6話





「ダーリンこっちこっち♪」


「あははは待て〜食べちゃうぞ〜」


「きゃー!ダーリンに美味しく食べられちゃう♪」


「あはははもう逃がさないぞ〜」


「あっ!ダメ動けないのに水着の中に手はダメだってば…そ、そんなとこ触っちゃ…えっち」


「凛のこのメロンは最高だなぁ気持ちいいなぁ」


セルシアとの一件から数日が経過して俺たちは相変わらず浜辺でイチャイチャしていた。

今日は目隠しをした俺と恋人達の鬼ごっこをしている。鬼に捕まった子は1分間何をされてもじっとしていなければいけないと言う俺得ルールだ。もちろん探知全開で彼女達の居場所は分かっている。

なんだかお殿様のやるよいではないかよいではないか〜と女の子に迫るのを地でやってるみたいで楽しい。


俺は夏海、蘭、凛と順番に捕まえて行きキスをしたり胸を揉んだりお尻を撫で回したり好き放題やった。

ああ〜幸せだ!


誤解のないように言わせてもらうが俺達も毎日遊んでいる訳では無い。

身体や勘が鈍らないように沖縄本島の上級ダンジョンへ潜ったりもしている。

迷宮タイプなので殆ど宝探し感覚だけど。俺の探知があれば罠や宝箱がある部屋や隠し部屋など分かるから迷宮タイプは俺と相性が良いんだ。


今のところ中層にしては良い戦利品が手に入っていて、上級ポーションや中級風魔法書、中級火魔法書、中級鑑定魔法書を手に入れた。モンスターハウスから出る宝箱が結構当たりが多いんだ。

モンスターハウスは俺が結界を張り凛が部屋に豪炎を数回撃ってお終いという流れ作業で殲滅して行った。


このダンジョンには米軍や自衛隊もいるんだけど、最初米兵とダンジョンで会った時は以前暴れた事もあり避けられたりしたが、ダンジョン探索途中に複数の魔獣に囲まれ苦戦している米兵パーティを助けたり、大怪我をしてポーションを切らしている米兵に中級ポーションをあげたり外に出てからはお礼にとご飯を奢ってもらったりと仲良くなった。その米兵の頼みで米軍の基地に行き手に入れた魔法書を売ってあげてかなり感謝されたりと色々あった。

ちなみに通訳は凛だ、俺はまだ勉強中で早口で喋られると全く分からないから凛と米軍の通訳を通して隊長らしき人とは話した。


一通り勘を取り戻した俺達はそのまま繁華街に行ってカラオケで蘭と凛と夏海ユニットのダンスを見てムラムラしながら撮影したり、高級ブティックホテルに入ってみたりした。まあつまりラブホだ、毎日新しい知識をネットから得ている蘭が前から気になっていたらしく凛と夏海も当然入った事が無いから入ってみたいという事になり幻術を掛けて2人づつ隣同士の部屋を取り入ってみたりもした。

中はとてもオシャレで目的を考えるとここまで必要かと俺は思ったが、恋人達は丸見えのバスルームにきゃあきゃあと大騒ぎで俺も実際どんな風に見えるのか見てみたくなり3人にお願いをしてシャワーを浴びてもらった。

いつも一緒に入っていたから気付かなかったが、見る方がこんなに興奮するとは思わず我慢できず浴室に乱入し恋人達と時間いっぱいまでこのホテルの本来の目的を果たしたりした。

そんな新鮮な体験をしたりしてから離島のホテルに戻ってからは俺は日課のように自衛隊に卸す魔道具をせっせと作り、蘭は俺の手伝いに凛と夏海はそれぞれ思い思いの時間を過ごしていたらあっという間に時間が過ぎていった。


「ダーリンもう満足した?次はみんなでビーチバレーしよっ!」


「ああ、いいね。アレはいい…揺れるのが…いい…やろう!」


「おーい!蘭ちゃんお姉ちゃんビーチバレーやるよー!」


「あら楽しそうですね、凛ちゃん今行きます」


「凛ちゃん今行くわ」


嗚呼…毎日毎日こんなに美女に囲まれて俺はこんなにエロイ日々を送れて幸せだなぁ








ーー鹿児島県 旧霧島市 陸上自衛隊 国分基地 風精霊の谷のシルフィーナーー




「それでは冒険者達は半島から島へと繋がる南東の桜島口から島の西側の春田山へ向かっているという事ですね」


「ええそうです。桜口の警戒任務についていた隊員が止めたのですが多くの探索者や冒険者を止めきれず突破されてしまいました」


「私共連合の高ランク冒険者が中心に200名もの探索者や冒険者がいては止める事は難しかったと思います。管理が行き届かず申し訳ありません」


「いえ、お恥ずかしい話ですが隊員の者も本気で止めたのかどうかも怪しいものです。竜達によって奪われた我々の故郷を取り戻すと200名もの探索者や冒険者に言われて果たして…」


「悲願…ですものね」


「ええ、竜達の存在がある事から南九州に住んでいた住人達はその殆どが北へ追いやられてしまいました。生まれ故郷を取り戻したいと強く思う者が多く、協会が禁止しても毎年竜討伐に現れる者は後を絶たなかったのが現状です。これまでは桜島への侵入を防いで参りましたが今回は過去最大のレイドで隊員の中にに期待する者がいなかったとは言い切れません」


「毎年侵入を試みる者が…そうですか…」


私はセルシアを連れ桜島から鹿児島湾を挟んで北東に位置する旧霧島市にある自衛隊国分基地へ来て指揮官から桜島へ侵入した冒険者達の動向を確認し今後の計画を立てていた。

南九州はこの国分基地が最前線となり桜島の竜達の動向を常に監視していて、竜が島から出れば航空自衛隊と協力し命懸けで熊本への北進を防ぐのがここの部隊の役目となり、ダンジョン攻略連隊を除けば通常任務に就いている自衛隊の中で一番死亡率が高い部隊で殆どの隊員が南九州出身者やその家族となる。


竜達が桜島に住み着いてから40年…鹿児島県と宮崎県それに本州に近い離島の人々は政府の支援のもと移住を余儀なくされ平地には大量の牛や豚が放牧されており繁殖期に備えている。

衛星写真で見る祖先から引き継いだ土地や家が竜達に荒らされていくのをずっと何もできず見てきた南九州出身者の心情は計り知れない。

そこに飛竜を狩る実力ある冒険者達が現れれば期待してしまうのも仕方がないのかもしれない。


「シルフィーナさんは本当にお二人で桜島へ?」


「ええ、これ以上の人員はドラゴンを刺激するだけでしょうしSランクの私達二人でなんとか冒険者達を連れ戻したいと考えてます。万が一の時は島から竜達を出さない事を優先し命懸けで飛竜達を殲滅します」


「シルフィーナさん…貴女はこの日本に、いえ世界に必要な方です。どうかご自身の命を優先して頂きたい。飛竜は我々が必ず食い止めます、ここにいる者は全員既に遺書を書き命を捨てる覚悟を持っております。どうかお一人で全てを抱え込まないでください。我々を信じてください」


「連隊長…ありがとうございます。出来る限り冒険者を連れ撤退する事を第一に考えます。私達の力が及ばず万が一の時はお願い致します」


「了解しました。飛竜のいる春田山は昔桜島の火山活動を観測する為に掘られたトンネルがあります。万が一の時はそこに潜み救援を待ってください。飛竜が動きの鈍る深夜に海から救援に向かいます」


「はい、ありがとうございます。では私達は責任を果たして参ります」


私がこの国に必要だと言ってくれた連隊長に別れを告げ元教え子達と再会を喜んでいるセルシアを連れて私達は自衛隊が用意してくれた車両に乗り桜島口へと向かった。

私はこれで最後になるかもしれないと光希様に勇気を出してメールを送りでも返事が怖くて電源を切った。

私は彼の顔や声を思い出しそっと涙するのだった。




桜島口に着いた私達は車両をそのまま借り桜島の外周にある国道を走り春田山まで向かった。

しばらく走ると遠くに多くの飛竜達が固まって飛んでいるのが見え、そこが戦場なのだと間に合わなかったのだと私達はお互い顔を見合わせた。


「シル…」


「ええ、どうやら春田山に辿り着く前に飛竜に見つかったようね」


「タイミングも悪ければ運も悪い奴らだな」


「そうかしら?私達が来たんだから運が良いんじゃない?」


「あははは!そうだな!全滅する前にあたし達が来たんだアイツらは運がいい」


「もう見つかっても問題無いから急ぐわよ!」


「うっし!半竜化完了!突っ込めーーー!」


「行くわよー!振り落とされないでね!」


この凸凹でそこら中に障害物がある道を私はアクセルを全開にして走った。

途中森に侵食され進めなくなった所で車を乗り捨てセルシアに抱えられながら飛び森の木々より少し低い高さで移動し見えた先には……


「火弾来るぞ!避けろ!」


『アースウォール』 『氷壁』


「「ぎゃぁぁぁぁぁ」」


「真一!数が多過ぎる!森も焼けて逃げ場が無い!」


「なら前に出て戦え!涼子!魔法部隊は初級でもいい!正面の敵に斉射!弓隊は顔を狙い動きを鈍らせろ!」


「分かった!みんな!あの一頭を集中攻撃!魔力障壁破るよ!」


『ウォーターカッター』 『火矢』 『風刃』 『ファイアーボール』『土弾』


「堕ちた!うおおおおおおりゃあ! よっし一匹!」


「真一側面から火弾来るぞ!」


「『炎壁』 『エアウォール』


「「ぎゃぁぁぁぁぁ」」


「クッソ!半包囲されたか後ろは焼けた森…進むしか無い!我々の土地を取り戻せ!」


「「「うおぉぉぉぉぉ」」」


私達が戦場に辿り着くと森を抜けてすぐの平地で冒険者達が戦っていた。そこには多くの倒れた冒険者や探索者達がおりそれを守るかのように大剣を持った中年に差し掛かろうかという身体の大きな男が指示を出しながら戦っていた。

後方の森は飛竜の火弾で焼えており冒険者達は退くこともできず頭上から襲いかかる20匹近くの飛竜の襲撃を受けていた。

私はまず後方を塞ぐ火を消す事を優先した。


「シルフ!目の前の火を吹き消して!」


私が風の上位精霊シルフを呼び魔力を込めて指示をすると、前方に銀色の長い髪を後ろに流し私と同じく耳が長いスレンダーな女性の姿の半透明の精霊が現れその腕を大きく横に振った。

シルフが腕を振った瞬間に周囲の木々が大きくしなる程の突風が吹き荒れ木々を燃やしていた炎が一瞬で吹き消えた。


「セルシア先に行って!……シルフ!お願い!」


「あいよ!」


私は空中でセルシアに手を離してもらいシルフにお願いしてマントをはためかせながらゆっくりと着地し大剣を持つ大男へと近付きながら空中で戦うセルシアの援護を行なった。


「シルフよ飛竜に突風を!体勢を崩させて火弾を撃たせないで!」


「シルナイス!うりゃぁぁ『竜撃』 次っ!」


「なっ!?火が消えた!ゲッ!り、理事長にセルシアさん!やべっ!」


「高杉!いい歳して何を勝手な事をしてるのですか!多くの冒険者や探索者を巻き込んで!飛竜討伐は禁止しているはずです!」


「グハッ…り、理事長待ってくれ!今戦闘中だから!説教は後で聞く今は」


「…あとで覚えてなさいよ!このポーチにポーションが入ってます。貴方は皆をまとめ一旦森へ退きなさい!言うこと聞かないなら吹き飛ばしますよ?」


「い、イエスマム!お、おいっ!一旦退くぞ!負傷者を運べ!天草も聖魔法を使え!」


「理事長が来てしまいましたか…分かりました私は後方で治療します」


私はAランク冒険者パーティ《竜滅の剣》リーダーの高杉真一を殴り飛ばし文句を言った後に彼らを下がらせ撤退の時間を稼ぐ事にした。


「セルシア行くわよ!シルフ!風の刃で上空の飛竜を切り刻んで!『シルフの暴刃』」


私は上空にいる飛竜と戦っているセルシアに声を掛け広範囲精霊魔法を発動し頭上に未だ10数匹いる飛竜目掛けて放った。


「「「「ギャギャギャッ!」」」」


私がイメージをし解き放った精霊魔法は大きな竜巻を起こし、それに呑み込まれた飛竜達の魔法障壁を破壊しその赤黒い鱗に覆われた体と翼を切り刻んだ。


「ハァハァ…流石に数が多くて落とすまではいかないわね…セルシア!」


「あいよ!『竜撃破』『竜爪』」


竜巻の刃に切り刻まれたはずの飛竜達は、身体中から血を流しながらも落ちる事なくフラつきながらも空中に存在していた。私は追撃をセルシアに頼み失った魔力の補充に光希様から頂いた上級魔力回復促進剤を飲んだ。

やっぱり数が問題ね、5匹位なら確実に落とせたのに…

セルシアは追撃をし3匹までは落とせたが私の攻撃から体勢を持ち直した飛竜達に囲まれ火弾や爪、噛みつき攻撃を避けるのに精一杯となっている。

ここは一旦トンネルまで撤退して夜を待つしかないわね。

私は負傷者も抱え移動は厳しいとは思ったがこのままこの森にいれば焼き殺されるだけと思い北西にある観測用トンネルまでの撤退を決めた。


「高杉!北西の観測用トンネルは知ってるわね!一旦そこへ撤退しなさい!」


「断る!俺たちはここのドラゴンと飛竜を討伐しに来たんだ!奪われた土地を取り戻す為に!」


「何言ってるの!この飛竜の数が分からないのですか?貴方だけじゃなくて仲間も他の探索者も死にますよ!」


「そんな事は最初から覚悟の上だ!例え討伐できずとも確実に飛竜の数は減らす!そして次へ繋ぐ!俺達の親父達がそうして来たように!俺達は竜の脅威を世間に知らしめなければいけない!繁殖期に生贄を用意し飛竜の数を増やしている現実から目を逸らしている政府と対岸の火事のように見ている人々に見せなければいけない!南九州には竜がいると!次はお前達の土地に来ると!それを防ぐ為に奪われた土地を取り戻す為に戦っている者達がいるのだと!」


「「「そうだ!俺達は退かない!飛竜を一匹残らず駆逐する!」」」


「私のお父さんもこの島で戦い命を落としたわ!故郷を取り返す為に!次は私達の番!私達の子供達に繋ぐ為に!」


「俺達南九州人は決して土地を奪われたまま諦めたりはしない!遠い昔からご先祖様が守って来たこの土地をたかがトカゲに奪われたままにはしない!俺達が死んでもこれから何年経とうとも必ず奪い返す!それが南九州人だ!」


「「「そうだ!俺達はトカゲ如きには負けない!」」」


「貴方達……クッ…シルフよみんなを守って!『風の障壁』」


「火弾が来るぞ!壁を!」


『アースウォール』 『炎壁』 『エアウォール』 『氷壁』


私がこのレイドのリーダーである高杉に撤退をするように言うと強い反発が返って来た。

南九州の人達の覚悟がこれ程のものとは…私はその命を賭した覚悟に何も言えなかった。そうしている間にセルシアが飛竜の尾に弾き飛ばされその隙に飛竜達から放たれた複数の火弾が私達へと向かって来た。

私とレイドの魔法使いにより防がれた火弾はそれでも周囲の森を焼き退路を完全に絶ってしまった。


「理事長!貴女は桜島を忘れていなかった、冒険者連合を作ってくれた!俺たちは嬉しかったんだ、この俺たちの故郷南九州を貴女なら取り戻してくれると俺達は信じる事ができた!だから貴女達は撤退してくれ!そして俺達が散ったならいつか必ずこの南九州を取り返してくれ!」


「何を言ってるんですか!これからよ!これから冒険者連合を皆で育てて桜島のドラゴンと日本中の上級ダンジョンを攻略する道筋が見えてきたのにここで貴方達のような優秀な冒険者を失う訳にはいかないのです!私はSランク冒険者 風精霊の谷のシルフィーナ!仲間を見捨てて逃げる程弱くははありません!」


「「「「理事長…」」」」


「先陣は私とセルシアが切ります!付いて来なさい!Sランクの戦いを見せてあげます!」


「「「「「お、おおおおおおおおおお!」」」」」


「理事長あんた最高だ!」


「理事長付いて行きます!」


「取り戻すぞ!俺達の土地を!理事長とセルシアさんと共に!」


私は彼等の説得を諦め共に戦う事を選択した。同じ冒険者として仲間を見捨てる訳にはいかない、一匹でも多く飛竜を狩る!急がないと…不測の事態が起こる前に…


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」


「シル!ごめん!死角から吹き飛ばされた!」


「いいのよセルシア!一人で戦わせてごめんなさい、これから反攻するわよ!」


「分かった!あたしはとにかく叩き落す!」


「左側面の3頭をお願い!私は正面の10頭を落とすわ!……シルフ!その精霊の力で飛竜達を地上へ押し潰して!『シルフの鉄槌』」


「すげー!今だ!地上に落ちた飛竜を狩れ!魔法部隊斉射!剣士は突撃!」


「「「「「おおおおーーー!!」」」」」


『炎槍』 『トルネードカッター』 『土槍』 『竜巻刃』 『氷槍』 『アースランス』


「よっしゃ!当たった!シルサンキュー!」


私が大量の魔力を犠牲に飛竜の頭上から風の圧力を掛け飛竜を残らず地面に縫い付けると冒険者達は一斉に魔法を斉射し剣士達は突撃をしていった。

私は圧力を維持しながらセルシアが戦っている飛竜にも突風を送り体勢を崩させていった。

セルシアは確かに飛べるけどあの子は地上戦を得意とする戦い方なので空中では飛竜の動きには負けてしまうし火力も落ちてしまう。でも私が援護してセルシアの攻撃が当たれば飛竜を落下させる事ができる。


そうして犠牲を出しながらも次々と飛竜を殲滅して行き20匹はいた飛竜が残り8匹となる頃春田山の方から飛竜の増援が来た。


「飛竜が10匹以上接近!一旦下がりなさい!火弾が来ます!」


「…ま、マジか…ハァハァ…ここで増援かよ…あと少しだったのに…ハァハァ…下がれ!魔法部隊は防壁を用意しろ!」


「シル!ち、違う…飛竜は増援に来たんじゃない!逃げてるんだ!」


「逃げてる?……まさか!?」


「ドラゴンだ!火竜がこっちに気付いて向かって来てる!」


「クッ…このタイミングで…もう魔力が…高杉!ドラゴンよ!今は不味いわ!観測トンネルへ!シルフよ後方の火を吹き消して!…うっ…くっ…」


「なっ!?ドラゴン!?唯!残り魔力はどうだ!」


「中級2回が限界よ!」


「飛竜がまだ20匹はいる…厳しいな、一旦観測トンネルへ撤退してドラゴンをやり過ごしまた飛竜狩りに来るぞ!仲間の亡骸はスマン!今は諦めてくれ!」


「…クッ…わ、わかった!下がれ!負傷者を背負え!観測トンネルへ!」


「「「下がれ下がれ!」」」


飛竜の増援が来たと思っていたら上空にいるセルシアがドラゴンを見つけた。増援の飛竜はドラゴンに追われこちらへ逃げてきた様子で今ここにいる飛竜8匹と合流されて20匹以上になった飛竜とドラゴンの相手は一度に出来ない。ドラゴンだけでも私とセルシアでは長期戦となる上に勝てるかは微妙、魔力が残り少ない今は更に難しくなる。私達は一旦魔力を回復させる為にも観測トンネルへ撤退を決めた。


「セルシア時間を稼いで!」


「わかった!お前らこっちだ!ウスノロ!あたしを捕まえてみろ!『竜撃破』」


私とセルシアは冒険者達とは別の方向に交戦中の飛竜8匹を誘導した。



「ハァハァハァ…飛竜はドラゴンが来てトンネルとは反対側に皆逃げたわね…私達も少し休んで迂回してトンネルへ向かいましょう」


「いっててて…空中戦は数が多いと上手く動けないや!もっと訓練しとくんだったよ」


「それでもセルシア一人で7匹は仕留めたわセルシアがいなかったら苦戦してたし飛竜やドラゴンから皆を逃がすこともできなかったわ」


「シルの援護があったからな、あたしは避けるのに精一杯だった。チキショー地上なら余裕なのに」


「飛竜は飛ぶのと火弾での遠距離攻撃と下級とはいえ魔法障壁が厄介よね…初級魔法程度じゃ数を撃たないと大したダメージを与えられないわ」


私達は飛竜を誘導しつつ戦っていたらドラゴンに気付いた飛竜が私達など相手にしてられないと逃げて行った。森の何処かに降りたドラゴンを気にしつつも空が夕焼けに染まる頃にやっと平野部へ出た私達は岩の陰で身体を休めていた。

セルシアは上空でかなり頑張ってくれたけどあちこち火傷と傷だらけで傷口にポーションを掛けてから飲み治療をしていた。

なんとか魔力を回復させてから闇に紛れてトンネルへ行かないと、そう考えていた時に上空から心臓を鷲掴みにするような恐ろしい咆哮が聞こえた。


グオォォォォォォォォ!


岩陰から顔を出し森を見てみると全長70メートルはある真っ赤な鱗のドラゴンがこちらに向かって飛んで来た。


「あちゃー!あたしの竜の血に反応したのかな?血を流し過ぎたかも」


「たまたまよ…運が悪いだけ」


「竜化…するしかないかな」


「そうね、私もいざとなったら禁呪を使うわ」


「それは駄目だ!シルが死んじゃう!それだけは使わせない!あたしがなんとかする!昔みんなで一度倒してるしな、勝てるさ!」


「フルパーティで風竜をね、火竜は水竜ほどじゃないけどセルシア相性悪いわよ」


「大丈夫さ!二人なら勝てる!二人で戦って今まで負けた事ないだろ?」


「ふふ…そうね、残りの魔力を使い切るわ」


「勝って旦那さまに褒めてもらうんだ!火竜を倒すなんて凄いじゃないかってさ!」


「私も褒めてもらえるかしら…勝って生き残ってまた会いたいわ」


「会えるよ!いや!会うんだ!一緒に頭を撫でてもらおう!」


「ふふふ、そうね勝ちましょう。勝って光希様に…」


グォォォォォォォォォン!!


「せっかちな奴だな」


「行くわよセルシア!竜狩りよ!」


「おうっ!あたしの竜撃で穴を開けてやる!」


私達はまた光希様に会い褒めてもらおうと湧き上がる恐怖心を無理矢理押さえ込み空から私達を見下ろす火竜へと戦いを挑んだ。



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