっ」


「うっ……」


  2人とのキスが終わり一呼吸ついた時に凛と夏海が嬉しかったのか、今まで上半身だけ抱きついていたのが俺の両足に2人がそれぞれ足を絡めてきて、俺の股間にそれぞれの足があたり俺も思わずうめいてしまった。


「ご、ごめんなさい」


「あ、あ、失礼しました」


「いや大丈夫だよ。ははは、こんなに綺麗な2人に抱きつかれてキスまでして少し興奮しちゃって……いや恥ずかしいな」


「こんなになってるのに私たちのためにずっと……」


「いつも私たちのことを第一に……自分は我慢して……」


「あはは恥ずかしいな、我慢というか今日は辛かっただろ? そんな時は誰かに甘えたいもんなんだ。俺なんかの胸を必要として来てくれたんだ。安心して眠りにつくまで頭を撫でてあげるくらい彼氏の役目だろ? だから我慢とかじゃないんだ別に辛くはないよ」


「もうっ! またそんな優しいこと言って! どれだけ惚れさせるのよ! 彼氏なら……あ、貴方のものになったって私を安心させてよ……」


「光希様優しすぎます。わ、私も……私の全て受け取ってほしいです」


「わかった、凛……夏海……大切にするよ」


「うん、大切にして……わ、わたしは、はじめてだから……んっ……あんっ……んっんっ……」


俺は彼女達の言葉に我慢をするのをやめた。俺は凛に覆い被さり強く激しく唇を重ね合わせ凛の口内に舌を差し込み、そこで待ち受けていた凛の可愛い舌と絡み合わせた。

そして仰向けに寝ても大きさの変わらないその胸に手を揉みしだいた。

凛の胸は手が吸い込まれるように柔らかく、張りがありたまらずネグリジェの中に手を差し込み直に揉みしだいた。


「んっ……ふぅっ……んっ……ああっ! 乳首をそんな……つまんじゃ……んっ……」


俺が凛の大きな胸の中央にある乳首を摘むと、凛は絡めていた舌を硬直させた。

俺はそんな凛の声にさらに興奮し、ゆっくり優しくネグリジェとショーツを脱がせ凛の大事な部分に手を伸ばした。

そこは既にびしょびしょで、薄い繁みがもう無いかのような感触だった。


「あっ……そ、そこは……は、恥ずかしい……やっ、指……あっ……」


俺は舌も使い入念に準備をしてから凛の脚を開き、何度も痙攣して頭が真っ白になっている凛と初めて愛し合った。



愛し合ったあと、あまりの痛さに疲れたのか凛は終わってからキスしている間に力尽きた。そのまま眠りについた裸の凛を隣のベッドにお姫様抱っこで移し、布団を掛けて寝かせた。

ずっと隣で俺と凛を見ていた夏海は顔を真っ赤にさせて、でも期待するような目で俺を見つめていた。


「夏海……大切にするから夏海の全部を俺に」


「あ、あ……はい!全て捧げます。あ、んっんっ……んー……ぷはっ……あっ……」


俺は夏海に覆い被さり凛と同じように激しいキスをした。夏海は凛と違い俺の差し出した舌に自ら激しく舌を絡めてきた。おれは濃いキスをしながら夏海の形の良い胸をネグリジェの中に手を入れ揉みしだいた。


夏海の胸は大きくもなく小さくも無く、ただ俺の手にピッタリ収まる丁度良い大きさで、やや上を向いて鍛えているからか凄く弾力があって揉んでいて気持ち良かった。俺は凛と同じく桜色の乳首を摘みながら、夏海のネグリジェとショーツを脱がした。


そして夏海の大事なところも手と舌で入念に準備をし、お互いの肌を重ね合わせた。


お互い愛を確かめ合った後は、軽くキスをして夏海の頭を撫でた。

夏海は凛ほど痛くは無かったようだが、それでもやはり痛そうな顔だったので凛と同じくお姫様抱っこをして隣のベッドに寝かせ、2人の間に入り俺も眠りにつくのだった。


ああ……綺麗な女の子を2人も……凄い幸せだったよ。


遠い並行世界の母さん、俺……リア充してます。


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